千葉商科大学が2025年度に大幅改組—教育と研究の深化を目的に43%の教員が異動
8月2日、東京・千代田区の日本プレスセンタービルで千葉商科大学(千葉県市川市)の記者会見が実施された。同大学は2025年度より、現在の5学部7学科体制を、4学部6学科に改組する。
今回の改組についての議論は、2020年6月からスタート。特に2022年4月以降は教員と職員が一体となり、全学的な意見交換による「ボトムアップ型」の組織改革を進めてきた。その主軸を担ったのが、若手から中堅の教職員で編成された「CUC未来会議」のメンバー。所属部署の利害や、職位に関係なく議論を戦わせた。
そこで課題として挙がったのが、学問領域や各教員の研究テーマが現在の1機構・5学部で重複しており、人的リソースが分散していることだった。現在の組織を再編成し、各教員の知的資産を集約することで、教育や研究が深化するのではないか。この提言をもとに、同大学では前例のない組織改革を実行。これにより156名のうちの66名。全体の約43%の教員が学部を越えて異動する大規模な人事改革を行うこととなった。
さらに、全学部共通の学びを提供する基盤教育機構についてもリニューアル。初年次中心のプログラムを拡大する。その目玉となるのが「自分未来ゼミ」だ。学部を越えて学生が「自分の未来や社会の未来」について考える場となる。自分未来ゼミを牽引する常見陽平准教授は「車座になってお互いが話し合う、放課後の教室のような環境を作りたい。学生に『ここで語り合った』という経験を残すことが大学の意義のひとつ」と語った。
また今回の改組で、国際教養学部は募集を停止。基盤教育機構のアドバンスト科目群を中心に、全ての学生がグローバル教育を学べるようになるため「発展的解消」をする。グェントゥイ専任講師は「グローバル化する世界で必要な素養は、英語力はもとより、外国に関心を持ち、異文化理解を深めること。国の未来をつくり、社会を変えるのは学生たち。全学生に異文化を体系的に理解する機会を与える必要性がある」と、改革の意義を語った。
今回の改組により学生は、卒業必要単位数の1/2までを、基盤教育機構が提供する科目と他学部・他学科の科目から取得でき、興味に応じて学部の垣根を越えた自由な学びが可能となる。もともと同大学には、地域や企業とつながる学生主体のプロジェクトが数多く存在する。
「単位にならないプロジェクトに100人以上が参加しています」(東菜月課長補佐)
学生は、これらのプロジェクトを通して、多様な問題意識や探究心を持つ。その結果「この授業を受けてみたい」というものが所属学部以外の科目に発展することは歓迎すべきこと。科目取得の自由度が広がることで、学生の興味関心に柔軟に対応することが可能となる。大学の都合ではなく、学生本位の学びを提供したいという教職員の思いが伝わってくる。
今回の記者会見では同時に、「100年いきる良識を。」というステートメントも発表された。「100年」には「次の100年」と「人生100年時代」の2つの意味が込められているという。そして、どちらの意味も「良識」という言葉につながっている。同大学は開学当初から高い倫理観を持った指導者を意味する「治道家」の育成を提唱してきた。
「金儲け主義ではダメ。商業には高い倫理観が必要。良識をもって、おかしいことには、はっきりと『おかしい』と言える人を作る」と原科幸彦学長は決意を語った。
建学の精神を現代社会に最適化し、学生のニーズに沿った改革を遂行する同大学は、次代に向けてどのような人材を社会に輩出するのか。18歳人口の減少下における新たな挑戦に期待が高まる。