理工系 ─ 2019年学部系統別実就職率ランキング

ランキング 雫 純平
理工系 ─ 2019年学部系統別実就職率ランキング

写真=豊田工業大学

同じ大学でも、学部によって実就職率は異なる。より詳細に大学の就職力を検証するために、学部系統別に実就職率を比較してみよう。第11回となる今回は、「理工系」学部に注目して実就職率を比較してみた。

理工系 ─ 2019年学部系統別実就職率ランキング

理系の知識・技能を持つ学生への期待

「理工系」を代表する学部といえば、理学部と工学部、そして理工学部だろう。理学部では数学や物理学、化学や生物学など、自然科学を追及する。工学部では、機械や電気電子、建築など、既にある科学技術を発展させ社会に役立たせる方策を学ぶ。そして、理工学部は、理学部・工学部の性質を併せ持つという特徴がある。

系統全体の実就職率は92.7%だった。(2019年8月5日現在。)

IT(情報技術)やAI(人工知能)などの急速な発達を背景に、理系の知識・技能を学んだ学生への期待は大きく、実就職率は安定して高い。また、大学院進学率が高いことも特徴だ。

実就職率が100%に近い大学が並ぶ

表は「理工系」学部の実就職率ランキングだ。トップは豊田工業大・工。卒業生84人のうち、大学院進学者57人を除いた27人全員が就職し、実就職率は100%だ。2位は八戸工業大・工で99.0%、3位は東北工業大・工で99.0%、4位は静岡大・工で98.6%、5位は大阪工業大・情報科で98.5%と、100%に近い数字が並ぶ。

以下、金沢工業大・バイオ・化、金沢工業大・工、愛知工業大・情報科、福山大・工、愛知工業大・工と続く。

トヨタ自動車が設立した大学も

1位の豊田工業大は、1981年にトヨタ自動車が設立した。トヨタグループその他各社の支援のもとで産学一体となった教育・研究環境を整備している。教員1人につき学生10.2人という少人数教育環境と、全国の大学でも指折りの実験・実習時間数が強みだ。

2位の八戸工業大の学生支援の特徴は、担任となる教員が入学から卒業までの4年間を通して学生生活をサポートすること。就職に関しても1年次の早い段階からきめ細かく相談できるのは心強いことだろう。

3位の東北工業大は、基礎学力の強化に力を入れている。入学後のオリエンテーション期間に習熟度分けテストを実施し、習熟度別に数学、物理、化学など工学の基礎となる科目を学ぶ。また、習熟度に達しない学生には別途、基礎学力向上支援講座を開講。入学直後に学力面で遅れをとる学生を出さないことが4年後の就職実績にもつながっている。

以上、11回に分けて学部系統別に大学の実就職力を比較してみた。大学全体の実就職率だけでは測れない、より詳細な就職力をみる際の一助にしていただけると幸いだ。

<表の見方>

医科・歯科の単科大等を除く全国735大学に今春の就職状況を調査。545大学から得た回答(2月6日現在)を基に、系統別に学部実就職率上位校を掲載した。卒業者数が80人未満の小規模な学部、通信教育学部、2部・夜間主コースのみのデータは掲載していない。データを未公表、または未集計の大学・学部は掲載していない。

各系統は、主に学部名称により分類したため、学科構成や教育の内容が似ていても掲載していないものがある。例えば、法学科をもつ大学・学部でも学部名に「法」が付かない場合、法学系に掲載していないことがある。

実就職率(%)は、就職者数÷(卒業者数-大学院進学者数)×100で算出。大学院への進学者数が未集計の場合、実際の数値が掲載している値より高い場合がある。

文部科学省では、就職率を「就職希望者数に占める就職者の割合」で算出することを推奨しているため、各大学が公表している就職率と異なる場合がある。ここでは文部科学省が用いる「就職率」と区別するため、「実就職率」という表記を用いた。同率で順位が異なるのは、小数点2桁以下の差による。

大学院進学者数の「-」は進学者がいないか未集計を表す。大学名の△印は国立、◎印は私立、無印は公立を示す。大学・学部名は現在の名称で掲載している場合がある。所在地は大学本部の所在地で学部の所在地と異なることがある。

《理工系》

順位   大学(所在地) 学部 実就職率
(%)
卒業者数 就職者数 大学院
進学者数
1 豊田工業大(愛知) 100.0 84 27 57
2 八戸工業大(青森) 99.0 209 203 4
3 東北工業大(宮城) 99.0 403 381 18
4 静岡大(静岡) 98.6 555 217 335
5 大阪工業大(大阪) 情報科 98.5 367 328 34
6 金沢工業大(石川) バイオ・化 98.5 159 130 27
7 金沢工業大(石川) 98.5 799 637 152
8 愛知工業大(愛知) 情報科 98.4 208 184 21
9 福山大(広島) 98.4 130 120 8
10 愛知工業大(愛知) 98.3 943 856 72
11 福岡工業大(福岡) 98.2 368 334 28
12 中部大(愛知) 98.2 747 661 74
13   秋田県立大(秋田) システム科学技術 98.2 226 163 60
14 近畿大(大阪) 産業理工 98.2 353 321 26
15 香川大(香川) 98.1 250 153 94
16 金沢工業大(石川) 環境・建築 97.9 317 285 26
  名城大(愛知) 理工 97.9 1,164 950 194
18 東京工科大(東京) 97.9 288 236 47
19 福井大(福井) 97.6 572 279 286
20 東京工芸大(東京) 97.5 358 317 33
21 近畿大(大阪) 97.5 480 423 46
22 愛媛大(愛媛) 97.4 542 303 231
23 九州工業大(福岡) 97.3 505 179 321
24 芝浦工業大(東京) 97.2 1,046 696 330
25 日本工業大(埼玉) 97.0 933 844 63
26 大阪工業大(大阪) 97.0 1,016 810 181
27 静岡理工科大(静岡) 理工 97.0 177 161 11
28 北里大(神奈川) 96.9 207 95 109
29 中京大(愛知) 96.9 286 251 27
30 新潟工科大(新潟) 96.6 125 115 6
31 武蔵野大(東京) 96.6 179 141 33
32 東京理科大(東京) 96.4 510 189 314
33 工学院大(東京) 先進工 96.4 305 215 82
34 山形大(山形) 96.4 613 267 336
35 大同大(愛知) 96.4 442 398 29
36   北九州市立大(福岡) 国際環境工 96.4 276 132 139
37 広島工業大(広島) 96.3 541 491 31
38 東京都市大(東京) 知識工 96.2 262 203 51
39 龍谷大(京都) 理工 96.2 615 505 90
40 近畿大(大阪) 理工 96.2 1,034 754 250
41 関西大(大阪) 環境都市工 96.1 351 249 92
42 九州工業大(福岡) 情報工 96.1 432 224 199
43 福岡大(福岡) 96.1 638 542 74
44   公立千歳科学技術大(北海道) 理工 96.1 142 122 15
45   兵庫県立大(兵庫) 96.1 339 146 187