学校法人関西学院と豊田通商が産学連携で SiCパワー半導体ウエハーの研究開発会社を設立–電動化が進む自動車産業などのカーボンニュートラルに貢献
学校法人関西学院(以下、関西学院大学)と豊田通商株式会社(以下、豊田通商)は、SiC(炭化ケイ素)パワー半導体ウエハーに関する研究開発会社QureDA Research株式会社(キュレダリサーチ、以下、QureDA Research)を設立した。
QureDA Researchは、関西学院大学と豊田通商が開発したパワー半導体材料SiCウエハーの欠陥を無害化する表面ナノ制御プロセス技術「Dynamic AGE-ing®(ダイナミックエージング)」の“創る”と、ウエハーの加工工程において生じる結晶表面の歪みを可視化する計測技術の“視る”を軸に、SiCウエハーの高品質化、生産性向上、大口径化(8インチ)に向けた研究開発を行う。
ダイナミックエージングは、関西学院大学(金子忠昭工学部教授)が創出した技術。高温加熱により、ウエハー表面の原子配列を並び替える非接触式の加工技術を取り入れた、新たなウエハー製造法。従来の課題であったウエハー品質の向上と低コスト化を実現する。
SiCは、現在広く普及しているパワー半導体材料であるSi(シリコン)と比較し、電力ロスを大幅に低減でき、電力利用の効率化および冷却装置の小型化を可能にする。特に電動車(EV・HV・FCV)からのニーズが高く、国内外の自動車産業において急激な需要拡大が見込まれている。しかしながらSiCウエハーはSiウエハーに比べて硬くて脆い材質であり、現在の生産技術では製造工程において多くのロスが生じており、材料物性の知見に基づく革新的技術が強く望まれていた。
関西学院大学と豊田通商は、これまで関西学院大学が25年に渡り培ったSiC関連技術と豊田通商の持つ企業ネットワークを活用し、ユーザー企業およびメーカーが広く参画できる開発プラットフォームを構築し、技術開発および実証を行ってきた。
この開発プラットフォームを活用し、ダイナミックエージング技術を実用化するとともにSiCパワー半導体の工業化を加速することを目的として、両者でQureDA Researchを設立することとなった。
QureDA Researchは、両社が構築した開発プラットフォームを発展させ、国内外の企業と来たる大口径化(8インチ)を見据えたパワー半導体SiCウエハーの新たな製造法を2025年に実用化することを目指すとともに、SiCウエハーの高品質化、生産性向上といった様々な市場課題に対する最適なソリューションや知的財産権のライセンスを提供する。関西学院大学はサイエンスに基づく研究開発、豊田通商は新たなバリューチェーンの創出においてQureDA Researchと連携し、エネルギーの高効率化とカーボンニュートラル実現に貢献する。