難関国立大に現役で合格できる学校

現役で数人の生徒が合格すれば進学校と称される難関9国立大（旧七帝大、東京工業大、一橋大）に、卒業生のおよそ半数が合格する“超”の付く進学校がある。難関9国立大の現役合格者数が卒業生全体に占める割合を算出し、高い順に並べた「難関9国立大現役合格者占有率ベスト45」を見ると、トップの筑波大付駒場の現役占有率は57.1％で、同級生の1.8人に1人が難関9国立大に合格している。

東大だけで算出した現役占有率は54.0％で、東大の付属校といっても通じるレベルだ。同校は09年の難関9国立大の占有率も50.9％と高く、安定的に難関大現役合格者を輩出している。

ランキング中で2位の聖光学院、3位の灘、4位の開成までが現役占有率4割超。安田教育研究所代表の安田理さんは、聖光学院に注目して、こう話す。

「合格実績の伸長と呼応して、生徒の学力レベルが上がりました。かつては、開成や麻布など東京のトップ校に進学していた神奈川の優秀な生徒が目指すようになり、合格実績が上がったのです。現在の高い現役合格力に期待する生徒が入学するので、今後も難関大現役合格率は伸びると思います」

聖光学院の現役占有率は、09年との比較で24.1Pと大幅な伸びとなっている。現役占有率が4割超の学校の中では、開成も09年比17.0Pと大きく伸びている。他のランキング上位校の2倍近い卒業生がいるにも関わらず現役占有率が42.4％と高いことは、38年連続で東大合格者数ランキングのトップを走り続ける同校の面目躍如と言えよう。

■「難関９国立大」現役合格者占有率ベスト45

上段は2019年（4月19日現在判明分）、下段は2009年のデータ。19年の占有率は全日制のみの卒業生数で算出した。

△は国立、◎は私立、無印は公立

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難関大現役合格のカギは先取り学習

現役合格者占有率ランキングの大きな特徴は、中高一貫校が多いこと。特にベスト10は8校が一貫校だ。その最大の要因は、6年間のゆとりと独自のカリキュラムにより、先取り学習ができること。灘の卒業生は言う。

「灘では、中学の数学を1年間で終え、中2から高校の数学が始まります。中学時代から、難関大の入試問題を教材として扱う授業もあり、自然と難関大入試に対応できる学力が身につくのです」

高い数学の学力レベルが求められる灘では、文系の生徒が極端に少ない。そのため、19年の東大入試では、文Ⅱの合格者が0人で、文科類全体でも13人。対照的に理Ⅲの合格者は21人で、5人に1人は灘出身者だ。京大医学部の合格者も多く26人、現役だけでも19人が合格している。

灘に限らず、現役占有率が高い学校は、先取り学習とハイレベルな授業についてこられる生徒が揃っていることが要因となっている。優秀な生徒の集団が形成されている学校では、大学入試で紛れが少なく、学内の席次で難関大合格の可能性が分かるという。

「灘では成績が20番以内なら東大.理Ⅲなど、ほぼ席次通りに東大や京大に合格します。そのため、東大や京大受験が当たり前という雰囲気が出来ています」（前出の灘の卒業生）

先輩の高い合格実績が心理的な余裕をもたらし、難関大入試に向けた厳しい勉強に耐え、実際の入試に自信を持って臨めるのだ。

地元難関大の現役合格率の高さで公立校がランクイン

長い歴史の中で積み上げてきた、高い難関大の合格実績が現役合格の後押しをするのは公立校も同じ。公立最上位となる8位の札幌南は、これまで培ってきた進路指導実績をベースとして、独自の校内模試を行っている。その成績を用いて確度の高い合格の可能性を提示できるため、強気で難関大入試に臨める。

難関大の後期日程が縮小する中、札幌南は地元に後期日程の定員が多い北海道大があるため、前期でより難関の東大や京大にチャレンジしやすい環境にあることも、高い現役占有率の要因となっている。同様の傾向は、13位の札幌北にも当てはまる。西では、九州大の後期日程の定員が多いことが後押しして、修猷館が16位に入っている。

3年制の公立校は、中高一貫校に比べると東大.京大の合格者に占める現役生の割合が低く、地元に近い難関国立大の現役合格実績により学校全体の現役占有率を維持しているケースが多い。岡崎は東大と京大合計の合格者48人の内、現役生は54.2％。一方、名古屋大の現役生は75.0％で、結果として全体の現役占有率が28.6％となり15位に入っている。

31位の大分上野丘や32位の一宮なども同様の傾向が見られる。一方、東大と京大の現役生の割合が高い公立高校もある。両校の合格者が多い学校の内、前出の札幌南が73.3％で10位の北野が72.0％となっている。

現役占有率が下がった学校に注目すると、09年に4割を超えていた6位の甲陽学院と7位の東大寺学園を含め、20位の大阪教育大付池田、25位の白陵、28位の広島大付福山など、かつて現役合格率が高かった西日本の中高一貫校に多い。これは、08年のリーマン・ショックを契機とした就職の厳しさから、医学部志向が強まったことに起因する。国公立大医学部を目指す生徒が増えたため、占有率が下がったのだ。

ランキング中の学校は、東大.京大といった最難関に強い学校や地元の難関大に強い学校、国公立大医学部に強い学校など性格は様々。その共通項は、生徒や保護者の望みを高い次元で叶える学校ということだ。