「大学で学ぶからこそ、国際的なコミュニケーションに役立つ中国語が身につく」 明海大学 河村昌子教授に聞く!

大学選び入門 ライター 林 郁子
「大学で学ぶからこそ、国際的なコミュニケーションに役立つ中国語が身につく」 明海大学 河村昌子教授に聞く!

写真=同時通訳室での授業風景(明海大学提供)


21世紀になり、国際社会の中で中国をはじめとするアジアの存在感はより大きくなり、あらゆる産業で、アジアは重要な商圏となっています。特に日本と中国は政治や経済などで非常に関わりが深く、近年よりその傾向は強くなっています。また、特に若い世代で、日本と中国の音楽や漫画、アニメ、ドラマなどのエンターテインメントを介した交流も非常に盛んです。そうした中、語学学校などで単に語学を学ぶのではなく、「大学で身につける中国語スキル」に注目が集まっています。

なぜ大学で中国語を学ぶとよいのか。独自の中国語カリキュラムで多くの優秀な学生を育てている明海大学外国語学部中国語学科の河村昌子教授にうかがいました。

大学で中国語を学ぶメリットとは?

中国語は奥深く興味深い言語です。中国語を学ぶメリットはたくさんありますが、特に大学で学ぶということを考えた場合、「初めて学ぶ言語としてのハードルが低い」、「学問として体系的に学ぶことで“使える”語学力が身につく」、「官民を問わず幅広い分野への就職に役立つなど将来性がある」といった点が挙げられます。特に最後の将来性については、今後ますます高まってくることが期待できます。


ひとつひとつくわしく解説していきます。

中国語は日本人にとって親しみやすい言語

語学を習得するには、早くから学び始めることが重要だと言われています。現在の日本の教育課程では英語が語学学習の中心となっているため、多くの場合、第二外国語を学び始めるのは大学になってからです。そこから始める言語学習には、最初の一歩でハードルを感じてしまうことも多いでしょう。けれど、中国語に関しては、ルーツを同じくする「漢字」があるため、学びやすさがあります。日本で使われている漢字とは異なる文字や、異なる意味を持つ漢字もありますが、書かれた中国語を見ると大まかな意味を察することができる場合がよくあります。

もちろん、日本語と中国語では同じ漢字でも発音はまったく違うため、実際に書かれた中国語を声に出して読み上げるには、十分な基礎学習が必要です。ただ、少しでも「わかる」という手応えがあると、新しい言語を学び始める際の大きなモチベーションになります。そうした意味で、中国語は大学から学ぶ際に、親しみやすい言語といえるでしょう。

大学だからこそ、体系的かつ多面的に中国語を学べる

実践的な語学力には、「読む」、「書く」、「聞く」、「話す」という4技能が欠かせません。中国語においてもそれは同様で、その4技能の土台となるのが基礎的な文法です。本学の場合は、文法・語彙を身につける「漢語基礎」を軸に、聞く・話す力を養う「漢語会話」、状況に応じた会話力を磨く「漢語実践」、正しく書く力を養う「漢語作文」という4教科を設けています。基礎で学んだ文法や語彙を、会話や実践、作文で使っていく連携方式で、慣れ親しみ、定着し、応用する力を育成しています。それぞれ週2コマずつ、合計8コマの中国語の授業があり、1年生のうちにしっかりとした基礎学力を身につけることを大切にしています。2年生からは、培った基礎学力をもとにスピーチコンテストに挑戦するなど、自らの考えや意見を発信する力を伸ばしていきます。

社会人対象の語学教室などでは会話学習が主体になりがちなため、こうして文法を基礎に4技能を教科連携で、体系的に学べる点は、大学の専門教育ならではメリットです。

また、社会に出て外国の方とコミュニケーションを取る際に欠かせないのは、相手の国の文化に対する理解です。中国の方は非常に懐が深く、一度親しくなった相手には友人として心を尽くして接してくれます。ギブアンドテイクの精神というと一見冷たいようですが、恩には恩を返す、誠意には誠意で応えてくれる国民性なのです。そうした国であるからこそ、通り一遍の語学学習だけでなく、歴史や文化を学ぶことには非常に意味があります。中国語や東洋文化などの専攻がある大学であれば、中国の歴史や社会、文学、思想、政治、経済など語学以外にも幅広い講義を設置していると思いますので、ぜひ多面的に中国語や中国文化を学んでください。

官民問わず幅広い仕事の現場でニーズがある中国語スキル

中国語はビジネスに強い言語です。日本の輸出入の貿易額ではここ10年あまり中国がトップとなっています。貿易に関わる商社はもちろん、旅行、観光、航空などのサービス、各種メーカー、百貨店やコンビニなどの小売、銀行などの金融、通信、マスコミなどあらゆる業界で、中国語ができる人材のニーズが高まっています。日本で働いたり、暮らしたりする中国籍の方も多く、国や地方公共団体などの官公庁などでも、中国語スキルは求められています。この傾向は、今後ますます強まるのではないでしょうか。大学までの英語教育である程度の英語スキルを持つ人はたくさんいますが、中国語のスキルを持っている人はまだまだ少数派という点も、就職において大きなメリットとなります。

本学でも、中国語をより専門的に学び通訳や翻訳の仕事に就く学生もいれば、中国語のスキルを武器にして商社やメーカーなどの企業に就職する学生、教育者になる学生と、さまざまな進路をとる学生がいます。大学で中国語を専攻するというと、中国語の専門家や貿易関係の仕事を目指すというイメージがあるかもしれませんが、中国語スキルのニーズは想像以上に幅広い分野で、高まっています。むしろ、もし、まだ将来の目標が定まっていない人が、やりたい仕事を見つけた時に、中国語はオールマイティーに役立つスキルになり得るのです。

楽しく学ぶことが何より大切

本学では、先に紹介した教科連携式のカリキュラムのほかにも、さまざまな工夫で、中国語を楽しみながら学ぶことを大切にしています。目玉となるのが、1年生の「漢語会話」で実施するオールチャイニーズの授業です。1年生からいきなりオールチャイニーズの授業というと、「難しいのでは?」と思われがちですが、実は学生から大人気の活気ある楽しい授業です。講師を務めるのは中国で対外漢語教育(中国語を母語とする人以外に向けた中国語教育)を長く行っている北京師範大学からの先生で、簡単な中国語に身振りや手振りといったボディランゲージをまじえて、表現力豊かなコミュニケーションを実践してくれます。学生たちは、その先生ともっと話したいという熱意で、意欲的に学んでいき、1年生の終わりには、驚くほど中国語のスキルがアップしています。

また、学習には目標があるとモチベーションがアップします。本学では、3年生で長期留学が可能ですが、中国語専攻ではそれまでに中国語検定(一般財団法人日本中国語検定協会)3級を取得するという目標を設定しています。中国語検定の3級は日常会話ができるレベルです。3級レベルの語学力を身につけておくと、留学先でのさまざまな研修の理解も深まり、現地でも活発な交流が行えるなど、実りある留学経験を積むことができます。学生によって語学の習得スピードにやや差はありますが、ほとんどの学生が目標達成に向けて意欲的に取り組んでいます。


中国語検定のためには授業だけでなく、課外講座も設けており、多くの学生が受講しています。また、2019年から『中国語の扉』という本学独自の中国語学習アプリも導入しています。PCやスマホで、正しい発音を聴きながら文字とイラストとで基礎文法を繰り返し学べるため、学生にも非常に好評です。

「大学で学ぶからこそ、国際的なコミュニケーションに役立つ中国語が身につく」 明海大学 河村昌子教授に聞く!

明海大学独自の中国語学習アプリ『中国語の扉』

中国語が気になったら、まず音楽や映像などに触れてみよう見出しを入力してください

さて、ここまで、大学で中国語を学ぶメリットや、本学を例にしたカリキュラムの紹介をしてきましたが、大学での中国語学習の概要は伝わったでしょうか。もし、中国語学習を始めるにあたって迷っている人は、音楽や映像などを通じて、実際に触れてみて判断するとよいでしょう。中国語の持つ、音や響きが「おもしろそう」、「心地よい」と感じられる人は、きっと中国語習得に向いています。最近は、動画配信サービスなどで中国語の入門学習ができますし、音楽やアニメ、ドラマなど多くの中国語のコンテンツにも気軽に触れることができます。まずは試してみましょう。

くり返しになりますが、語学はコミュニケーションのための重要なツールです。異文化コミュニケーションを楽しめる、好奇心や冒険心のある人に、積極的に学んでほしいですね。

中国語が学べる大学はたくさんありますが、自分に合った大学を選ぶには、授業内容やカリキュラムを事前に調べておくことが大切です。例えば、初学者であれば、授業数の多さや補習制度が整っているなど、丁寧なサポート体制がある方が安心でしょう。留学をしてみたい人であれば、具体的にどんな留学制度があるのかなど、自分が学びたいことが学べるかどうかをしっかり確認しておきましょう。

中国語の大学選びに限ったことではありませんが、実際にその大学に足を運び、先輩や先生と話してみることも大切だと思います。オープンキャンパスなどの機会を活用してください。大学は、おそらく多くの人にとって、最後の本格的な学びのチャンスです。社会人になってからでも、語学を習得する機会はもちろんありますが、歴史や文化といったバックグラウンドも含めて、体系的に学ぶことができるのが大学のよさです。人生の新しい扉を開きたい人は、ぜひ中国語の学びに取り組んでいってほしいですね。

「大学で学ぶからこそ、国際的なコミュニケーションに役立つ中国語が身につく」 明海大学 河村昌子教授に聞く!

お話をうかがった先生
明海大学 外国語学部 中国語学科 河村昌子教授
お茶の水女子大学文教育学部外国文学科中国文学・中国語学専攻卒業、博士(人文科学)。専門は中国近現代文学。主な著書に『巴金――その文学を貫くもの』(中国文庫)、主な訳著に盛可以著『子宮』(河出書房新社)、梁鴻著『中国はここにある 貧しき人々のむれ』(共訳、みすず書房)、柴静著『中国メディアの現場は何を伝えようとしているか 女性キャスターの苦悩と挑戦 』(共訳、平凡社)など。千葉商科大学商経学部准教授を経て、2010年に明海大学外国語学部中国語学科准教授就任。2018年より現職。