23年中学入試最終予測

中学・高校情報 大学通信 石丸 公子
23年中学入試最終予測

話題性がある私立校に人気が集中 併願パターンを工夫して、合格を勝ち取ろう

1月から本格的にスタートする首都圏の私立中入試。今年は、新設校や共学化などの学校改革の話題が多く、中学受験への関心が高まっています。ここでは、中学受験のエキスパートに聞いた、模試の志望状況からみえる23年入試予測と注目校、入試の注意点などについてお伝えします。

23年も人気が続く首都圏私立中入試

22年の1都3県の小6生数は21年より減少するなど、少子化は進んでいるものの、22年の首都圏私立中入試は21年を上回る受験生数になりました。この勢いは23年も続きそうです。唯一児童数が増えている東京は、中学受験率が最も高い地域です。特に23区は人口が増え続けているため、私立中を目指す家庭は今後も増えそうです。

首都圏の私立中入試は、埼玉・千葉の1月入試から始まり、東京・神奈川の2月入試まで、複数の私立校を併願するのが一般的です。出願する学校数はやや増加傾向で、一人当たりの出願回数は平均約6試験回、大手塾に通う児童は7~8試験回となっています。また、帰国生のなかには、10月下旬から始まる帰国生入試と一般入試の両方を受験する人も多く、22年入試では計20試験回以上に出願した帰国生もいたようです。

1月入試は、志願者が増える見込み

21年・22年入試はコロナ禍の影響もあり、1月20日から始まる千葉の入試を受けずに2月入試に備える受験生が目立ちました。埼玉・千葉の1月入試は、全体的に志望者数が減り気味でしたが、23年は1月入試校を志望する東京、神奈川の受験生が増えるなど、コロナ禍前の水準に戻りつつあります。市川渋谷教育学園幕張立教新座浦和明の星女子など、他県の学校を第一志望にする東京の受験生も増えています。特に、市川は多くの志願者を集めそうです。教育内容だけでなく運動施設が充実していることも、同校の魅力です。また、埼玉では栄東の人気が続いており、22年を上回る志願者数になりそうです。その分開智は狙い目になるかもしれません。女子は淑徳与野も志望者が増えています。この他、大宮開成城西川越獨協埼玉昭和学院麗澤埼玉栄なども人気を集めそうです。

21年に校名変更・共学化などの学校改革を行い、志願者が大幅に増えた光英ヴェリタスの人気も続いています。光英ヴェリタスの最寄り駅を通る北総線が、22年10月から通学定期の料金を約3分の1に値下げしました。物価が上昇し家計を圧迫する中、通学費用が下がることは人気の追い風になるでしょう。

また、23年に中学校を開校する流通経済大付柏。高校はスポーツの強豪校ですが、中学では難関国公立大や最難関私立大に現役合格できる力を養うカリキュラムを整え、グローバル教育にも力を入れていきます。12月に実施された第一志望入試では、募集人員が50人のところ、140人の受験生を集め、予想以上に厳しい入試になりました。

校長が代わり、学校改革を進めている昭和学院秀英も注目が集まっています。

一方、寮がある学校の首都圏入試は、北嶺早稲田佐賀の人気が続いており、実際に進学する人も少なくありません。ラ・サール海陽佐久長聖愛光西大和学園なども首都圏から進学者がいる学校です。今は共働きの家庭が多いため、子どもの面倒を十分にみられないこともあります。その場合の進学先として、寮がある学校を志望校に加える家庭が増えています。

2月入試は、共学化などで話題の学校に志望者が集中

新校舎を建設中の開成桜蔭は、22年以上に受験生を集めそうです。開成はICT環境、桜蔭は理科教室が充実するなど、教育環境が良くなります。21年にサイエンスセンターを設置した海城もそうですが、理科教育に力を入れている学校は人気があります。また、開成との併願者が多い聖光学院も志望者が増えています。

一方、女子学院豊島岡女子学園洗足学園などの難関女子校の志望者は減少傾向です。ランクを下げて、合格が確実な志望校を選択する受験生が増えているのです。ただ、学力上位層ではなく、合格の可能性が低いチャレンジ層が減っているだけなので、難度は変わらないでしょう。

また、男子校では武蔵の人気が続いているほか、栄光学園サレジオ学院逗子開成の人気が上がっています。通いやすい立地で人気の高輪も志望者が増えています。

東京都市大付は23年入試から2月1日の午前入試を導入。既存の1日午後入試も志望者数が増加しているので、1日午前入試が加わることで、志願者が大きく増えそうです。

一方、今年は新設校や共学化など、話題がある学校が多く、そういう学校を中心に志望者が増えています。東京女子学園が校名変更・共学化して23年に誕生する芝国際は志望者が急増しています。一足先に実施した帰国生入試でも多くの受験生を集めました。同じく、目黒星美学園から校名変更・共学化するサレジアン国際学園世田谷も志望者が増えています。日本学園は、26年度に共学化して明治大の系列校になることへの期待感から人気が高まっています。

また、東洋英和女学院跡見学園山脇学園などの伝統女子校の人気が復活してきました。これらの女子校は教育内容が充実している上に、茶道や華道など日本の伝統文化について学べるプログラムも強み。難度も比較的落ち着いているので、受けやすいのも魅力です。大妻多摩富士見のほか、カリタス女子光塩女子学院湘南白百合学園などの志望者も増えています。

一方、人気が上がり続けたことで難度が高くなった大学付属校の志望者は、全体的に減少傾向です。志望者が増えているのは中央大付くらいです。また、香蘭女学校青山学院横浜英和など、他大学進学も視野に入れられる系列校の人気が上がっています。

探究学習や高大連携に積極的な注目校

現在の学習指導要領で重視されている探究学習。私立中高一貫校には、以前から探究学習をカリキュラムに取り入れている学校が多くあります。私立中入試では適性検査型入試が減少傾向で、4教科型の入試に戻りつつあります。探究学習の中身を充実させていくために、教科書の内容をきちんと理解してから入学してほしいという思いがあるのでしょう。

特に、田園調布学園カリタス女子湘南白百合学園などの女子校は探究学習に積極的。その上でしっかり勉強させるカリキュラムがあります。古くからリベラルアーツ教育を実践してきた大学付属校も探究学習に強く、立教新座では高3の自由選択科目を約80講座、9つの外国語科目を設置しています。こうした多様な教育があることは大学付属校の魅力でもあります。

探究学習をキャリア教育の一環として取り入れている学校も少なくありません。早くから大学の教育内容を知る機会を得ることで、自分が大学で何を学びたいのかをしっかり考えた上で学部・学科を選択できます。難関大や人気の大学以外にも良い大学があることにも気づきやすくなるでしょう。大学入学後のミスマッチも起きにくくなります。

大学との高大連携教育についても、私立校は積極的な姿勢をみせています。これまでの高大連携は、併設大を通して早くから大学教育に触れられる大学付属校が中心でした。最近は進学校も大学と連携協定を結び、出張授業や大学訪問を積極的に行うようになっています。連携先として、医療系や理工系、リベラルアーツ系の学部・学科がある大学が人気です。

例えば、三輪田学園は法政大との連携協定を再締結し、AIやデータサイエンスなどの大学の授業を生徒も受けられるようになりました。また、神田女学園も複数の大学と連携しています。

大学への推薦枠があることも、高大連携のメリットです。獨協獨協埼玉は、獨協医科大の推薦枠を設けています。早稲田実業学校も、日本医科大に推薦で進学できる制度があります。

心に余裕をもって入試に臨む 併願パターンを工夫しよう

最近は、自宅からの距離や学校の雰囲気、偏差値、難関大への合格実績などを判断基準に、志望校を選択する家庭が多いようです。そういう家庭では、大学付属校や進学校、別学校や共学校、宗教系などの枠組みにこだわらず、多様な併願パターンを組む傾向があります。

志望校を決める際に注意したいのが、1月入試校に合格した上で、2月入試の第一志望校を受けるような併願パターンを組むこと。志望順位があまり高くない学校でも、合格していれば、心に余裕をもって第一志望校の入試に向かうことができるでしょう。逆に、2月2日までチャレンジ校や同じレベルの学校を受け続けて、3日以降に安全校を受験するのは危険な併願パターンです。このところ、2月3日以降の入試では合格者を絞り、厳しい入試になる傾向があるからです。合格圏内の学校でも、残念な結果になる可能性があります。また、3日以降の入試をやめる学校も後を絶ちません。23年入試では、芝浦工業大が3回目の入試を廃止。人気校を中心に、こういう動きはますます増えていくでしょうから、2月2日までに合格を得られるように、併願パターンを組んでください。

学校改革を行い人気に火がついた広尾学園広尾学園小石川三田国際学園などの共学校は、女子を中心に志願者が集中する傾向があり、23年も厳しい入試になりそうです。これらの共学校は午後入試が多く、競争率が高くなりがちです。共学校より倍率が低めの女子校を併願校として加えるなど、対策を立てることをお勧めします。

学校改革や入試変更など、話題がある学校に志望者が集まる傾向は続いていますが、そういった学校以外にも、良い教育を行っている学校はたくさんあります。なかでも、小規模な女子校は生徒数が少ない分、一人ひとりの個性を見極めて、丁寧に指導してもらえるのが魅力。例えば、北豊島は海外大学に2年連続で海外大学に70校以上合格しており、海外大への現役合格率が半数を超えています。大学合格実績が多様化する中、その好例ともいえる学校です。また、神奈川の聖園女学院聖和学院も、小規模ながら良い教育を行う学校です。共立女子第二も、探究学習や英語教育など、充実した取り組みがあります。地の利はあまり良くなくても施設・設備が整っている学校も多いので、ぜひ選択肢に加えてほしいと思います。

志望校選択のアドバイスと、注意していただきたいこと

志望校は、子どもと話し合って決めましょう。子育ての最終目標は子どもを自立させること。自分の意思で志望校を選択する経験は子どもを成長させますし、自分が選んだ学校であれば、絶対に入学したいという強い気持ちも芽生えます。それがボーダーラインの1点につながることもあります。

一方、保護者として最も注意したいのが、出願や合格の手続きについてです。ほとんどの学校が、出願などの手続きをWEB上でできますが、日程を間違えたり、忘れてしまうケースもあるようです。出願や合格発表、合格後の手続きなどのスケジュールは、一覧にして目立つところに貼っておきましょう。特に、合格後の手続きは、少しでも遅れたら入学する権利を失うことになるので、気をつけてください。