センター方式と女子大の人気が象徴する受験生の安全志向

入試 大学通信 井沢 秀
センター方式と女子大の人気が象徴する受験生の安全志向

2019年入試の特徴の一つに、推薦やAO入試を活用する受験生の増加が挙げられる。早い時期に始まる入試制度を活用するのは、私立大の一般方式が狭き門になっているから。大規模私立大では、16年から段階的に入学者の定員超過率が制限されてきた。その結果、合格者が減少し、倍率が大幅にアップしているのだ。

難易度が近い大学群の倍率(志願者数÷合格者数)を定員管理の厳格化が始まる前の15年と18年で比較してみよう。この間、早慶上智(早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学)は、合格者が5701人減少したにもかかわらず、志願者が1万3105人増え、倍率(志願者数÷合格者数)は5.2倍から6.7倍に跳ね上がっている。

同様に、MARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)は、合格者が1万2647人減に対し志願者は7万63人増で、倍率は4.7倍から6.5倍。関関同立(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)は、合格者が1万3485人減に対し志願者は2万9900人増で、倍率は3.2倍から4.3倍に上がっている。

次のクラスの大学群である日東駒専(日本大学、東洋大学、駒澤大学、専修大学)と産近甲龍(京都産業大学、近畿大学、甲南大学、龍谷大学)も倍率が大幅にアップしており、前者が3.3倍から4.7倍、後者が4.4倍から6.1倍になっている。こうした厳しい状況を先輩の入試結果から感じているので、安全志向になるのも致し方のないことだ。

19年度入試における受験生の安全志向の強さは、一般方式の出願状況を見るとよく分かる。受験機会を増やして合格の可能性を高めるため、センター方式の志願者が増えているのだ。

今年のセンター試験は、国語と英語のリスニングの平均点が上がり、私大でスタンダードな3教科型の持ち点が高い受験生が増えている。そのため、センター試験の自己採点を終えてから出願できる、いわゆる事後出願の大学に出願しやすい環境も後押しをした。

一般方式とセンター方式の合計で志願者が減少している大学でも、早稲田大学や青山学院大学のように、センター方式のみで集計すると、志願者が増えている大学もある。

定員厳格化のあおりで女子大の志願者が増加、難化含みに

受験生の安全志向が垣間見られた出願状況の特徴として、女子大の好調な出願状況も挙げられる。定員管理の厳格化により、大規模総合大学が難化したため、比較的倍率が低い大学が多い、女子大に出願する女子受験生が増えているのだ。

すべての女子大を集計した倍率は、15年が2.2倍で18年は2.7倍。総合大学と同様に合格者は減っているが、志願者の増え幅が小さいため、大幅な倍率アップに結びついていないのだ。主要100私立大の志願者数から算出した2月26日現在の女子大の志願者は前年比106.4%で、私立大全体の104.8%を上回っている。

個別の大学の出願動向を見ると、東京の女子大御三家では、東京女子大学の志願者が減少したが、18年入試で志願者が減少した反動もあり、日本女子大学の志願者は大幅増。津田塾大学も前年を上回った。関西の御三家である京都女子大学、同志社女子大学、神戸女学院大学も堅調だ。

御三家以外にも大妻女子大学や共立女子大学、甲南女子大学など出願状況が堅調な女子大は数多くあり、全体的に難化含みになっている。

19年入試は、センター方式と女子大の志願者増に受験生の安全志向が色濃く表れる入試となった。