伸びている学校はここだ! 2009年と2019年の大学合格者数を比較 総合第1位は4年連続で大宮開成。

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東大合格者を増やす首都圏の学校 地方は医学部志向強し

このような状況の中で伸びている学校はどこか。以下に掲載する表は、10年前と今年の大学合格者数を比べ、増加人数が多かった首都圏の学校のランキングだ(ただし表2、表3は全国の高校が対象)。

【表1】東大合格者が増えている高校上位20校

順位 学校名 所在地 男女
共学
09─19増加数 合格者数
19 9
1 開成 東京 男子 48 186 138
2 渋谷教育学園幕張 千葉 共学 44 72 28
聖光学院 神奈川 男子 44 93 49
4   日比谷 東京 共学 31 47 16
5 麻布 東京 男子 23 100 77
6 駒場東邦 東京 男子 22 61 39
7 早稲田 東京 男子 16 30 14
8 浅野 神奈川 男子 14 39 25
9   船橋・県立 千葉 共学 13 15 2
筑波大付駒場 東京 男子 13 119 106
11 市川 千葉 共学 12 16 4
海城 東京 男子 12 46 34
豊島岡女子学園 東京 女子 12 29 17
14 世田谷学園 東京 男子 11 15 4
  湘南 神奈川 共学 11 19 8
16 渋谷教育学園渋谷 東京 共学 10 19 9
17 攻玉社 東京 男子 9 15 6
18 栄東 埼玉 共学 8 19 11
  青山 東京 共学 8 10 2
  神奈川 共学 8 8  

それでは表1の東大合格者が増えている高校から見ていこう。ランキング上位20校中、14校が中高6カ年一貫教育私立校だ。

トップは開成。これは09年の東大合格者が前年より50人減と、同校としてはかなり少ない年だったためで、10年前も今も38年連続東大合格者1位の学校として東大への強さは変わらない。2位は渋谷教育学園幕張と聖光学院が並ぶ。

渋谷教育学園幕張は、1983年に創立され、当初の進学実績はあまり目立たなかった。それが当時としては珍しいシラバス(授業計画)をはじめとする情報開示を積極的に行うなど保護者からの期待を集め、進学校としての評価を上げたことが短期間での実績アップにつながった。

聖光学院は高校募集のない完全中高一貫校だ。一貫教育のメリットを生かし、数学や英語などの主要教科に大きく授業時間を割くなど、基礎力向上に重点を置いた指導で着実に東大合格者が増え、今年は昨年より21人も合格者を増やして過去最高を更新した。

4位は日比谷だ。日比谷はかつては東大合格者トップの高校だったが、1967年に東京で学校群制度が導入されて合格者が激減、その後は長い低迷期が続いた。しかし01年に東京が進学指導重点校に指定するなど、近年の都立校の教育改革により着実に合格者数を伸ばし、復活してきている。

また、神奈川の公立校も以前は低迷が続いていたが、05年の学区の撤廃や07年の学力向上進学重点校の指定、公立の一貫校の設置など大きく改革が進められている。14位の湘南、18位の南はその成果といえる。

【表2】2019年全国東大合格者ランキング

順位 学校名 所在地 合格者数
1 開成 東京 186
2 筑波大付駒場 東京 119
3 麻布 東京 100
4 聖光学院 神奈川 93
5 兵庫 74
6 渋谷教育学園幕張 千葉 72
7 桜蔭 東京 66
8 駒場東邦 東京 61
9 栄光学園 神奈川 54
10 久留米大付設 福岡 50
11   日比谷 東京 47
12 海城 東京 46
13 東京学芸大付 東京 45
14 西大和学園 奈良 42
15   浦和・県立 埼玉 41
16 浅野 神奈川 39
17 東海 愛知 37
18 甲陽学院 兵庫 34
ラ・サール 鹿児島 34
20 筑波大付 東京 32

次に表2を見てほしい。今年の全国の東大合格者ランキングベスト20だ。ここでも圧倒的に私立校が強く、表の20校中15校を占めている。6カ年一貫教育校でみると国立校を含めて18校になる。

なかでもトップの開成をはじめ、2位の筑波大付駒場、3位の麻布、4位の聖光学院、5位の灘など、20校中13校が男子校だ。また女子校でも桜蔭が7位に入っており、男女別学校の大学合格実績の高さがはっきりと分かる。

表2にランクインしている学校はいずれも進学校として名高く、毎年、大学入試で高い合格実績を残している。しかし、すべての上位校が、10年前に比べて東大合格者数が目立って増加しているわけではない。なぜ合格者数が伸びていないのだろうか。

ひとつには、価値観の多様化により、東大にこだわらず、医学部や海外大学への進学を希望する受験生が増えていることがある。なかでも上位校では医学部人気が高く、東大の理Ⅰや理Ⅱよりも国公立大医学部を目指す生徒が多いことも一つの要因だ。

【表3】国公立大 医学部・医学科 現役合格者ランキング(全国)

順位 学校名 所在地 現役
合格者数
卒業生
占有率(%)
1 兵庫 58 26.5
2 東海 愛知 52 12.2
3 開成 東京 42 10.5
4 洛南 京都 41 9
5 久留米大付設 福岡 37 18.3
6   札幌南 北海道 35 10.9
7 愛光 愛媛 34 14.8
ラ・サール 鹿児島 34 15.1
9 甲陽学院 兵庫 33 16
10 白陵 兵庫 32 17
11 桜蔭 東京 29 12.8
12 東大寺学園 奈良 28 13.3
13   岐阜 岐阜 26 7.4
南山 愛知 26 6.4
四天王寺 大阪 26 5.7
昭和薬科大付 沖縄 26 12.6
17 海城 東京 24 7.3
豊島岡女子学園 東京 24 7
大阪星光学院 大阪 24 13.6
20 筑波大付駒場 東京 23 14.1
広島大付 広島 23 11.4

表3は国公立大医学部・医学科現役合格者ランキングだ。表を見ると、上位21校中17校が私立一貫校で、東大ランキングと同様に私立の強さが際立っている。

トップの灘は、卒業生占有率(卒業生数に対する割合)が26.5%と最も高く、医学部志向の強さがうかがえる。2位の東海は日本で毎年、もっとも多くの医師を輩出しているといっていいほど、医学部進学者が多い。3位には開成、4位には洛南、5位に久留米大付設と、医学部に強い常連校が並んでいる。

表3の特徴として、上位20校のうち、首都圏の学校は開成、桜蔭、海城、豊島岡女子学園、筑波大付駒場の5校にとどまり、国公立大医学部が首都圏以外の学校で人気が高いことが分かる。医学部は根強い人気があるにも関わらず、首都圏の学校で合格者数が伸びない理由には様々な要因がある。

まず、首都圏では地元にある医学部より東大の人気が高いことだ。首都圏では国公立大医学部の定員枠が比較的小さい上、東大・理Ⅲや千葉大、東京医科歯科大など、難関大ばかり。その一方で、慶應義塾大をはじめ、日本医科大や順天堂大など、有力な私立大医学部が数多くあり、わざわざ無理して地方の国公立大医学部に進学しなくていいことも大きな理由だ。

さて、学校を取り巻く状況も注意深く見ていけば、合格者ランキングに反映されていることが分かる。ランキングの合格者数だけを見ているのでは、伸びている学校は分かりにくい。

早慶への合格者が増えている高校上位20校