18歳人口減に挑む大学
時代に合わせた大学改革

ユニヴプレス 文 梅田優介(大学通信)
18歳人口減に挑む大学 時代に合わせた大学改革

18歳人口の減少が続く中、大学は今、大きな転換点を迎えている。2024年度の出生数は過去最少を記録し、将来的な志願者数の減少は避けられない。こうした状況に危機感を強める各大学では、学部改組や入試方式の見直しなど、受験生確保に向けた改革が加速している。生徒の進路にも直結する、大学改革の動きをみていこう。

進行する少子高齢化

24年度の出生数は前年より4万1227人少ない68万6061人となり、9年連続で過去最少を更新した。少子化の進行に歯止めがかからない中、18歳人口の減少も続いている。そうした中でも、25年度(25年4月入学)の一般選抜では、国公立大で志願者数が前年を上回り、これまで減少傾向にあった私立大も増加となる見込みだ。

06年度以降の出生数の推移をもとにすると、25年度入試では18歳人口が増加したが、あくまで一時的なものに過ぎない。長期的には減少傾向は続き、35年度には18歳人口がついに100万人を下回ると予測されている。このような厳しい見通しのもと、今後数年間が、志願者減少への最後の対応チャンスと捉える大学は多く、将来を見据えた改革に本腰を入れている。キャンパスの移転や学部・学科の新設、入試方式の変更など、多方面にわたる戦略的な取り組みが進められている。これらの動向は、「主な大学の学部学科改組・入試変更点」にまとめている。なお、表中の新設大学・学部等は認可申請中のものを含む。

18歳人口減に挑む大学 時代に合わせた大学改革

時代のニーズに合わせた大学改革

表では、理工系および情報系学部の新設が目立っている。近年、インターネットやAI、IoTなどの技術が急速に広がるなか、それらを活かせる人材のニーズは急増している。文部科学省も、こうした分野で活躍できる専門人材を育てるために、「大学・高専機能強化支援事業」を通じて、成長分野であるデジタルやグリーンに関連する教育・研究に力を入れる大学を後押ししている。大学側もこうした流れに合わせて、教育体制の強化に積極的に取り組んでいる。

理系学部の拡充に伴い、女子生徒の受け入れ体制の整備が新たな課題として浮上している。理系分野では依然として女子の進学が少なく、女子学生の確保が課題となっている。こうした課題を解消するため、女子を対象とした入試枠を設けるなど、改革を進める大学が増えている。表中の大学では、京都大の理、工や、大阪大の基礎工といった難関国立大が、年内入試において女子枠を新たに導入。その他の国立大は、山形大・工、埼玉大・工、新潟大・工、広島大の理、工、情報科などが導入する。理系学部の女子受け入れの取り組みが活発になっていることが表から読み解ける。

女子枠に限らず、多様な学生層を受け入れるための入試改革を進める私立大もある。成城大は多くの教科を学んできた国公立大志望者の獲得を目指し、国公立大学併願型大学入学共通テスト利用選抜(N方式)を導入。共通テスト4教科4科目で合否が決まり、入学手続きの締め切りも国公立前期の結果が発表されてからなので、国公立大志望の受験生が出願しやすい方式となっている。25年度の一般選抜で志願者数1位となった千葉工業大も、大学入学共通テスト利用入学試験に5教科基準点型を新設し、国公立大受験生の獲得に力を注いでいるようだ。

多様化する学部改革の最前線

学部・学科改組についても見ていこう。近年、学生募集に苦戦する女子大が増えている。その一因として人文科学や家政など従来人気だった分野があまり選ばれなくなってきたことがある。こうした傾向に合わせ、女子大でも学部・学科の新設や改組の動きがみられる。新設される学部の中で女子大に設置の少ない学部系統のものをあげると、和洋女子大・AIライフデザイン、金城学院大・デザイン工、昭和女子大・総合情報などだ。女子大にも理系学部拡充の取り組みが広がっている。理系学部以外にも、東京家政大の共創デザイン、社会デザイン学環、文化情報学環、鎌倉女子大・教育メディアクリエーション学環、甲南女子大・社会などの学部も新設予定となっている。

18歳人口減に挑む大学 時代に合わせた大学改革

18歳人口減に挑む大学 時代に合わせた大学改革

理系学部の新設が相次いでいるのは女子大だけではない。大正大・情報科、東京理科大・創域情報、桃山学院大・工、四国大・デジタル創生などが新設され、中央大・理工は基幹理工、社会理工、先進理工の3学部に再編される予定だ。

大学のさまざまな改革は、変革する社会で活躍できる人材の獲得および育成がベースにとなっている。そのほとんどは生徒に影響するものであるため、今後も注視しておきたい。