2019年入試で東大と京大の合格者が増えた学校

（左）東京大学　（右）京都大学＝写真

2019年の東大入試は異変が起きた。合格者の平均点を見ると、文系最難関の文Ⅰが378.7604点で、文Ⅱの379.0783点を下回ったのだ。文Ⅰは第１段階選抜が行われなかった年があるなど、人気が下がった時期もあったが、近年は志願者が戻ってきている。それにもかかわらず平均点の逆転が起きたのは、トップ層が減っていることを示す。

文Ⅰの志願者減は、官僚の不祥事や好調な一般企業の就職状況に起因する。そうした影響を払拭できていないようだ。法学部と経済学部の合格者の学力レベル逆転は、京大でも起きているという。

看板学部の合格者のレベルダウンは、東大にとって頭痛の種だろう。さらに東大は、関東の高校出身者の割合が59.2％と高止まりし、学生の多様化が進まないという悩みも抱える。「東大合格者が増えた学校」を見ると、渋谷教育学園幕張、聖光学院、県立浦和、駒場東邦、開成など、合格者の増え幅が大きいのは、大半が関東の学校なのだ。

男女共学化で東大合格者が伸びた久留米大付設

東大合格者の増え幅が大きい学校のもう一つの特徴は、先取り学習で余裕のある受験対策ができる中高一貫校が占めていること。増加数が27人と最も多かった久留米大付設は、中学生から女子が入って共学化された一期生が入試に臨んだ。同校は、コツコツ頑張る女子の入学により学校全体の雰囲気が変わり東大の合格者が増えたという。文系の女子に東大志望者が多く、英語をしっかりと勉強した力のある生徒が合格者数を押し上げたようだ。

ただ、19年の東大文科類の入試は英語が易化し、英語が得意な女子のアドバンテージを生かしにくかった。それでも合格できた一因として、東大入試の特徴が挙げられる。予備校関係者は「高いレベルの問題が解ければ合格できる京大に対し、東大は総合力が求められる」と話す。真面目に地道に勉強することで高い総合力を身につけた女子に向いている入試と言えるのだ。

学生の多様化という点から、東大は女子学生の少なさも課題として挙げる。「女子の合格率は毎年変わらず、女子の合格者が増えないのは、志願者自体が少ないから」というのが東大の見解。志願者が増えれば連動して合格者が増えるのは、久留米大付設の状況を見ても明らか。女子にとっての東大の魅力化が急がれる、ということだ。

■東大合格者が増えた学校

増加数は2018年との比較
設置欄の◎は私立、無印は公立を示す

合格校の所在地の多様化が進む京大

京大の合格状況を見ると、東大とは対照的に地元である2府4県（京都、大阪、滋賀、兵庫、奈良、和歌山）の高校出身者の占有率が5割を切っている。「京大合格者が増えた学校」の表中の学校は、東大より地域性に富み、県立前橋や小石川中教など、東大のお膝元である関東の学校も入っている。

県立前橋では、学科を決めて入学できることが京大合格者の増加要因と見ている。教養課程を経て所属学部が決まる東大に対して、入学時に専門が決まる京大は、学びたいことが明確な生徒にとって魅力的だというのだ。京都の街に対する憧れも大きく、京都で建築を学びたい一心で受験し合格した生徒もいたという。

大学の魅力が進学のモチベーションとなって受験生を引き寄せた結果、京大は近畿圏以外の高校からの合格者が増えている。ちなみに、県立前橋の京大合格者は13人中、10人が現役生。3年間で高い現役合格率を達成できたのは、京大進学のモチベーションの高さと共に、チームで難関大に向かう雰囲気が醸成されていたからだという。

京大の合格者が増えた学校のもう一つの特徴は、1位の開明や3位の東大寺学園などの中高一貫と同程度の数の公立校が入っていること。中高一貫校が大半を占める東大とは対照的に、浜松北や旭丘、四日市など3年制の公立校が入っている。総合力の育成は一貫校に譲っても、突出した学力を3年間で育成できている公立校が結果を出しているということだ。

東大も含めて、最難関の大学に合格するための厳しい勉強を続けていくには、合格に対する高いモチベーションが不可欠。東大と京大の合格実績が伸びた学校の進学指導教諭は、合格者増の要因について「早い時期から志望が明確で、最後まで志望を変えずに頑張った生徒が多かったため」と話した。

まずは合格したいという思い。そして、そのために頑張る生徒の学力をいかに伸ばすか。この二つの要因を高い次元で結実させた学校が、東大と京大の合格者数を増やしている。

■京大合格者が増えた学校