2020年学部系統別実就職率ランキング(農学系)
写真=中部大学
バイオや食品、環境など幅広い進路が広がる農学系
農学系の平均実就職率は91.5%で、ここ数年90.0%以上の実就職率が続いている。理工系と同じく安定して実就職率が高い学部系だ。
農学系では、農業関連の学びに留まらず、バイオテクノロジーやゲノムサイエンスにかかわる応用生物科学や生命科学分野、食品製造や加工にかかわる分野、地球環境に関わる分野など、近年学びの幅が広がっている。
それにともない就職先の業界も多様化し、各大学が設置する学部・学科での学びの内容によって、就職の傾向にも違いが現れている。
バイオの学びを生かした幅広い進路を可能にする中部大・応用生物学部
ランキング1位は、98.3%の石川県立大・生物資源環境学部だ。同大は石川県農業短期大を前身とする、生物資源環境学部のみの単科大学だ。2位は98.2%の新潟大・農学部、3位は97.9%の静岡大・農学部と、トップ3は国公立大が占める。
4位は97.7%の中部大・応用生物学部で私大トップとなる。同学部はバイオを学びの中心に据えており、医薬関連へも就職先がひらかれている。就職についてはインターンシップに力を入れており、インターンシップから就職につながる例も多い。また、全学的には学内企業説明会の開催や、1年生から相談可能なキャリアカウンセリング窓口、面接など各種対策講座の設置など手厚い対応を行っている。
就業によって実践的な学びを得る東京工科大のコーオプ教育
写真=東京工科大学
5位は97.2%の香川大・農学部、6位は96.8%の秋田県立大・生物資源科学部と再び国公立大が続き、私大は96.5%で7位の東京工科大・応用生物学部と96.3%で8位の名城大・農学部がランクインする。
東京工科大では、工学部を筆頭に、コーオプ教育という学外の企業等で行う実学的教育プログラムを実施している。実習期間が3週間から2ヶ月と長いため、より深く実践的な業務に携わることができる。また、実習の前後に実習に対応した授業を導入しており、単なる就業体験に終わらない学びを得ることができる。応用生物学部では3週間の実習に取り組む。
このほか、同学部では、専攻コースによって食品衛生管理者や食品衛生監視員資格の取得が可能だ。
オリジナルのキャリア形成読本でサポートする龍谷大
写真=龍谷大学
9位は95.7%の岐阜大・応用生物科学部、10位は95.1%の山形大・農学部となり、以降18位までほぼ国立大が占める中、龍谷大・農学部が94.2%で13位に入る。
同学部の食品栄養学科では、管理栄養士の資格取得に向けた対策講座を実施しており、就職の武器となっている。
また、同大では全学部で、保護者向けに就職支援パンフレットを制作し、保護者世代と現代の大学生との就職観とのギャップを埋めるなど、きめ細やかな就職対応を行っている。
学生には、入学時から将来への意識を高めるために、オリジナルのキャリア形成読本「マイキャリアノート」を配布し、大学での学びの段階に合わせた目標意識の形成をサポートしている。
<表の見方>
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医科・歯科の単科大等を除く全国735大学に2020年春の就職状況を調査。551大学から得た回答(11月18日現在)を基に、ランキングを作成した。卒業者数が80人未満の小規模な学部、通信教育学部、2部・夜間主コースのみのデータは掲載していない。データを未公表、または未集計の大学・学部は掲載していない。
各系統は、主に学部名称により分類したため、学科構成や教育の内容が似ていても掲載していないものがある。例えば、法学科をもつ大学・学部でも学部名に「法」が付かない場合、法学系に掲載していないことがある。
実就職率(%)は、就職者数÷(卒業者数-大学院進学者数)×100で算出。同率で順位が異なるのは、小数点2桁以下の差による。大学院への進学者数が未集計の場合、実際の数値が掲載している値より高い場合がある。
文部科学省では、就職率を「就職希望者数に占める就職者の割合」で算出することを推奨しているため、各大学が公表している就職率と異なる場合がある。ここでは文部科学省が用いる「就職率」と区別するため、「実就職率」という表記を用いた。
設置の※印は国立、◎印は私立、無印は公立を示す。大学・学部名は現在の名称で掲載している場合がある。所在地は大学本部の所在地で学部の所在地と異なることがある。