神奈川大が報道関係者向けに会見を開き、4月に就任した戸田龍介学長が抱負を語った。
重点的に取り組む3つの改革
神奈川大は2028年に創立100周年を迎える。任期中に100周年となるため、周年記念事業は戸田学長の大きな仕事になる。3年後とその先を見据えて戸田学長が取り組みたいこととして挙げたのが「入試」「教育」「就職・キャリア」の3つの改革だ。
「入試」については、早速今年から大きな改革を行う。近年受験生の需要が高まっている年内入試を見直し、総合型選抜の「総合評価型」と「適性検査型」を導入する。中でも注目は、主に2科目の適性検査(学力試験)で合否が決まる「適性検査型」だ。試験問題の難易度は「基本的問題」とされ、高校2年生までの履修範囲から出題される。高校の評定平均値も得点化するが、適性検査の比重の方が大きい。第一志望の受験生だけでなく、年明けの一般選抜で国公立大学や難関私立大学を目指している受験生の併願先としても有力な選択肢になりそうだ。また新たに、英検などの英語外部試験の利用や、2併願目の無料制度も導入する。戸田学長は「本学は長く入試制度を大きく変えてこなかった。また複雑な入試制度は受験生目線ではなかったという反省もある。今回の入試改革では、受験生のニーズを分析し、受験生目線で受けやすい制度を構築した」と話す。
「教育」について戸田学長が挙げたのが、学修成果の可視化だ。学部学科ごとに身につけてほしい項目を明示し、それを学生一人ひとりがどの程度修得できたのかわかるようにする。自分が所属する学部学科の平均値もグラフで見られるため、自分の立ち位置も把握できる。戸田学長は「学生に気づきを与えたい」と話す。この施策は今年度中に実現する予定で、学生はアプリから自分の学修成果が確認できるようになる。
「就職・キャリア」については、戸田学長が「最も力を入れたい」と意気込む。100周年に向けての大きな改革に位置づけたい考えだ。学生の保護者から寄せられる要望の8割~9割がこの分野のことだという。具体的な施策は今後打ち出される予定だが、就職率は重視していきたいとした。「学生が知っているのは普段商品を目にする企業やテレビCMでおなじみの企業。BtoBであまり知られていない企業でも、学生に勧めたい企業は多い。そういう企業にも目を向けてほしい。研究室と企業をつないだりするなど、これまで以上に強力に支援していきたい」と話す。
強みは「総合大学」「横浜中心部のキャンパス」
神奈川大の強みとして戸田学長が挙げたのが、11学部を擁する総合大学であること、横浜キャンパスとみなとみらいキャンパスがいずれも横浜の中心部にあることの2点。
「本学は文系のイメージが強いかもしれないが、理工系学部は5つあって研究分野が多彩。大きな強みだ。また横浜の中心部にあることで企業との連携や、地域との連携がしやすく、学生のプレ社会経験になっている。この強みを生かし、横浜を街ごとキャンパスにして、学生を最も成長させる大学にしたい」と話す。
戸田学長は1992年に経済学部の専任講師となって以来、30年以上教員として中から大学を見てきた。学長になる前には学部長、副学長を歴任している。神奈川大の教員一筋の戸田学長がこれから4年間、どのように舵取りをしていくのだろうか。
「これまで神奈川大学は『MARCH』や『日東駒専』などの大学群に括られることがなく、『この大学には絶対に負けられない』という強力なターゲットがなかった。それが逆に改革のスピードを遅くしていたかもしれない。これからは大学のポテンシャルをもっと強く打ち出して、明確な理由を持って選ばれる大学にしていきたい。そのための改革に取り組んでいく」と意気込みを語った。