宇宙ゴミの軌道を精密測定できる世界初の超小型衛星を設計・制作するプロジェクトに、国際高専1年山本叶夢さんが選出

宇宙ゴミの軌道を精密測定できる世界初の超小型衛星を設計・制作するプロジェクトに、国際高専1年山本叶夢さんが選出

写真=「e-kagaku Satellite Project 設計開発メンバー選出証」を手にする山本さん

JAXAとe-kagaku国際科学教育協会が共同研究として進める「e-kagaku Satellite Project」では、超小型衛星に世界で初めてレーザー反射装置を搭載し、スベースデブリ(宇宙ゴミ)を低軌道で精密測定できる「e-kagakuジュニア衛星」の設計・制作を行っている。国際高等専門学校1年の山本叶夢さんはこの設計開発メンバーの1人だ。

山本さんは小学生の頃から機材やソフトウェアを使い、プログラミングやデータサイエンスの技術を身につけてきた。これまで多くのプロコンやデータサイエンスの大会で優れた成績を残し、その実績が評価され、ジュニア衛星の設計開発メンバーに選ばれた。

e-kagaku Satellite Projectでは、設計開発メンバーは年齢ではなく、論理的思考力やプレゼンテーション力、チームワークに必要なコミュニケーション力、リーダーシップなどの能力を証明したメンバーが選出される。現在6名の大学生と36名の中・高校生が取り組んでいる。本番機は2023年7月に完成予定で、安全審査を経て、9月にJAXAに引き渡される。打ち上げは2024年6月を予定。

現在、地球表面から2,000km以内の地球低軌道には約7,500機もの人工衛星が周回していると言われる。インターネットに代表される通信環境高構築や天体観測に重要な役割を果たす一方で、喫緊の問題になっているのが人工衛星やロケットの残骸である「スペースデブリ」(宇宙ゴミ)だ。年々増加の一途をたどっており、将来的には人類の宇宙活動の妨げになると予想されている。

e-kagakuジュニア衛星は小型人工衛星CubeSat(キューブサット、10×10×10cmサイズ、重量1kg)サイズのもので、JAXAが開発した衛星レーザ測距用の超小型反射器「mini-Mt.FUJI」を搭載。e-kagakuジュニア衛星に取り付けられた反射器に向けて地上のSLR局(衛星レーザー測距 Satellite Laser Ranging )からレーザーを照射し、反射して返ってきた光を再び検知するまでの往復時間を計測することで、SLR局と人工衛星との距離をmmオーダの高精度で測定できる。e-kagakuジュニア衛星は超小型衛星にレーザー反射装置を搭載し、その軌道をSLRの技術により高精度に把握する世界初の試みとなる。

得られたデータはスペースデブリの軌道シミュレーションや民間人の宇宙旅行に必須な宇宙保険の料率など、急成長する宇宙ビジネスに大きく寄与するものと考えられている。