【生徒や保護者に勧めたい女子校1位】あらゆる教育リソースを活かして、生徒の成長をサポート–山脇学園中学校・高等学校
山脇学園中学校・高等学校は、今年創立120周年を迎えた伝統校である一方、多様な入試方法の導入や独自の教育カリキュラムの設定、学外機関との連携の強化など積極的な学校改革を進め、刷新を続けている。
今年の学習塾の塾長・教室長が選ぶ「首都圏のオススメ私立中学」では、「生徒や保護者に勧めたい」4位(女子校1位)をはじめとする数々の項目で上位にランクイン。その躍進に注目が集まっている。校長である西川史子先生に、同校が目指す女子教育と将来に向けての展望についてお話をうかがった。
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総合計 12位(女子校 2位)
・グローバル教育に力を入れている 21位(女子校 2位)
・ICT教育に力を入れている 15位(女子校 1位)
・探究学習に力を入れている 2位(女子校 1位)
・図書館が充実している 17位(女子校 6位)
・校舎など施設、設備が充実している 1位(女子校 1位)
・生徒や保護者に勧めたい 4位(女子校 1位)
常に未来を見据えて、改革を続けていく姿勢
-ランキングでは、「生徒や保護者に勧めたい」4位(女子校1位)、「探究学習に力を入れている」2位(女子校1位)、「校舎など施設、設備が充実している」1位のほか、グローバル教育やICT教育など多くの項目で上位にランクインし、総合で12位(女子校2位)という高評価を得ています。ほぼすべての項目で昨年度比ランキングが上昇していますが、どのように受け止めていらっしゃいますか。
教育プログラムや施設など幅広い項目で高い評価をいただけたことは、非常にありがたいです。生徒や教員とともによりよい未来を目指して弛まぬ努力を続けている点が、多くの教育関係者の方に浸透し、評価していただけたのではないかと手応えを感じています。
私たちは2010年に「山脇ルネサンス」と称する大規模な学校改革をスタートしました。翌年には、独自の教育施設である「イングリッシュアイランド」と「サイエンスアイランド」をオープンし、生徒たちが楽しみながら英語や理科の学びを深めていく授業を導入。さらに翌年には生徒たちが自ら志を立て学んでいく自習施設「自学館」、クラブ活動や探究活動といった課外活動を支援する「放課後活動棟」、カフェテリアなども新設し、特徴ある施設と連動するかたちで生徒の教育や学校生活をサポートしていきました。
その後も、校外学習プログラムや放課後学習プログラムの導入、入試制度の多様化、校舎のリニューアルなど大小さまざまな改革を進めています。特に教育カリキュラムについては、変化の激しい現代社会において、今後どういったスキルが必要とされるのかを考え、常に時代に即したバージョンアップをはかっています。
未来社会で活躍するための「総合知」カリキュラム
-山脇学園が提唱する「総合知」カリキュラムについて教えてください。
「総合知」とは、一人ひとりの幸せを実現するために身につけるべき、自然科学、人文科学、社会科学が融合した、総合的な「知」のことです。
この「総合知」を習得するために、本校ではIntegrated Science Project(ISP)という教科連携型の独自カリキュラムを構築中です。教科を横断した文理融合の取り組みで、中1から高3まで段階的に学んでいきます。中1では学習の取り組み方や論文の書き方など基礎をしっかりと学び、中3ではデータサイエンスの基礎と、科学倫理について学びます。高校では応用としてそれまでの学びをもとにビジネスコンテストへの参加や平和学習に取り組みます。
また、中学3年次には3つのチャレンジプログラムを用意しています。同プログラムでは全ての生徒が「マイテーマ」を持ち、研究と成果発表を行うことが特徴です。「科学研究チャレンジ」は自然科学をテーマに探究活動を行うスキルを磨き、「英語チャレンジ」は英語をツールにSDGsなどのテーマに探究を深めます。「マイチャレンジ」は自分が興味関心を持ったテーマを深掘りしていきます。
研究成果は3月のYSE(ヤマワキサイエンスエキスポ)でエビデンスをもって発表しますが、そこでデータの扱いやグラフ表現、プレゼンのスキルなど『総合知』が活かされています。
-6年間のカリキュラムの中で、中学3年次にチャレンジプログラムを設置しているのはなぜですか?
その後の進路選択を考え、失敗を恐れずチャレンジするためには、中3が最も適した時期だからです。将来、自分が深めていきたいテーマを見つけるには、そのテーマが自分にとって「本当にやりたいことがどうか」を試してみることが必要です。仮に、自分が立てたテーマがミスマッチだったとしても、中3であれば、もう一度テーマを考え直すことができます。ゆとりを持って、自分の将来を試行錯誤できるのです。
-生徒のチャレンジを推奨する取り組みはありますか?
本校では生徒一人ひとりの「志」を育てることを教育目標としていますが、生徒には”チャレンジとアクション”をすることなしに自分の中にある「志の種」は発見できない、と言っています。生徒たちには「マイステージ」として校内外へのチャレンジアクションを推奨していて、毎年たくさんの生徒がコンテストで賞を取ったり、大学院へのインターンに参加したりと成果を上げています。マイステージとして定めた挑戦を達成できた生徒は、全校生徒の前で表彰をしています。同級生のがんばりを知って、「私にもできるかも」「私もがんばりたい」という思いを持ってもらうためで、昨年度は77件94名の生徒を表彰しました。
さまざまな「志」を持った多様な生徒を受け入れる入試制度
-国算社理4科目と国算2科の一般入試のほか、国語か算数の1科入試、英語入試、帰国生入試、探究サイエンス入試など、多様な入試方法を設定されているのはなぜですか。
得意科目を活かして伸びる資質を持った生徒やグローバル社会で活躍するための志を持った生徒、探究心をもって自主的に学びに取り組める生徒など、一人ひとり異なるさまざまな志を育んでいきたいと考えているからです。
-2017年度からの英語入試の実施で、英語の得意な生徒は増えていますか。
以前は、帰国生は学年に10人くらいでしたが、最近は50人前後まで増えています。そのため、中学1年次はスタンダードクラスとは別に帰国生や国内で英語を学んできた生徒のためのクロスカルチャークラスを設置しています。
帰国生が多いと聞くと、「うちの子は英語の授業についていけないのでは」と心配される保護者の方もいらっしゃいますが、英語は初学者(G1)から英検準1級レベル(G5)までの5段階の習熟度別授業を行なっているので安心してください。むしろ、身近に英語で自由に話すことができる生徒がいることで、「自分もあんなふうに話せるようになりたい」とやる気を出す生徒もたくさんいます。実際、入学時には68%の生徒がG1に所属していますが、2年進級時には58%になり、10%ほどの生徒がG2へグレードアップしています。
私たちが英語教育で大切にしていることは、単に実践的な英語力の育成だけでなく、多文化社会で生き抜く協働力や発信力の育成、そしてグローバルな志の育成です。さまざまなバックグラウンドを持つ帰国生と共に学ぶことは大きな意味があります。中学のホームルームのクラスは2年次ではスタンダードクラスとなるため、自然に帰国生との交流の機会が増えます。育ってきた国によってものの見方や価値観も大いに異なるので、多様な価値観を知り協働し合うことは、お互いにとって視野を広げるきっかけになっていると思います。
「生徒の数だけ進路がある」ことを大事に、一人ひとりに寄り添った進路指導を
-昨年度は東京大学や海外のコロンビア大学への進学者が出るなど、国立大学や医学部など難関私立大学への合格者数も増えていますね。
2022年度の卒業生は90%以上の生徒が4年制大学に進学していますが、その内訳を見ると85大学164学科と大学も学部学科も非常に多彩で、生徒一人ひとりが自分自身の立てた「志」に沿って進路を選んでくれていることを実感します。私たちも、偏差値にこだわらず、生徒のやりたいことや学びたいことにしっかりと向き合い、サポートしていくことが必要です。先生方にはコーチングの技術習得を目指してもらっています。
充実した施設を活用し、特徴ある教育活動と生徒の自学自習を促す
-「イングリッシュ・アイランド」や「サイエンス・アイランド」などの個性的な施設で、どのような教育効果が上がっていますか。
「イングリッシュ・アイランド」は、海外の文化に触れ、ネイティブ教員と気軽に交流できる場所です。イングリッシュ・アイランドでは、生徒たちには、文法や発音に自信がなくても、気にせず英語で会話することを楽しんでほしいですね。オープンしてから10年あまりが経ちますが、今後はよりグローバルに多文化を感じる場所にしていきたいと思っています。
イングリッシュアイランドと同時にオープンした「サイエンス・アイランド」は、現在は中学3年生の科学研究チャレンジクラスや、高校サイエンスクラスの活動場所として、また研究計画書を出せば誰でも継続研究ができるオープンラボとしてどんどん活用の範囲が広がっていますね。
ほかにも、リニューアルし6教室300席が使える「セルフスタディアイランド(SSI)」も、生徒に人気の学習スペースになっています。一人で静かに集中して勉強したい生徒は自習室、友達と教え合いながら勉強したい生徒はカフェテリアや図書館でもあるラーニングフォレスト(LF)のラウンジを利用するなど、使い分けているようです。
本校では2020年に校内ネットワークを整備し、全校でiPadを導入するなどICT教育を本格化させました。コロナ禍でのリモート授業がきっかけでしたが、各種学習アプリなどを活用し、一人ひとりに最適化した学習を提供できるようになりました。生徒からの個別の質問や相談にも対応することができ、生徒と教員がより細やかなつながりを持てるようになりました。もちろん、インターネットを活用した情報収集やプレゼン資料作成など、アクティブラーニングを取り入れた授業にも欠かせないツールですね。
教育には、「環境」がとても大切だと思います。学ぶための施設と設備があり、サポートしてくれる指導者がいれば、生徒は自走して学んでいくことができるのです。生徒たちには、ぜひ本校自慢の施設の数々を存分に活用して学びを自走させてほしいですね。
-今年の9月には学内に生命科学の研究所である「山脇有尾類研究所」を開所し、話題となりました。中等教育機関に本格的な生物研究所が開設されることは稀な例だと思いますが、生徒さんの教育とどのように連携していくのでしょうか。
生徒は研究員として所属し、生命科学や環境科学研究などに取り組んでいきます。実は、当初はイモリやサンショウウオの飼育をしたいと思う生徒がどのくらいいるか心配をしていたのですが、募集をしてみると中高合わせて50人以上の生徒が研究所への参加を希望したので驚きました。生徒たちは、サンショウウオが生息できる研究ビオトープづくりにも着手します。研究所の所長を務める秋山繁治先生をはじめ、国立基礎生物学研究所や日本両棲類研究所、広島大学両生類研究センターなど、すばらしい教育機関の先生方のバックアップを受けつつ、研究活動に取り組めることは生徒にとって非常に貴重な経験になると思います。今後、どのように研究が展開していくのか、私も楽しみにしています。
子どもの可能性を信じて、成長を楽しみにしてほしい
-今後の学校改革はどのように進んでいきますか?
カリキュラム面では、2025年度から高校に国際教養(ILA)クラスを新設します。中学3年次の英語チャレンジクラスからつながるクラスで、英語での探究活動など持続可能な世界の実現を自らの課題として考える女性の育成を目指します。高校での留学や海外大学への進学、総合型選抜による国内大学グローバル系学部への進学を想定したカリキュラムを実施していく予定です。
ほかにも、教員から「もっとこうしたらいいのでは」といった新たな提案があれば積極的に試行していき、学習効果が上がればどんどん取り入れていきたいと思っています。本校の教員はさまざまな研修会などにも参加して、常に知識やスキルのレベルアップをしています。学校は教員がすべて。教員が学び成長しつづける限りこれからも本校は進化していきます。未来の社会に貢献しようと成長しつづけるのは、生徒たちだけではありません。私たち教員も同じ気持ちで進み続けていきます。
-最後に、説明会などで受験生の保護者の方と接する機会も多いと思います。先生の方から、保護者の方へ伝えたいメッセージがあればお願いします。
最近の保護者の方は、お子さんの将来についてたくさんの心配事を抱えていらっしゃるなと感じることがよくあります。「勉強についていけなかったらどうしたらいいのか」「友達とうまくいかなかったらどうしたらいいのか」「うちの子はチャレンジすることが苦手で……」等々。それについてはいつも「大丈夫です。親が思いもかけないほど、子どもたちは自分たちの力でどんどん成長していきます」と答えています。朝校門に立っていると生徒たちの挨拶や表情はどんどん変わっていきます。おとなしく見えていた生徒が学園を伝えたいという気持ちで、自ら受験生のための学校案内を堂々と務めてくれたりもします。自分から一歩ふみだすことで、生徒はあっという間に成長しますし、私たちはそのしかけを用意するべく、カリキュラムの刷新や教員のスキルアップ、施設・設備の整備・拡充、外部機関との連携など、あらゆる機会を設けて、そうした生徒たちの成長をサポートしています。ぜひ、お子さんの成長を楽しみにして本学へと送り出してください。