首都圏中学入試情報

中学・高校情報 大学通信 大野 香代子
首都圏中学入試情報

とまらない難関大付属校人気

首都圏中学入試では難関大付属校の人気がヒートアップしている。不透明な大学入試改革への不安と大学入試の難化から、大学付属校の良さを認める保護者が増えているのだ。

首都圏中学入試では、来春も受験生数の増加が予想されている。1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)の今年の小6生数は昨年より9772人増えており、中学入試の4大模試(四谷大塚、日能研、首都圏模試、サピックス)の受験者数が約4%増加しているのだ。そのため、2019年入試の受験者数は増加が見込まれ、人気校ではより厳しい入試になると予想されている。

そのような中、大学付属校の高人気が継続している。数年前までは、進学校の人気が高かったが、受験生数の増加とともに、大学付属校の人気が高まっている。

その理由として、20年度から実施される「大学入試改革」による影響が大きい。現高校1年生の大学受験時に新テスト(大学入学共通テスト)が実施されるのに、具体的な内容や私立大入試へどう影響するかなど、詳細が不透明なため不安が広がっているのだ。

私立大入試が「入学定員超過抑制政策」で、一層厳しくなっていることも不安を増大させている。大都市圏の大学への学生の集中を防ぐため、定員8000人以上の大学では、入学定員超過率を18年入試は1.10倍、19年は全ての大学が1.0倍に抑えることになっている。定員をオーバーすると私学助成金がカットされるため、各大学では入学者を絞らざるを得ない。入学者を減らすことは合格者を減らすことにつながる。その結果、早稲田大では、18年一般入試の合格者が前年比で1960人減り、競争率は17年の7.2倍から18年は8.4倍にアップした。明治大は1638人減で5.0倍→5.7倍、青山学院大は1356人減で7.6倍→9.4倍、立教大は808人減で5.6倍→6.9倍となった。年々厳しくなる大学入試で、親戚や近所などで不合格の話を耳にする機会が増え、6年後の大学受験で我が子に苦労させたくないと、大学付属校を選択する保護者が増えている。

大手塾の志望者動向調査によると、大学付属校は来春もさらに増えている状況だ。トップの早稲田、慶應の付属校も例外ではない。早稲田大高等学院、早稲田実業、慶應義塾普通部、慶應義塾中等部などで増加している。さらに狭き門になりそうだ。特に早稲田大高等学院の増加が目立つという。早稲田大に直結する付属校だが、他校と比べて偏差値が手ごろで入りやすく感じられ、保護者の注目が集まっているようだ。

その中で、志望者が減少しているのが慶應義塾湘南藤沢だ。来春は、13年に開校した慶應義塾横浜初等部の初めての卒業生が、中学へ内部進学するからだ。そのため、一般枠の募集人員が今春の約120人から約70人に減少する。難化が予想され、男女ともに志望者が減少傾向だ。

MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)の付属校人気も高い。中でも、香蘭女学校の人気が高くなっている。香蘭女学校は立教大に在校生の半数に当たる約80人の進学枠を持ち、早慶をはじめ他の難関大にも合格実績がある人気校だ。18年の入試までは2月1日の1回のみだったが、19年から2日の午後に入試を新設する。MARCHの付属校を目指す女子受験生の併願校として人気を集めている。募集人員が60人減る既存の1日入試も難度が上がり狭き門になりそうだ。

青山学院大や中央大、法政大の付属校も人気がアップ。明治大の付属校では、明治大付中野と明治大付中野八王子の人気が高く、明治大付明治は少し落ち着いている。

日本大付属校の人気も高い。医学部を含む多様な学部がある日本大進学と、他大進学も可能なカリキュラムが受け入れられている。日本大第三、日本大豊山、日本大、日本大藤沢などが人気だ。

そんな中、19年は東京に50年ぶりに日本大の準付属校が誕生する。日出が日本大の付属校となり、目黒日本大に校名変更。カリキュラムを改革し、日本大だけでなく他大進学にも対応する教育を行う。説明会に保護者と受験生が多く集まり、関心が高くなっている。

18年は武蔵野大付千代田高等学院が共学化したが、来春は同系列の武蔵野女子学院中が共学化し、武蔵野大に校名変更する。コースを再編し、グローバル・サイエンス教育を実施。高校は20年から共学化する予定だ。

付属校の良さは、併設大への内部進学制度があるため、大学受験に特化した勉強が不要で、そのため文系・理系にこだわらず幅広い学びが可能なことだろう。第二外国語が学べる学校も多い。また、クラブや課外活動、趣味や興味に合った勉強に思う存分打ち込むことができるのもメリットだ。高大連携で大学の授業を受けたり、入学後認定される単位の取得が可能な学校もある。

一昔前は、付属校は勉強がラクだとか、大学に一般入試で入学した学生と比べて学力が見劣りするのではないかと思われがちだった。しかし、今は多くの付属校で、学力伸長に力を入れ、普段の勉強を重視している。英検やTOEICなどに挑戦させ、併設大への内部進学の条件にしたり、卒業論文を課したりしている。

付属校で学ぶメリットを活かせるかどうかは自分次第だ。自分なりの目標を持ち、能動的に学校生活を過ごせるかどうかが、自らを伸ばす鍵になり、将来につながる。時間に余裕があるからとダラダラ過ごしては、付属校に進学する意味がないことを覚えておきたい。