私立31医学科に強い高校2025

ランキング 文 秋岡 達哉(大学通信)
私立31医学科に強い高校2025

近年、私立大医学科受験において、中高一貫校の存在感が増している。私立大医学科合格者数ランキングを見ても、中高一貫校が上位を独占する状況が続いている。「なぜ中高一貫校が医学科受験に強いのか?」「今、私立大医学科受験はどうなっているのか?」といった疑問について、前回の国公立大編に続いて名門会の梅原さんと金子さんに話を聞いた。

2025年度の私立大医学科一般選抜の志願者数は、わずかに前年より増加した。近年、志願者数の増加傾向が続いており、受験生の根強い医学科人気を示唆している。特に、共通テスト利用方式や後期日程で志願者が増加しており、複数の大学を併願する動きが活発になったことがうかがえる。

志願者数が増加したことで、私立大医学科の激戦ぶりは依然として続いており、今後も、一部の高校に合格者が集中する傾向が続くとみられる。医学科合格実績の高い高校、いわゆる「医学科に強い高校」には、どのような特徴があるのだろうか。「私立31医学科に強い高校」ランキングを見て、金子さんは次のように解説する。「私立大医学科の合格者ランキングを見ると、やはり中高一貫校が目立つ傾向にあります。これは、私立大医学科の多くが都市部に位置しており、同じ地域に多数の私立中高一貫校が存在するため、必然的に合格者数も多くなるからです。また、中高一貫校は先取りのカリキュラムや受験戦略においても強みがあります。」

ランキング1位は豊島岡女子学園で133人。理系に強い学校であり、在学生の半数以上が理系を志望している。同校も国公立大編で1位の東海高校と同様に、医学科を志望する生徒が多く、互いに切磋琢磨できる環境が整っている。

2位は桜蔭で130人。女子校であるが、同校では理系志望の生徒が7割以上を占めている。卒業生に医師が多いこともあり、医学科志向が強い傾向にあることも、医学科合格者が多い一因となっている。

3位は四天王寺で107人。医学科を目指す生徒のために中学1年から「医志コース」が設けられており、理数に強くなるカリキュラム編成など医学科受験に力をいれている。

このように上位3校は全て中高一貫の女子校となった。女子校が医学科受験に強い理由について金子さんはこう言う。「ここ5年から10年の間で、特に首都圏では女子の医学科受験熱が非常に高まっています。以前、東京医科大での不正入試問題が発覚して以来、女子受験生が不利になる状況は大幅に改善されました。それと推薦入試などの特別選抜では、出願資格として高校の評定平均が求められることが多く、学業に真面目に取り組むことが多い女子にとって有利に働く場合があります。そのため、特別選抜への出願者は男子よりも女子が多い傾向にあります。また、女子の合格率が高いケースも見られるため、特別選抜による女子の合格者が増加しています。こうした状況から、医学科受験は女子にとって、より身近な選択肢になってきていると言えるでしょう。」

4位は開成で106人、5位は海城で98人、6位は滝で94人。7位が東海で91人、8位が白百合学園で84人、9位が江戸川学園取手で83人、10位が渋谷教育学園幕張で75人と続いた。近年みられる傾向と変わらず、25年度入試においても、上位校には私立の中高一貫校が並んでいるのが分かる。私立大医学科受験における中高一貫校の強さについて金子さんにお話を伺った。「中高一貫校の教育における強み、特に難関校で重要視される科目が数学です。例として、13位の巣鴨では、中学入試で算数1科目入試を導入しています。これは、算数という科目が単なる計算能力を測るだけでなく、学力の総合的な土台を判断するのに適していると考えられているからです。算数1科目で他の3科目の学力まで推測できると言われるほど、その重要性は高く評価されています。このように、有名中高一貫校が、入学後の生徒の成長を見据えて入試で算数を重視する背景には、長年にわたる経験から培われたノウハウがあるからだと思います。」

最後に私立大医学科受験の近年の傾向について梅原さんに伺った。「ひとつ面接についてお話しをすると、面接の形式は、各大学の工夫がみられ変化してきたと思います。以前の面接は、主に受験生のネガティブな要素をチェックすることが目的でした。しかし現在、私立大医学科では、MMI(Multiple Mini Interview)やSJT(Situational Judgement Test)といった形式を導入する大学が増えています。これらは、さまざまな状況設定のもとで繰り返し質問を行うことによって、受験生の予測していなかったような事態への対応力や思考プロセスを深く探るものです。これにより、単なる知識だけでなく、医師としての適性や倫理観、コミュニケーション能力といった本質的な資質を、多角的に評価することが可能になりました。面接の目的は、単なるネガティブチェックから、各大学のアドミッションポリシーに合致する学生を選抜することへとシフトしていると思います。」

面接形式の多様化は、受験生にとって負担に感じるかもしれない。しかし、これは言い換えれば、知識偏重ではない、個性豊かな学生を各大学が求めている証拠でもある。入試対策として、日々の学習はもちろんのこと、総合的な人間力を高める努力もまた、合格への近道と言えるだろう。

私立31医学科に強い高校2025
医学部医学科受験に詳しい個別指導塾名門会の梅原惠太郎さん(左)と金子智之さん(右)

<表の見方>

◆2025年度入試で、私立大医学部・医学科合格者数の上位校をまとめた。
◆合格実績のある高校へアンケート取材(大学通信とサンデー毎日、AERAによる3社合同調査)し、8月21日までに回答の寄せられたデータを基に作成。一部の高校は集計中のため、掲載している人数よりも実際の合格者数が多いことがある。また、非公表の高校は除いた。掲載したデータは、浪人などの人数を含んでいないことがある。したがって、空欄でも0人とは限らない。
◆卒業生数は全日制の人数を使用。高校名の※印は国立、◎印は私立、無印は公立を表す。

私立31医学科に強い高校2025

私立31医学科に強い高校2025

私立31医学科に強い高校2025

私立31医学科に強い高校2025

私立31医学科に強い高校2025