2020年学部系統別実就職率ランキング(薬学系)

ランキング ライター 林 郁子
2020年学部系統別実就職率ランキング(薬学系)

写真=名城大学

薬剤師試験の合格率が大きな鍵

薬学系の学部は、学部系統別平均実就職率で見ると、85.0%と他の学部系統別平均よりも低い結果となっている。薬学部は主に研究者を養成する4年制と薬剤師を養成する6年制がある。 6年制の学生が目指す薬剤師国家試験は難易度が高く、ここ数年の合格率は70%前後で推移しており、2020年度の合格率は69.58%であった。調剤薬局や医療機関など専門性の高い仕事への就職には、こうした資格取得の可否が大きくかかわっている。実就職率ランキング上位の大学は、軒並み薬剤師国家試験合格率も高く、合格率が90%以上の大学も見受けられる。一方、合格率が低い大学は、就職面でも苦戦する傾向がある。

高い薬剤師国家試験合格率と充実した臨床実務実習を誇る名城大

ランキング1位は100%の千葉大だ。国立大である同大の薬学部は長い歴史と伝統を誇る。同学部薬科学科(4年制)では、より専門的な研究のため大学院へと進む学生も多い。

2位は、99.6%の名城大で、同大の薬剤師国家試験合格率は私立大トップクラスで、2020年度も92.52%と私立大トップ、国公立大を含めたランキングでも全国2位となった。

同大では、チーム医療で活躍する人材育成を目指し、愛知県内の医療施設と提携した臨床実務実習や、「臨床医学教育」に力を入れており、病院をはじめとする保健・医療施設への就職の強みとなっている。

授業科目としてインターンシップを取り入れる明治薬科大

3位は98.7%の慶應義塾大、4位は98.4%の明治薬科大、5位は98.2%の京都薬科大が続く。

4位の明治薬科大は、学生の希望にそった就職を実現するため、進路就職支援委員会が中心となり、入学時からさまざまな支援体制をとっている。

また、キャリア教育の一環としてインターンシップを授業科目(自由選択制)として取り入れている。受け入れ企業は製薬メーカーや医薬品専門商社ほか、化学系企業や食品会社など幅広く、学生の進路希望にあわせた現場で実践的な業務を経験することができる。

1年次から始まる武蔵野大の薬剤師国家試験対策

6位は97.8%の武蔵野大だ。

同大では、薬剤師国家試験へのサポートのため、薬学キャリア教育研究センターと臨床薬学センターを設置。1年次から始まる対策プログラムを実施しており、6年次の国家試験対策講習会や模擬試験まで長期的にサポートする。e-ラーニングなど自宅学習に向けた学習環境も整備。

また、1年次からの早期体験実習を取り入れるなど、実習プログラムも充実している。

ステップアップ式の東京薬科大のキャリアサポート

2020年学部系統別実就職率ランキング(薬学系)写真=東京薬科大学

7位は、97.5%の静岡県立大、8位は96.1%の東京薬科大、9位は96.0%の東北医科薬科大、10位は96.0%の国際医療福祉大というランキング結果となった。

8位の東京薬科大・薬学部では、国家試験対策として、薬学教育推進センターを設置。薬剤師国家試験の7つの試験領域の演習問題の解き方を中心とした授業を行う「薬学アップトゥデイト」と、薬剤師国家試験対策問題を使った演習授業「総合薬学演習」の2つの学習プログラムを実施している。

また、入学時からの6年間を、1〜3年の低年次期、4〜5年の就職準備期、6年の就職活動期の3つに区分し、年次に応じたステップアップ式のキャリアサポートを実施している。

各大学とも、薬剤師国家試験に対応した講座や実習の充実に力を入れるとともに、製薬、病院、薬局を中心に、食品や化粧品、化学メーカーなど、学生の希望に応じた幅広い分野への就職に向けて、インターンシップなどさまざまなサポートを行なっている。

<表の見方>

医科・歯科の単科大等を除く全国735大学に2020年春の就職状況を調査。551大学から得た回答(11月18日現在)を基に、ランキングを作成した。卒業者数が80人未満の小規模な学部、通信教育学部、2部・夜間主コースのみのデータは掲載していない。データを未公表、または未集計の大学・学部は掲載していない。
各系統は、主に学部名称により分類したため、学科構成や教育の内容が似ていても掲載していないものがある。例えば、法学科をもつ大学・学部でも学部名に「法」が付かない場合、法学系に掲載していないことがある。
実就職率(%)は、就職者数÷(卒業者数-大学院進学者数)×100で算出。同率で順位が異なるのは、小数点2桁以下の差による。大学院への進学者数が未集計の場合、実際の数値が掲載している値より高い場合がある。
文部科学省では、就職率を「就職希望者数に占める就職者の割合」で算出することを推奨しているため、各大学が公表している就職率と異なる場合がある。ここでは文部科学省が用いる「就職率」と区別するため、「実就職率」という表記を用いた。
設置の※印は国立、◎印は私立、無印は公立を示す。大学・学部名は現在の名称で掲載している場合がある。所在地は大学本部の所在地で学部の所在地と異なることがある。

2020年学部系統別実就職率ランキング(薬学系)