【子育てエッセイ】小学生の親が実感した、これからを生きるために必要な力

中学・高校情報 アートディレクター 浅井 大輔
【子育てエッセイ】小学生の親が実感した、これからを生きるために必要な力

いきなりですが、みなさんはオタクという言葉にどんな印象をお持ちでしょうか?

最近流行りのAI先生に聞いてみると、「オタクとは、特定の対象に強いこだわりを持ち、その対象に対して時間やお金を費やす人を指す言葉」だそうです。

私が学生の頃は、正直、オタク=暗い、という漠然としたイメージがあり、それは決してポジティブなものではありませんでした。これからお話しするのは、そんなオタク的思考こそ、これからの子供達には必要な力なのではないか、という突拍子もない話です。しかしそれは、今のこの国の教育に足りないものであり、この国の未来の話でもあります(と、勝手に思っています)。

私には13歳の息子がおります。少し彼の話をしたいと思います。

この息子が今年、無事に小学校を卒業しました。彼が「変身ヒーロー」にハマり始めたのが、保育園の頃だったかと思います。最初の頃は「ベルトがほしい」と言われ、「変身」した彼と、怪人として戦う日々でした。それから月日が流れ、小学校6年生になってもなお、彼の変身ヒーロー熱は下がらず、というか上がる一方で、しまいには、変身ヒーローの過去を遡り、同じ映画をサブスクで何回も見る、といった状態に。ちなみに先日、秋葉原にある変身ヒーロー専門の中古ショップに連れて行った時は狂喜乱舞しておりました。

彼は紛れもない「変身ヒーローオタク」です。親としての気持ちを正直に白状すると、一時は「大丈夫か、こいつ・・・」と思った時期もありました。何故なら、まわりの友達は徐々に変身ヒーローを「卒業」し、それなりに次の興味関心へと移っていったからです。そしてそれを成長と思ってしまったからです。

でも、日々、人として普通に成長している彼を見て、「変身ヒーローに罪はない!」と思い、そのまま放っておきました。その結果、立派な変身ヒーローのオタクが完成したのです。


突然ですが、ここで豪快に親バカぶって、彼の良い所をお伝えさせてください。


まずは「人に左右されない」ところです。誰かがやってるから、とか、今流行ってるから、といったものに価値を見出さず、自分が好きなものだけに価値をもてる人です。実際にクラスで変身ヒーローの話を彼レベルで出来る友達は少ないそうですが、本人はあまり気にしてはいません。


もう一つは、好きなものへの「探究心」をもっているところです。先ほど書いたように、彼は好きになると、どんどん掘り下げていきます。昔はどうだったか、そもそも変身ヒーローはどうやって生まれたのかなど、親も驚くほどに深くのめり込んでいきます。そういった探究心をもっているのです。


そして最後に、好きなものへの「愛情」の深さです。彼はともかく変身ヒーローを愛しています。買ってあげたおもちゃは大事に飾ったり、しまったりしていますし、作品へのリスペクトも半端ないものがあります。今まで一度もないことですが、もしも変身ヒーローを侮辱するような事を言われたら、劣化の如く怒るでしょう。

そのモノに対する愛情の深さは、同じくモノを創る仕事をしている私としても嬉しいのです。


このように、彼の良いところを恥ずかしげもなく書いてみましたが、全ては変身ヒーローに出会ってから気付かされたものばかりです。まずは、変身ヒーローに感謝を伝えなければなりません。

ありがとう!変身ヒーロー!


そんな彼がこれから中学、高校と成長していく中で、いつまで変身ヒーローオタクでいるのかはわかりませんが、今現時点で親として思うのは、「オタクでいることを辞めさせないでよかった」という事です。

オタクとは、つまり、「何かに熱狂している人」と言えます。なにしろ、強いこだわりと時間とお金を惜しまず費やしているのです。これはもう熱狂状態です(しかしお金はほどほどに)。そこで思い返してみてください。あなたは、そんな時間も忘れ、熱狂できるものに出会ったことがあるかを。そこそこ好き、ではダメなのです。もう好きで好きでたまらなくて、誰に何て言われようと好き、というもの。

子供の頃って何かしらに「ハマる」時期はあったかもしれないんですね。それが昆虫なのか、電車なのか、アイドルなのか、アニメなのか、妖怪でもいいし、歴史でもいいし。でもいつの日か、そこから離れていく。その理由が自分自身の飽きだったらいいのですが、親や友達、先生などの外的要因だとしたら、本当にもったいないです。

なにしろ、せっかく出会った「熱狂」を手放してしまったわけですから。そしてその「熱狂経験」こそ、これからの世界を生き抜くのに大事な力な気がするのです。


今、世界が変化するスピードはどんどん加速しています。「こうしておけばOK!」という答えなど、誰にもわからない時代です。そこにAIがやってきます。いや、もう来ています。子供たちはそんな未来を生きていかなければなりません。


自分が何者なのかが、よりわかりづらい世界。SNSで情報が嵐のように押し寄せる世界。リアルとフェイクが混在しまくる世界。


そんな世界の中で必要なのは、ブレない自分の軸を持つ事です。自分自身で価値を見出せる人。他人ではなく、自分が楽しいと思えることこそが、楽しいと思える人。他人から何を言われても、「自分が好きだから関係ないじゃん」と言える人。そんな人が幸せに近いんじゃないでしょうか。


そして、満遍なく、ではなく、何か一つのことに秀でることも大事です。「この事なら誰にも負けない」という何かを持っている人。上っ面じゃなく、深いところまでいける人。いつの時代もそうでしょうが、AIやSNSで情報が乱立する現代から未来にかけては、よりそういった人の方が価値がある気がするのです。


そして、何よりも愛をもって人にもモノにも接する気持ち。ロボットやデータでは伝わらない愛情。人へのリスペクトや、モノへのリスペクト。こういった気持ちの持ち主には、必ず人が寄ってきます。そして、いざという時、助けてくれるはずです。これに関しては時代は関係ありません。最後の最後、寄り添ってくれるのは、ロボットやデータではなく、人です。


これまでお話したことは私の実感をもとにした、完全なる主観的な話です。しかし、ひとつ確信が持てる事があります。それは、私の息子が得た力は、決して、小学校で教わったことではないということ。教えてくれたのは変身ヒーローです。そしてそれに「熱狂」した結果、得た力だと思います。

この先、彼がどう生きていくのかは、全くわかりませんが、親から見ると、現時点での彼はとても幸せそうに見えます。毎日ベルトを眺め、好きなシリーズの映画を見ながら、ほしいベルトを検索し、主題歌を口づさむ。そこまで好きなものに出会えた彼は、今のところ幸せものだと思うのです。


最後に一つ。僭越ながらオタクを息子にもつ親としてのアドバイスです。あなたのお子さんが、何かにハマっていたとして、まず、それが何かは関係ないと思ってください。アニメでもスポーツでも、電車でも、手品でも。川でも山でも、なんでもいいんです。「何か」を決めるのは大人ではありません。

そして、「またやってんの?」「まだ見てんの?」「なんでそんな事やってんの?」なんて聞かず、どうか、放っておいてあげてください。小学生なんて、好きに理由なんてないんです。あっても言語化できないんです。


だから、親としては、「お!出会ったな!」と思って放っておくしかないのです。いや、放っておくのがベストなのです。子供は自然に熱狂します。

得意を伸ばすではなく、苦手克服や多様性という言葉をふりかざして、広く浅く経験させる。これまでの常識が通じない未来は確約されているのに、気づいてないか、気づいてないフリをする。世の中は、これからの未来を生き抜かなければいけない子供たちに、はたしてタイムリーな教育をしているのでしょうか。


みなさん、「オタクはチャンス」で行きましょう。

【筆者プロフィール】
浅井大輔
1978年生まれ。アートディレクター。1児の父。
6〜12歳の間にわたる息子とのコミュニケーションを綴った「親子漫才」を公開中。
https://note.com/spoking/m/mfa6e3b3a855b