【大学選び入門】これからの大学選びは「マッチング」の時代 ~後編
科目を絞り込まないことが将来の選択肢を広げる~–東洋大学
大学に進学を考えているものの、どの大学・どの学部を選べばいいか悩んでいる人も多いのではないでしょうか。大学選び・学部選びにはさまざまな方法があります。そのなかで、「マッチング」が大切な時代になっていると教えてくれるのが、東洋大学で入試部門の責任者を務める加藤建二さんです。前編では、自分自身の「興味」を手がかりにして、大学の先生が取り組む研究内容とのマッチングを図ることが重要だと教えてもらいました。後編では、受験校選びの大きなカギにもなる科目の絞り込みについてうかがいました。
お話をうかがった人
加藤建二さん
東洋大学理事・入試部長
興味と学びとのマッチングは、できるだけ早い時期から考え始める
大学と学部選びには、入試科目という視点も欠かせません。文系・理系、さらに5教科か3教科かといった条件は、受験校、ひいては進路を必然的に絞り込むことになります。
前編では、あなたの興味と大学での学びや研究の中身のマッチングが大切だというお話をしました。しかし仮に、マッチした大学・学部へ進むための入試で、あなたが高校で選択していない科目が入試科目に設定されているとしましょう。この場合、受験を諦めることが多いでしょう。
このことから言えるのは、「マッチングは高校時代のできるだけ早い時期に考えるべき」ということです。できれば1年生の、文系・理系の選択をする前の段階で考えておきたいです。文系・理系の選択にあたっては、「数学が苦手だから文系」「国語が苦手だから理系」など、“苦手”をカギにして選択する人も少なくありません。しかし、大学のホームページなどを通して大学での学びに触れ、「おもしろそう」をカギにして文系・理系やその後の科目選択を行うと、たとえ苦手科目であっても、前向きに勉強に取り組むことができるはずです。そうすることで、目標とする学びができる大学・学部へと進んでいくことができます。
受験科目と大学での学びは連動している
入試は大学から高校生に対するメッセージでもあります。例えば東洋大学では、経済学部経済学科の一般選抜における「数学必須入試」での入学者の割合は8割です。ここには、「大学で経済学を学ぶためには、数学の知識が不可欠です。高校時代にしっかりと準備をしておいてください」というメッセージが込められています。英語に関しても、「読む・書く・聞く・話す」という4技能を評価するために、英検などの外部テストを早くから活用してきました。ここには、大学が留学をはじめとした国際教育に力を入れており、その考えに共感し、海外へチャレンジする意欲にあふれた学生に入学してほしいというメッセージが込められています。これらのメッセージを受け止め、理解したうえで進路を決めることもマッチングの一部です。「経済学には数学が必要だから、文系だけどしっかり勉強しておこう」といったように、大学の思いが受験生に伝わり、受験生も入学後を見据えて高校時代を過ごすことが、より良いマッチングだと言えるでしょう。
受験に向けて勉強する科目を絞り込むことは、大学に入ることのみを目標とするのであれば、確かに効果的な方法です。しかし経済学部の例のように、入学後の学びを考えると絞り込まないことが大きな意味を持つケースもあります。大規模な調査などを活発に行う社会学部では統計学などの数学が必要ですし、論文を読んだり書いたりする機会の多い理系学部では国語力も欠かせません。大学での学びを有意義にするためには、幅広い科目の知識が重要なのです。そもそも、現代は変化の激しい時代です。限られた分野の知識だけでは、変化に対応することは難しいのです。できるだけ多くの科目を学び、知識の幅を広げておくことが、あなたの将来の選択肢も豊富にしてくれるはずです。