最先端のIT技術を活用し、すべての人に大学進学の機会を提供することを謳うZEN大学の開学が注目を集めている。同大はN高等学校やS高等学校でオンライン教育の実績を持つドワンゴと、若者支援に取り組む日本財団が提携し、それぞれの強みを生かした教育を展開。特定の学問領域に偏らない「知能情報社会学部」での学びを通じて、激変するAI時代に必要なリテラシーを身につけられる大学だ。授業はオンラインでの学修が基本となるため、時間や場所を選ばず学ぶことが可能。課外プログラムとして、社会の実情を学ぶ「現場体験型プログラム」などへの参加機会も用意されている。入学選考では学力試験が実施されないため、学ぶ意欲があれば入学できるのも特徴の一つ。大学で学ぶための基礎学力が不足している学生に対しては、補習授業やオンデマンド教材による万全のサポート体制が整っている。
近年は他大学でも、自分のライフスタイルにあわせて学べる通信教育課程の新設が増えている。その他の大学の動きについても見てみよう。
日本女子大学は2025年に、75年ぶりの通信教育課程の新設となる「食科学部 通信教育課程 食科学科」を開設する。同学部では「食」に関する領域を科学する複合分野の学びを、多様な環境にある人に提供。科学的知識を基礎に食品・調理・栄養の総合的な知識と技術を修得することで、生活者の視点で社会のさまざまな問題を発見・解決できる人材の育成を目指している。テキストまたはオンラインで履修可能な科目がほとんどであるため、パソコンとインターネット環境があればどこからでも学位を取得可能。中学校・高等学校教諭一種(家庭)やフードスペシャリストの受験資格といった資格についても、所定科目を目白キャンパスで受講することで取得可能だ。
近畿大学は2025年に「建築学部(通信教育課程)」を開設する。同大の建築学部(通学課程)は大学ごとの一級建築士輩出数の累計で西日本1位、全国5位となるなど、建築業界を牽引する人材を多数輩出してきた伝統ある学部だ。新たな通信教育課程においても、これまでの知見を生かした教育を展開。従来の「つくる」ことを主たる目的とした建築学に加えて「守り・育てる」建築学を学ぶことで、現代社会の課題を読み解き、その解決に向けた新しい建築を創造できる人材を育成する。通信授業科目と面接授業科目を組み合わせる授業構成となっており、オンライン授業を活用して全ての講義を自宅で受講可能。学位と一級建築士受験資格が得られる学び直しの場として、建築業従事者を主な対象に、時代が求める幅広い学びのニーズに応えていく。
近畿大学の学生は、包括連携協定を締結している佛教大学通信教育課程の科目等履修生として、小学校教諭二種免許状を取得することも可能だ。常態化する小学校教員不足の解消を目指して連携を進める両大学は、ともに通信教育課程を持つ大学として通信教育システムの共同開発や施設の相互利用、事務部門における人事交流などにも取り組んでいる。
2026年には京都橘大学が、通学課程と通信教育課程の双方に「デジタルメディア学部」を新設予定だ。新学部にはクリエイションとエンジニアリング、双方の学びを往還するカリキュラムを用意。アニメーション・ゲーム・音楽・マンガなど日本が誇るカルチャーにおいて、次世代のコンテンツやシステムを創造できるクリエイターやITエンジニアを育成し、急速に進展するデジタル産業の発展に寄与できる、新たな社会価値創造の担い手を輩出することを目指している。通信教育課程はオンラインで受講できる「メディア授業」が中心のため通学不要で、社会人学生も時間や場所を選ばずに受講可能だ。総合大学の強みを生かした他学部専門科目を学べる「クロスオーバー教育」も用意されており、専門分野の枠を超えた自由な発想や応用力を身につけることが可能だ。
短期大学にも通信教育課程を設ける動きがある。鎌倉女子大学短期大学部は2025年、日本初の小学校教諭免許が取得できる通信制短期大学として「初等教育学科 通信教育課程(e-learning course)」を男女共学で開設する。乳幼児期から児童期までの子どもの教育・保育に携わる多くの専門家を養成してきた同大が、歴史と実績を踏まえた魅力ある授業をe-learningで展開。小学校教諭二種免許や幼稚園教諭二種免許状など、2年間で複数の免許・資格が取得できる。e-learningシステム上で配信される授業動画を視聴し、確認テストを解答するというオンデマンド学習が中心となるため、時間や場所にとらわれず自分の生活スタイルに合わせて学ぶことが可能。一部の科目では面接授業(スクーリング)を実施しており、充実した施設・設備のもと実務経験のある教員によるきめ細かな実践的な指導を受けられる。