大学生の過半数が奨学金を利用
25年度から多子世帯の学費支援を拡大へ

入試 小松 栄美
大学生の過半数が奨学金を利用 25年度から多子世帯の学費支援を拡大へ

24年度の大学入学者の初年度学費(平均額)は、国立大の標準額で約82万円、公立大(地域内)は約76万円。私立大は学部系統によって異なり、文系は法・政治系統が最も安く約128万円。理系は理工系統が約167万円。就学費用を家計収入だけで賄える家庭は少なく、大半の学生は奨学金やアルバイトで補っている。

国の奨学金事業を運営する日本学生支援機構(JASSO)の22年度の調査によると、大学生の奨学金受給率は55%。前回調査の20年度より5ポイント以上アップした。大学へ進学する際に奨学金は欠かせないものになっている。

最も利用者が多い奨学金は、JASSOが運営する制度だ。給付型と貸与型の2種類がある。

給付型は低所得世帯対象の「高等教育の修学支援新制度」で、入学金・授業料の減免と奨学金給付がセットになったもの。支援額は世帯収入で決まる。24年度に多子世帯、理工農系への支援が追加され、25年度からは、3人以上の多子世帯の入学金・授業料が世帯所得の制限なく免除(上限あり)されることが決まった。

貸与型は無利子と有利子の2種類があり、学力基準と家計基準をともに満たすことが条件だ。毎月の貸与金額が選択できるが、卒業後20年以内に全額返還しなければならない。

各大学が独自に設ける奨学金制度もある。近年は給付型の制度拡充に力を入れる大学が多い。中でも、入学前に受給の可否がわかる予約型奨学金や、入学試験成績優秀者の特待制度は、進学資金に不安がある受験生のニーズを満たす制度といえる。

入学前予約型奨学金は、難関私立大や一部国立大が実施している。10~11月にかけて募集する大学が多く、一般選抜前まで複数回募集するところもある。世帯所得や居住地、成績などにより入試前に審査を行い、採用候補者を決定する。採用候補者が指定の入試を受験して合格し、入学手続きを済ませたら正式に採用される。

特待生選抜や入試成績優秀者対象の減免制度などの入学試験と連動した制度は、合格発表時に採用の可否が分かる。審査を経て、4年間継続して受給できるものも多い。

大学独自の奨学金は、在学生対象の制度もある。家計急変者のための給付金制度をはじめ、経済的な理由で学業をあきらめることがないように、支援体制を整えている。このほか企業や公益法人などによる奨学金情報はJASSOのホームページなどでも調べることができる。

25年度からの変更では、東京大が授業料値上げを発表したが、それに伴い、授業料免除の対象となる世帯年収の引き上げや個別事情への対応などを示している。

私立大では、地方入学者を対象に、日本女子大が総合型選抜による入学者のための制度を新設(募集終了)、芝浦工業大は、一般選抜に国立大並みの学費で学べる制度を整備する。