[東京工業大学]世界最先端の研究と充実した教養教育でグローバルな理工系人材を養成し、「世界最高の理工系総合大学」の実現を目指す

大学改革 卓越する大学 2021年度版

創立から約140年の歴史を有する東京工業大学は、世界レベルの卓越した研究で知られる理工系総合大学です。地球規模の課題を解決するための最先端の研究・教育を実践しており、充実した教養科目を整備するなど、学生本位の〝学育〟でも知られています。

2018年には指定国立大学法人に指定され、「未来社会DESIGN機構」を設置しました。「挑み続け、未来を創る東工大」を掲げて、2020年1月には「未来社会像」と「東京工業大学未来年表」(1)を発表。2030年までに世界トップ10に入るリサーチ・ユニバーシティを目指し、世界を舞台に活躍できるグローバルな理工系人材を養成しています。

※このインタビュー動画は2020年6月30日に収録したものです

(1) 「未来社会像」と「東京工業大学未来年表」: 未来社会DESIGN機構では、2018年9月の発足以来、「ありたい未来」=「予測ではない人々が望む未来社会」を考えてきた。2020年、ありたい未来社会として「未来シナリオ」を年代順に並べた「東京工業大学未来年表」と、「TRANSCHALLENGE社会」を発表。「TRANSCHALLENGE社会」は未来シナリオをもとに創られていて、制約に縛られることなく、誰もが、いつでも、年齢などを問わず挑戦する機会が与えられることを目指している。
[東京工業大学]世界最先端の研究と充実した教養教育でグローバルな理工系人材を養成し、「世界最高の理工系総合大学」の実現を目指す
益一哉学長

オンラインで充実する
学生本位のカリキュラム

東京工業大学は、2016年に日本の大学で初めて学部と大学院を統一し、「学院」を創設しました。学士課程と修士課程、修士課程と博士課程の教育カリキュラムを継ぎ目なく学修できるようにしたシステムで、入学時から大学院までの出口を見通して多様な選択・挑戦が可能となっています。理学院、工学院、環境・社会理工学院など6つの学院はそれぞれいくつかの「系」から成り立っています。入学した1年目は系に所属せず、2年目に系に所属し、修士課程以降は「コース」を選択し専門性を深めます。

また、人文社会系の教養教育に力を入れてきた東京工業大学の理念を象徴する「リベラルアーツ研究教育院」では、学士課程から博士後期課程まで、教養教育と専門教育を有機的に連携させた「くさび型教育」を実施していることも特徴の一つです。

今回のコロナ禍では、授業がオンラインになりましたが、益一哉学長は「学生も教員も前向きに捉えています。チャット機能でよく質問が出たり、自分の専門外の科目をより積極的に受講するようになりました。オンライン化が一層興味を広げたと言えるでしょう。本学は1万人の学生のうち半数が学士課程で、半数が大学院生です。研究室に所属し研究がメインとなる4年生以上の学生も、オンラインできちんとつながることが可能です。入学後1年目から学修する『東工大立志プロジェクト(2)』といった科目も充分オンラインで実施することができました」と語ります。

東京工業大学ならではの取り組みが、「コロナ×未来社会 STAY HOME STAY GEEK―お宅でいよう―」です。東京工業大学の〝尖った研究者=GEEK〟たちをリレー形式でつなぎ、今考えていることや学生へのメッセージを動画で連続配信するもので、ノーベル化学賞受賞の白川秀樹博士やリベラルアーツ研究教育院の池上彰特任教授、多くの研究者が学生に向けて発信しています。

(2) 「東工大立志プロジェクト」: 自ら学んでいくマインドを醸成するための学士課程1年目の授業。「東工大立志プロジェクト」は、講義聴講とグループワークが半分ずつとなっている。講義に基づいて自ら考え、グループ内で他者に表現することを通して、コミュニケーションやプレゼンテーションの能力を高める。

コロナ禍の
課題解決への取り組み

東京工業大学では、2018年に「人々が望む未来社会とは何か」を社会と共に考え、デザインすることを目的に「未来社会DESIGN機構」を設置。まだコロナ感染が始まる前の今年1月、20を超える「未来シナリオ」を作成し、「東工大未来年表」としてまとめました。

それによると、2040年には「ほとんどの仕事はオンライン化され、旅をしながら働くことができるように」なり、「おうち完結生活」が実現するとしています。おうち完結生活では「人々の生活はより『個人化』するとともに、通勤や会議にしばられる時間が減少していく。自宅で過ごす時間が増え、生活がほぼ家の中で完結すると同時に、住まいも地方へと移転する」と述べています。まさに在宅でのテレワークや外出自粛など、コロナ禍での生活を先取りしているようです。

こうした中、東京工業大学は新型コロナウイルスの克服や、ポストコロナの社会を見つめたさまざまなプロジェクトを展開しています。

その一つが「社会再起動技術推進事業」で、その第一弾(一の矢)が、保有する特許131件を一定期間、無償で開放する「お役に立てればプロジェクト」です。「一刻も早く!より幅広く、より効果的に!」を合い言葉に、コロナ対策への転用の可能性を探り、産学連携で企業による事業化を図ろうというものです。

次のステップ(二の矢)では、研究活動を推進し、新型コロナウイルスに対する課題解決に寄与し、さらに三の矢ではそれを進め、海外にもコロナ関連研究を広げていくことを視野に入れています。

また、6月5日には「脱コロナ禍研究プロジェクト」を発足させました。焦眉の急となっているワクチンや治療薬開発をはじめ、医療デバイスや将来予測、働き方改革、ポストコロナ社会における人間のあり方を考えるニュー・ノーマルなど18件の研究が推進中です。東京工業大学では、「社会課題即応研究機構」の発足を準備中で、「脱コロナ禍研究プロジェクト」は、その先行事例として位置づけられています。

[東京工業大学]世界最先端の研究と充実した教養教育でグローバルな理工系人材を養成し、「世界最高の理工系総合大学」の実現を目指す

「基礎研究に加え、社会の求める研究に注力するのも大学です。社会課題即応研究機構は、喫緊の社会課題に対して研究者の叡智を結集して立ち向かおうというもので、1年単位の短期集中、あるいは3年程度の中期的視点で研究を推進します」と益学長は語ります。

独自の奨学金制度で
学生の学修を全面支援

東京工業大学では、コロナ禍で学業に支障をきたしている学生に対していち早く「Team東工大・学生支援プログラム」を創設しました。特別奨学金制度の設立、授業料納付期限の延長、在学期間の延長に伴う授業料の免除などからできており、まずコロナ禍の影響で経済的支援が必要なすべての学生に対して、新型コロナウイルス感染症対応緊急貸与型奨学金として支援を開始。一人当たり5万円×6カ月を上限に無利子で貸与します。このほか、2020年度前期分の授業料納付期限の延長や、大学の研究活動の停止などの影響で在学期間が延長せざるを得ない場合の授業料の免除(大学院生は当初3カ月間、学士課程の学生は6カ月間)などを講じています。

こうしたコロナ関連の奨学金以外の奨学金も充実しています。例えば「大隅良典記念奨学金」は大隅良典栄誉教授からの寄付を原資として設立されたものです。今年4月からはこの奨学金の枠組みの中で、親が大学を卒業していない学生向けの給付型奨学金制度「ファーストジェネレーション枠」が始まりました。親の学歴に関係なく大学へ進学しやすくなるように経済支援するもので、このような奨学金は日本では東工大が初めてです。

Team東工大の一員として
世界をイノベーション

「世界トップレベルの研究者や一流の文化人から学ぶことができるのが本学の一番の強みです。学びの現場においてこれほどぜいたくなことはありません」と益学長が語るように、東京工業大学には最高の学びをサポートする最高の体制が整っています。

その教員たちによる世界最先端の研究には枚挙にいとまがありません。例えば東京工業大学科学技術創成研究院の研究グループは、世界で初めて「ナノ物質の周期表(3)」を作成することに成功しました。高校の教科書に載るような重要な研究といえるでしょう。

「最近ディープテックという言葉がよく聞かれます。深い科学技術をもってイノベーションを起こすという意味ですが、それをできるのが東京工業大学です。本学は未来を共に語り、それを実現していこうという気持ちを持っている大学です。私たちの想像もつかない若者の新しいアイデアと新しい活力を発揮してください。そして、東工大の一員となって一緒に新しい未来を作っていきませんか。それが東京工業大学からの受験生へのメッセージです」と益学長は語ってくれました。

(3) ナノ物質の周期表: 高校の教科書の定番であるメンデレーエフの元素周期表は、これまで自然科学の発展に大きく貢献してきた。その元素周期表が提案されてから150周年を迎えた2019年は「国際周期年」とされた。この節目の年に発表されたのが「ナノ物質の周期表」である。従来の周期表では、単一の原子の性質が扱われていたが、複数の原子からなる高次の物質の間にも新たな周期律があることが解明された。この「ナノ物質の周期表」を指標として未知の物質や新たな機能材料の発見が期待される。