1993年に開学した会津大学はわが国で初となる、コンピュータ理工学を専門とする公立大学です。「to Advance Knowledge for Humanity」(人類の平和と繁栄のために発明・発見を行うこと)を建学の理念に掲げ、研究業績の優れた多数の外国人教員を揃えて、世界最先端の研究開発および教育を展開しています。
英語をキャンパスの公用語とするなど、多様な学生を国内外から受け入れ、国際社会で通用するコンピュータサイエンティストや、情報通信技術(ICT)の高いスキルを備えたエンジニアを育成しています。さらなる国際化に拍車をかける一方で、産官学連携の拠点として、地域の活性化にも積極的に取り組んでいます。
※このインタビュー動画は2020年6月25日に収録したものです
5フィールド制で国内随一の
コンピュータ教育を実践
会津大学では、コンピュータ理工学分野の世界的な先導的カリキュラムであるCS2013 (1)をベースにして、国内随一といわれるコンピュータ教育を実践しています。
具体的には5フィールド(専門領域)制を導入し、「ロボットや医療に興味がある」「大規模なシステムを開発したい」など、学生の多様な好奇心に応えて、希望の進路の実現に直結させています。5フィールドとは「コンピュータサイエンス」「コンピュータシステム」「コンピュータネットワークシステム」「応用情報工学」「ソフトウェアエンジニアリング」の5つで、数学関連科目や体育実技などの共通科目のほかはそれぞれの専門科目を学びます。
学びの環境も抜群で、学生数の2.5倍の約3000台のコンピュータを整備。24時間利用することが可能です。宮崎敏明理事長兼学長は「一般的なパソコンの多くがマイクロソフト ウィンドウズを使っていますが、本学では学生のうちから高度なソフトウェアを構築できるUNIXを広汎に導入しており、就職した学生は企業の即戦力として活躍しています。また、1学年240人の定員に対し教員は110人で、一人の教員が受け入れられる学生数は1学年につき4人までというルールがあり、少人数教育が徹底されています」と説明します。
- (1) CS2013: Computer Science Curricula 2013。アメリカのコンピュータ学会ACM(Association for Computing Machinery=国際計算機学会)やIEEE(米国電気電子学会)で議論されてきたコンピュータ理工学分野の先導的カリキュラム。教養科目、専門基礎科目、専門科目の授業を通してしっかりとした実力を身につける。
教員の40%は外国籍
英語がキャンパスの公用語
会津大学では優秀な人材を国内はもちろん、広く国外からも求めており、外国籍の教員は全体の40%、16カ国にわたっています。学内では日本人研究者と外国人研究者が共同プロジェクトを行い、毎年平均300本以上の研究論文が世界に向けて発表されています。また、開学当初から国際化に取り組んでおり、これまでに交流協定を結んだ世界の大学・研究機関は90カ所を超えます。
さらに、学生が世界の舞台で活躍できる機会も数多く用意しています。会津大学を会場にした国際会議も毎年開催され、「コンテスト・ベースト・ラーニング」の下、学生に対し学内外の競技会への参加を促しています。その一つ、ACM国際大学対抗プログラミングコンテスト (2)は2003年、08年、13年には会津大学を会場にアジア地区予選が開催され、同予選を勝ち抜いたチームが出場できる世界大会に3回出場し、2度の入賞を果たしています。
また、アメリカのシリコンバレーに会津大学のオフィスを開設し、夏に学生がそこを拠点にインターンシップを体験しているほか、中国の大学にも学生を派遣しています。海外からも優秀な留学生が会津大学に集い、キャンパスの公用語は英語と日本語のバイリンガルです。海外の高校を卒業した学生も受け入れ、100%英語のみで卒業できる体制も整えています。
また、会津大学は平成17年度に文部科学省「大学国際戦略本部強化事業」に公立大学として唯一採択され、国際戦略本部が設置されました。さらに、平成26年度には文部科学省「スーパーグローバル大学(SGU)創成支援事業」にも採択され、グローバル推進本部国際戦略室 (3)及びSGU推進室においてさらなる国際化に取り組んでいます。
- (2) ACM国際大学対抗プログラミングコンテスト: ACM(上項参照)が、世界の大学生が自らのコンピュータの知識と技術レベルの向上を図るとともに、貴重な国際経験を積むことを目的に、1977年以来世界的規模で開催している、大学生を対象としたプログラミングコンテスト。会津大学は2009年にスウェーデン王立工科大学で開催された世界大会と、2017年のアメリカ・サウスダゴタ州ラピッドシティで行われた世界大会でそれぞれ入賞している。
(3) グローバル推進本部国際戦略室: 国際戦略本部を発展させたもので、さらなる国際化を展開している。建学の理念「to Advance Knowledge for Humanity」を推進するため、「地域から世界へ、世界から地域へ」(local to global, global to local)の実践を目指し、「会津大学国際戦略の指針」を制定した。指針では 1.研究教育分野の国際的連携 2.国際的人材の養成 3.地域特定に応じた連携の展開 4.国際戦略実行体制の整備——を掲げている。
産学官連携を強化し
地域の活性化に取り組む
会津大学では地域社会への貢献にも積極的に取り組んでいます。「産学イノベーションセンター(UBIC) (4)」は会津大学と企業や地域が連携して研究していくための拠点施設で、会津大学の研究・技術を核とした新産業の創出や地域の活性化に取り組んでいます。また、平成25年には「復興支援センター」を設立。専門であるICTの強みを生かし、東日本大震災からの福島県の復興に貢献することを目指しています。
一方、産学連携の研究施設として特筆されるのが「宇宙情報科学研究センター」(ARC-Space)で、2019年4月には文部科学省の「月惑星探査アーカイブサイエンス拠点」に認定。宇宙航空研究開発機構(JAXA)やICT企業と連携し、公募型の共同研究などを実施し、新たな価値を付加したデータやソフトウェアを開発しています。JAXAが打ち上げた小惑星探査機「はやぶさ2」プロジェクトには、会津大学から多くの教員や研究者のほか学生も参加しています。
- (4) 産学イノベーションセンター(UBIC): 地域活性化のための、以下のさまざまな活動を展開している。
・大学発ベンチャー企業や起業家精神の育成
・知的財産の管理
・研究者の技術シーズの提供
・「会津IT秋フォーラム」やニューテクノロジーセミナーなどの、最先端IT情報を発信する産学連携フォーラムの開催
・IT関連の各種講習会の開催
このほか、最先端のシステムを備えた施設を低料金で利用できるようにしている。
オンライン化を通し
より質の高い授業を目指す
会津大学ではコンピュータ理工系の大学の強みを生かし、ほとんどの授業でオンライン化にも取り組んでいます。これにより、複数の教員が同じ科目を教える場合、質の均一化が図れるといった効果も出ています。アメリカでは、学生が自宅でビデオ授業を視聴して予習し、教室では講義は行わず、教員が個々の学生に合わせた指導を行う反転授業が普及していますが、今回のコロナ禍を機にそうした授業の導入も視野に入れています。
宮崎学長は「理工系では座学ではできない実験などの授業もありますが、4学期制をとっている利点を生かし、新型コロナウイルスの動向を見て、フェース・トゥ・フェース(対面型)の授業を取り入れるなど柔軟に対処していきます」と話します。
また、ポストコロナ社会を見据えて、今年7月から、会津大学の学生がその開発に深く関わった日本初のデジタル地域通貨を学内売店・食堂で使用できるようにしました。白虎隊にちなんで「白虎」と名付け、お金に手を触れずにスマホによる支払等が可能となりました。さらに東京のベンチャーと共同で、会津若松市内で弁当をテイクアウトできる店がすぐ分かるスマホアプリを作成し、市民に喜ばれています。
世界に通じる研究と
さらなる国際化に邁進
会津大学の入試制度は、国公立大学としては極めてユニークなもので、2021年度入試も共通テストは理科1科目、大学による個別学力試験は数学と英語のみの予定です。また、高校2年で受験できる早期入学や、海外の高校生に門戸を開いた秋入学のICTグローバルプログラム全英語コース入試も用意しています。
一方、入学後のキャリア支援も充実しており、開学以来、大学院でほぼ100%、学部で平均97%という高い就職内定率を誇っています。宮崎学長は「私たちは常に世界を見つめ、多様な学生を受け入れています。国内でも6割が福島県以外からの学生です。これまで以上に、研究力を強化し、世界に通じる研究を実践することに力を注ぎます。そのためにもさらなる国際化を進め、提携大学を増やして学生の交流を盛んにします」と説明。続けて、「会津大学に入れば世界が見えます。世界最先端の技術や人に触れることを望む人は、ぜひ来ていただきたい。やる気があり自分の夢を持ちたい人を本学は待っています」と受験生にエールを送っています。