【大学選び入門】「やりたいことは知っていることの中からしか生まれない!」
視野を広げ、様々な情報と体験を。–立教大学

大学選び入門 ライター 松本 守永
【大学選び入門】「やりたいことは知っていることの中からしか生まれない!」 視野を広げ、様々な情報と体験を。–立教大学

大学選びの視点の1つとして、「就職の強さ」は気になるところです。しかしそもそも、就職というのは大学生活、ひいては人生においてどのような意味を持っているのでしょうか。自分に合った大学・学部選びと、就職はどのように関連付けて考えるといいのでしょうか。シリーズ「高校生への大学選び入門」の第3回となる今回は、立教大学でキャリア支援に取り組む河崎 真理さんと藤澤 瞬さんにお話をうかがいました。

お話をうかがった人
河崎 真理さん(写真右)
藤澤 瞬さん(写真左)
立教大学 キャリアセンター

就職は「マイルストーン」であってゴールではない

河崎さん
「学生が社会的および職業的に自立した個人としての自分らしい人生のあり方を追求できるように支援する」。これが立教大学のキャリア支援の基本的な考え方です。別の言い方をするならば、「本学を卒業した後の長い人生を、豊かに過ごすことができるようにサポートする」とも言えます。つまり、就職という一点だけを見つめているのではなく、長い人生をトータルに見つめているのが本学のキャリアサポートです。就職は確かに大きな人生の節目ですし、学生生活の集大成とも言えます。だからと言って、就職後も人生は続くのですから、就職がゴールになることはありません。そこで私たちは、「就職は人生のマイルストーンです」と言っています。マイルストーンとは、目印になる通過点のこと。その後の道を方向付ける重要なポイントではありますが、決してゴールではありません。人生の「ターニングポイント」と言ってもいいでしょう。

このように考えたときに、自身のキャリアと向き合うのはいつからが適切か、という議論が生まれます。一般的に就職活動に向けた取り組みは3年生から始まります。しかし、就職がマイルストーンであるにも関わらず、わずか1年あまりしか準備期間がないのは、あまりにも短すぎます。私たちは「やりたいことは知っていることの中からしか生まれない」とよく言っているのですが、限られた情報、限られた体験からは、自ずと選択肢も限られます。そのような中で人生を納得した方向へと進めていくことは、簡単ではありません。そこで、1・2年生を対象とした早期からのキャリア教育に力を入れています。

「知っていること」を増やすことが、納得の選択につながる

河崎さん
1・2年生を対象としたキャリア教育の一例として、2021年度に「キャリアインタビュー」という取り組みを行いました。これは、本学の卒業生から学生時代の過ごし方や働くことなどについて話を聞くことで、自分自身の学生生活の目標を設定したり、キャリアについて考えるきっかけにしようというものです。他には、「スタディツアー」というプログラムがあります。これも1・2年生を対象としたプログラムで、実際に企業を訪問して、社員の方との交流やゲームを通して仕事を理解するといった学びになっています。また、2・3年生対象の「立教型インターンシップ」では、就業体験はもちろんのこと、事前・事後の研修も充実させ、就職活動とはちがった、「キャリアを考える」ための場としての内容を充実させています。

これらの取り組みに共通しているのは、「知っていることを増やす」という狙いです。先にも述べた通り、私たちは知っていることの中からしかやりたいことを選べません。 この前提に立ったうえで納得の選択を行うには、選択肢をできるだけ多くする、すなわち「知っていることを増やす」必要があるのです。

コロナ禍の影響もあって、最近は「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)がない」と嘆いたり悩んだりする学生が多いです。でもガクチカは、多くの人がイメージするようなキラキラ輝いたものでなくてもいいんです。自分なりに興味を持ち、学生時代を通じて取り組んだことであれば、それは立派なガクチカです。大学時代の早い時点からさまざまなことにチャレンジして、「知っていること」を増やすと、視野が広がり、そういったガクチカに出会える可能性が高まります。それが、私たちの願いであり、支援の土台となっている思いです。

学部による就職への有利・不利はない。興味・関心から大学・学部選びを

藤澤さん
本学では高校生向けに、キャリアについてお話をさせていただく活動も行っております。そこでは学部ごとの就職実績についても説明するのですが、力を入れてお伝えしているのは「学部による就職への有利・不利はない」ということです。例えば銀行をはじめとした金融業界への就職といえば経済学部のイメージがありますが、他の学部からでも金融業界に就職する学生はたくさんいます。学部というのはあくまでも「学びに対する志向」、すなわち「何を学びたいか・何を学ぶか」であって、就職の有利・不利につながるものではないのです。

となると、「学部はどうやって選べばいいの?」という疑問が出てくるでしょう。ここで私がお伝えしているのが、「興味・関心から選ぼう」ということです。

例えば本学のホームページでは、興味のある分野から学部を見つけることができるページがあります。
https://www.rikkyo.ac.jp/undergraduate/#dept

ここで「ビジネス」を選ぶと、経営学部に加えて法学部や観光学部、Global Liberal Arts Programが出てきます。ほかにも「食文化」「格差と貧困」「人間の仕組み」など、さまざまなキーワードが用意されています。このように、「興味があることを学べる学部」をぜひ選んでもらいたいと思います。

「学部の名前からだけでは学びの内容がわからない」「同じ学部でも、学校ごとの違いがわからない」という悩みがあるかもしれません。そんなときは学部ごとのホームページを参考にしてください。詳しい学びの内容や、先生ごとの研究内容が紹介されているはずです。「シラバス」といって、授業ごとの年間を通じた学びの内容が公開されている大学もあります。それらの情報を参考にすることで、「この先生から学びたい!」というような、的を絞った進路選びまでが可能になるはずです。

就職のことを考えると、資格が取得できる学部であったり、特定の職業に直結する学部が気になるかもしれません。将来の目標が明確な場合はその選び方でもかまいませんが、まだ不明確であるならば、「興味・関心から選んでいい」「学部による就職の有利・不利はない」ということを覚えておいてください。

河崎さん
大学・学部選びにあたっては、オープンキャンパスもぜひ活用してください。オープンキャンパスは、先生や先輩に直接会って話を聞ける絶好の機会です。物事を選択し、判断する際には、自分とは異なる世代の意見は非常に役に立つものです。高校の中ではどうしても同級生からの情報が中心になりますが、オープンキャンパスに参加すると、大学生や教職員といった様々な世代の意見を聞くことができます。きっと、それまでとは違ったものの見方・考え方ができるようになりますよ。

藤澤さん
大学・学部は、みなさん自身の意志で決めることが大切です。そうすることで、「親や先生に言われたから」というように他者が決めた場合とは、学生時代を過ごすうえでのモチベーションがまったく違ってきます。もちろん、自分で決めるという行為は簡単なことではありません。そのために、日頃から小さなことでも自分で判断し、選択する習慣をつけておくといいと思います。部活動をしている人なら、その日の練習メニューを考えることも、自分なりの選択の訓練だと言えます。

河崎さん
進路選択という人生の大きな節目を前に、不安があると思います。不安の原因の1つは、「知らない、わからない」ということだと思います。でもこれは、裏を返せば「知っていく、理解していく」という楽しいプロセスの出発点にいるとも言えます。心の持ちよう次第で、みなさんの前にはワクワクするような時間が待っているとも言えます。何事も楽しむつもりで、大学・学部選びに取り組んでみてください。