奨学金が大学入学後の負担を軽減
低所得世帯向けの修学支援新制度がスタート

入試 小松 栄美
奨学金が大学入学後の負担を軽減 低所得世帯向けの修学支援新制度がスタート

大学の授業料平均額(年額)は、国立大(標準額)が約53.6万円、公立大約53.9万円、私立大は約90.4万円(18年度、文部科学省公表データ)。親世代が大学に入学した30年前と比べると国公立大は1.6倍、私立大は1.5倍に上昇した。授業料のほか、入学金や施設費、実験実習費、教科書代がかかり、地元を離れる場合は住居費や生活費も必要だ。

今年から始まった国の修学支援新制度は、低所得世帯の学生の授業料を減免し、学生生活費として奨学金を給付するもので、進学予定者と学生あわせて約51万人の利用を見込む。

家庭の所得が新制度の基準以上であっても、大学の学費を4年間払い続けることに不安を感じる生徒は少なくないだろう。日本学生支援機構(JASSO)の調査によると、大学生の48%が奨学金を利用している。利用者が最も多いのはJASSOが運営する国の奨学金制度で、家庭の年収により無利子または有利子の2種類がある。どちらも返還が必要な「貸与型」だ。21年は無利子の奨学金枠が拡がり、条件を満たす希望者全員が利用できるよう整備が進んでいる。

一方、各大学にも独自の奨学金があり、近年は返還不要の「給付型」制度に力が入れられている。

秋から冬にかけては、多数の大学が受験生対象の入学前予約型奨学金を募集している。第一志望で、世帯所得、高校の成績、居住地(都市部以外)などの条件を満たせば応募でき、採用候補者の選考は入試の前に行われる。入試に合格し、入学したら奨学金を受け取ることができる制度だ。秋頃までに1回目、一般選抜出願時期に2回目の募集を行う大学もある。20年度は甲南大や成蹊大が導入し、実施大学が年々増加している。また、一般選抜受験者を対象とする大学が多い中、上智大には公募推薦志願者対象の制度もある。

このほか、入試の成績上位者を対象とする特待生制度を設けている大学は多い。家庭の所得に関係なく入試得点で決まり、合格と同時に通知される。入学金や授業料の減免など、給付額も高い。中には採用予定人数を多数設定している大学もあり、東京経済大は200人、昭和大は300人以上が授業料免除の対象だ。

国の制度も大学独自の奨学金も、生徒の手元にお金が届くのは入学後のところがほとんど。国立大では納入猶予制度を設ける大学もあるが、私立大はまだ少ない。受給できることが事前に決まっていても、入学手続金は用意しておく必要がある。