東京医科歯科大学は、国立大学で唯一の医療系総合大学として「知と癒しの匠を創造し、人々の幸福に貢献する」ことを理念に掲げ、人々の健康と社会の福祉に寄与しています。
2020年春には「M&Dデータ科学センター」を開設し、医歯情報科学の国際拠点を目指しています。また、「創生医学・オルガノイド医療」「稀少疾患・難治疾患研究」「口腔科学研究」という重点研究領域とメディカルデータサイエンスが一体となった革新的研究を展開。ポストコロナ時代に世界で羽ばたき、社会に貢献するグローバル医療人材を養成しています。
※このインタビュー動画は2020年7月31日に収録したものです
国立大学唯一の教養部と
医歯学融合教育
東京医科歯科大学は、世界ランキング・トップレベルを目指す大学として、 Times Higher Education(THE)分野別世界大学ランキング2020において臨床・前臨床および健康分野で74位(国内第3位)にランクイン。英国の世界大学評価機関クアクアレリ・シモンズ(QS)が発表した分野別世界大学ランキングでは歯学分野で世界第6位(国内第1位)に輝くなど、その研究力・教育力は世界的に高い評価を得ています。
その教育の柱となっているのが、教養教育と医歯学融合教育 (1)です。国立大学で唯一の教養部 (2)を設置しており、「幅広い教養と豊かな感性を備えた人間性の涵養を目指す」「自己問題提起、自己問題解決型の創造力豊かな人材を養成する」「国際感覚と国際競争力に優れる人材を養成する」という3つの教育理念に基づき、医療人に求められる教養と人間としての力を身につける教育を行っています。医歯学融合教育では、医療系総合大学の特性を生かして医学部・歯学部の学生が共通して学ぶべき科目を合同で行っています。
- (1) 医歯学融合教育: 2〜4年次に「英語、臨床統計、倫理」を学ぶほか「頭頸部ブロック」学習では両学科に共通の教育や、患者さん参加の学習、症例基盤型学習などを行う。「総合診療・地域医療ブロック」学習では地域住民のニーズに合致した医療について学び、最終学年では全学部全学科の学生が一堂に会し、多職種連携のチーム医療を学ぶための「包括医療学習」が行われている。
(2) 教養部: 東京医科歯科大学の基本理念に基づき国際的に通用する医療人の基盤となるさまざまな文化や多様な世界を理解できる幅広い教養と、他者を理解するための豊かな人間性と倫理観、自ら問題提起し解決する創造力を兼ね備えた人材を育成する。入学直後には「教養総合講座」が全学生を対象に開講され、学科横断で構成される少人数グループそれぞれに教員一人が付き、大学での学習に必要な資料の収集方法や議論の仕方、成果のまとめ方や発表の仕方を学ぶ。また、サイエンスをベースとした課題解決型学習(PBL)の入門授業を実践している。
世界水準の教育を支える
教学環境を整備
東京医科歯科大学では、教養教育と医歯学融合教育のほかにも、世界レベルの教育や研究を支える教学環境が整っています。医学部では研究の体験を重視し、医学科2年生以上を対象とした基礎研究入門プログラムや5年生以上を対象とした、コース終了後に特任助教として研究を続けることができる「研究者養成コース」を導入。歯学部ではデジタル技術を応用した歯科医療を学修するデジタルデンティストリー教育を実施するとともに、バーチャルトレーニングシステムを導入しています。
また、医学科、歯学科ともにMD‐PhDコースやDDS‐PhDコース (3)、プロジェクトセメスター(自由選択学習)、研究実習 (4)といったプログラムを揃えており、学生が自分の希望する道を選びやすいようサポートしています。
- (3) MD-PhDコース<医学科>、DDS-PhDコース<歯学科>: 医学・歯学研究者早期育成コースで、優れた医学・歯学研究者を育成するための早期医学・歯学研究トレーニング特別プログラム。学部の4年次あるいは5年次修了後に、学部を一時休学し、大学院に進学。それにより、学部教育における基礎的な医学・歯学教育を発展させ、体系だった高度な医学・歯学研究を経験することを目的とする。大学院修了後は学部の5年次あるいは6年次に復学し、医師又は歯科医師免許の取得を目指すことになる。
(4) プロジェクトセメスター(自由選択学習)<医学科>、研究実習<歯学科>: 主な講義・試験及び基礎実習を終えた4年次に設定されている最長6か月のコース。興味をもった分野について集中的に学ぶことにより、科学的視点を有する医師・歯科医師としての基盤を養成する。国際交流協定校のインペリアルカレッジ(イギリス:ロンドン)、キングスカレッジロンドン(イギリス:ロンドン)、オーストラリア国立大学、ソウル大学、チュラロコーン大学(タイ)などにおける履修の機会もある。
オンライン授業でも
質の高い教育水準を維持
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、東京医科歯科大学では新学期からオンライン授業を実施しています。新年度開始前にオリエンテーションを実施し、事前に学生一人ひとりの自宅環境を確認し、全員が平等に授業を受けることができるよう、インターネット環境が整っていない学生のためにソーシャルディスタンスを確保したうえで講義室を開放。また機器を保有していない学生のために、情報検索室(PC室)を開放しました。
座学については、Web会議システムの機能を利用して少人数でのアクティブラーニング等も行っており、オンライン授業であっても前年度と変わらないカリキュラムを継続することができています。臨床実習については、症例検討はオンラインで行うといった工夫をしながら、感染対策を十分にした上で開始しています。
オンラインの利点を生かし
積極的な国際交流を展開
東京医科歯科大学では、学部学生・大学院生の留学など海外交流を積極的に推奨・支援しており、2020年4月には、マヒドン大学(タイ)とのジョイント・ディグリープログラムを開設しました。新型コロナウイルスの影響で海外渡航が難しい状況ですが、海外の協定校の学生とオンライン上で交流する「Discussion Café」を開催するなど、オンラインの利点を活かした国際交流を行い、学生の視野を広げるよう取り組んでいます。オンラインで参加することで、学生も「コロナ禍でも距離の壁を越えて海外の学生と交流できる」と、とても人気のプログラムになっています。
このようなオンラインを活用した取り組みは、オンラインの利点を活かして実際の派遣と組み合わせて継続し、ハイブリッドな国際交流の取り組みも検討しています。
世界最先端の研究を行う
リサーチユニバーシティ
東京医科歯科大学は、リサーチユニバーシティとして数多くの世界最先端の研究を行っており、「創生医学・オルガノイド医療研究」「稀少疾患・難治疾患研究」「口腔科学研究の展開」の3つを最重点研究課題に掲げ革新的研究を実践しています。オルガノイドはミニ臓器と呼ばれるもので、東京医科歯科大学が開発した独自のミニ臓器技術を活かして失われた臓器機能を「創り生かす」次世代医療の開発に取り組んでいます。稀少疾患・難治疾患研究では、稀な難病の成り立ち(病態)を明らかにし、画期的な治療法を開発すると共に、これから問題となる難病を予測・予防する研究を行っています。口腔科学研究では歯科診療を全身疾患の門番と再定義し、口腔内の情報を疾患予防へと役立てています。
また、今年(2020年)4月には「M&Dデータ科学センター」をオープンしました。「M&Dデータ科学センター」は、メディカルデータの収集・解析・活用に必要な基盤技術を開発する「データ科学基盤系」、メディカルデータと生体ビッグデータの収集・解析手法を開発する「データ科学実践系」、医療データを活用した病院システム(AIホスピタル)を構築する「データ科学アウトカム系」の3部門を置き、情報科学と医学・歯学を融合させた新しい研究領域「医歯情報科学」の全国モデルの構築に取り組みます。この医歯情報科学は、国内唯一のもので、国際拠点となることを目指すとともに、医歯情報科学を支えるメディカルデータサイエンティストの育成にも力を入れていきます。
M&Dデータ科学センターと世界最先端の基礎研究、医学部・歯学部附属病院の医療データと紐づけ、トータル・ヘルスケアを実現できるClinician Scientistsを育成します。