千葉県立小金高等学校–進路指導の変化とは?難関国公立大学合格者増加の理由

中学・高校情報 松本 陽一
千葉県立小金高等学校–進路指導の変化とは?難関国公立大学合格者増加の理由

千葉県立小金高等学校(松戸市)では、進路指導の充実により国公立大学合格者数を着実に伸ばしている。その指導を支えるのが、進路指導部の石井健先生と加藤純一先生だ。

石井先生は2018年に小金高校に赴任し、赴任以来、進路指導に携わってきた。当初は国公立大学を目指す生徒が少なく、特に文系では私立大学専願が主流だった。そこで、卒業生の成績データや進学実績を示し、努力次第で国公立大学進学が可能であることを生徒に伝えた。

また、模試の結果を踏まえ、気になる生徒には個別に声をかけ、適切なアドバイスを行うことを心掛けた。本格的な受験指導は高校2年の冬から開始し、過度なプレッシャーを避けながら学習意欲を高める工夫を行った。

その結果、国公立大学合格者は2.7倍(2018年度は25名、2024年度は68名)に増加し、特に文系の合格者は8名から33名へと大幅に増えた。

前任校では、入学時の成績が決して高くなかった生徒を千葉大学に合格させた経験があり、この成功体験が現在の進路指導に生きている。異動を経験する公立高校の教師ならではのエピソードだ。

2025年度の大学入試では、北海道大学や東北大学、一橋大学、東京科学大学(2名)など、難関国立10大学に多数の合格者を輩出した。2018年度は東京工業大学と神戸大学だったことを考えると、大きく実績を伸ばしている。

これらの難関国立大学に合格した生徒に共通するのは、授業に真摯に取り組む姿勢である。塾に通わず、学校の勉強だけで合格した生徒もいた。そのうちの一人で東京科学大学に合格した生徒は、入学時の成績こそ上位ではなかったが、学ぶことを楽しみ、確実に理解する姿勢を持っていたという。

一方で、総合型選抜や学校推薦型選抜といった年内入試も積極的に推奨している。年内入試に挑戦しながら、一般選抜の準備も並行して進める指導方針を取っている。今年、年内入試で筑波大学に合格した生徒にも、不合格だった場合に備え、気を緩めることなく学習を続けるようアドバイスした。

加藤先生は、進路指導部に加え、探究学習を主導する学習マネジメント部も兼任し、探究学習の充実を図っている。これまでは、学校が用意したジャンルの中でテーマ設定をしていたが、現在の1年生からは生徒自身の興味や関心に基づくテーマ設定へと方針を転換。生徒が自らの進路に応じて探究を進める環境を整備した。具体的には、大学の講義動画を活用し、生徒が自分の関心のある分野を選んだ上で、4名程度の班ごとに探究活動を行う。

国の政策を考案し大学の教授に助言を求める班や文房具を開発しメーカーに評価をしてもらう班もあり、探究学習がより実践的になった手応えを感じているという。

2月には発表会を開催して、一人ひとりアウトプットの場を設けた。今後は数学のカリキュラムを見直し、データ分析系の単元を学年の前半に配置することで、探究学習にデータ分析を取り入れることを目指すという。

石井先生は、「近年、学歴至上主義の風潮は薄れ、生徒は進学先を選ぶ際に自分の関心や将来の展望を重視する傾向にある。今後も生徒一人ひとりが納得できる進路選択を支援していきたい」と語る。国公立大学の合格者が増えたのも、生徒の納得できる進路実現のために、学校が積み重ねてきた細かな改善の成果といえるだろう。

小金高校では、学業のみならず合唱祭や文化祭、体育祭などの学校行事も活発に行われている。充実した高校生活を送りながら、将来に向けての環境がますます整うことが期待される。