安全志向が推薦入試の人気を後押し
国公立大は定員の2割が推薦・AO入試

入試 大学通信 小松 栄美
安全志向が推薦入試の人気を後押し 国公立大は定員の2割が推薦・AO入試

 ここ数年、私立大の入学定員厳格化により一般入試が難化したことを受け、推薦入試やAO入試を視野に入れた受験計画を立てる生徒が増えている。2018年度の私立大入学者のうち、推薦入試合格者は41.0%。AO入試合格者の11.4%と合わせて、一般入試以外による入学者が過半数を超えた(文部科学省データによる)。志願者は、推薦で2.2%、AOで14.3%増加しており、各高校では多様な入試機会を生かす受験指導が行われている。

 私立大には併願できる公募制推薦を実施している大学もある。私立大推薦入試合格者の入学率は約8割で、他大学の推薦入試や、一般入試と併願する生徒も少なくないようだ。

 一方、国公立大でも推薦入試やAO入試の比重が年々高まっている。19年度入試は全募集人員の20.2%が割り当てられた。

 国立大は、二度の受験チャンスを受験生に与えるため、後期を廃止して、推薦、AO入試を実施する大学が増えている。各大学は積極的な入試改革に取り組んでいる。東京大の推薦入試は、募集を100人としながらも合格者数は7割前後にとどまり、妥協のない選考を行って優秀な学生を入学させている。しかも文科一類などの学類ではなく、学部に入学できるのも特徴だ。

大学の特徴やアドミッションポリシーを反映し、神戸大は「志」特別入試、お茶の水女子大は新フンボルト入試など、名称に工夫を凝らす大学も多い。21年度(現高2生対象)には、島根大も総合型選抜「へるん入試®」を導入予定だ。また、グローバル人材の確保を目的に、国際バカロレア入試などを行う大学も増えている。

 公立大は、地域活性化に貢献する人材確保の手段として推薦・AO入試を位置づけている。国際教養大は、県内出身者が15%と少ない全国型の公立大だ。ただ、20年度に導入したグローバル・ワークショップ入試において、「地域の民俗芸能をどのように存続させていくか」をテーマとして、ナマハゲなど秋田県の民俗芸能存続の課題解決に取り組ませた。

 なお、推薦・AO入試は、不合格となった場合、一般入試に切り替えることも考えておく必要がある。国公立大ではセンター試験の得点が必要な大学も多く、これからが大切になってくる。現行制度最後となる20年度入試は安全志向が強まると見られ、早く合格が得られる推薦・AO入試は、人気になりそうだ。