コロナ禍で大きく変わる2021年入試はどうなるか
複数回実施となった共通テスト 受検しておくことが大切に
来年の大学入学共通テスト(以下、共通テスト)は、従来から決まっていた1月16日(土)、17日(日)の本試験である共通テスト①の他に、3カ月近く学校に通えず、学業が遅れた受験生のために、1月30日(土)、31日(日)にも共通テスト②が47都道府県の会場で実施される。学業が遅れた受験生で学校長が認めると②を受験できる。浪人生は②を選択できない。②は①の追試も兼ねている。さらに、②の追試として2月13日(土)、14日(日)に特例追試験が全国2会場で実施される。これまで発表されたものをまとめると表のようになる。
急に増えた共通テストだが、報道によると、使用する問題は①が変わらず最初から用意された本試験の問題で、②は当初、追試として用意された問題だ。特例追試験ではすでに行われた大学入試センター試験で用意されていた緊急対応用問題が出題されるため、共通テストとは別の試験になる。
例年、追試験の問題は本試験より難しいとされるが、来年はどうなるか。①と②の試験間得点調整は行わないことは発表されている。①の試験結果を見て、共通テストの対策を取って、②を受検する方が有利との考えもある。ただ、②を受けても、すでに国公立大は出願受け付け中で、しかも大学入試センターからの②の試験の平均点などの公表日は、国公立大の出願締切日に当たる。志望校変更を考える時間があまりない。国公立大対策の時間も減り、その上、翌日からは私立大の入試が始まるハードスケジュールだ。国立大学協会は出願期間の延長を提言している。さらに1月30日、31日には近畿大や龍谷大など、一部の私立大で一般選抜試験を実施予定だ。これらの大学が入試日程を変更するのかにも注意が必要だ。
共通テストの大学への成績提供 遅くなって入試に影響必至
共通テストの大学入試センターから大学への成績提供が、2月8日以降と例年より1週間ほど遅くなる。国公立大の第一段階選抜に影響が出そうだ。①と②の平均点に大きな格差が出た場合、どちらかの受験生は第一段階選抜で不利になる可能性もある。何らかの配慮が必要かもしれない。また、私立大の共通テスト利用入試にしても、同じ格差が考えられる上に、提供が例年より遅れることで合格発表が後ろ倒しになる可能性が出てきた。すでに入試日程を発表している大学では、今後、合格発表日を遅くする可能性もあり注意が必要だ。
共通テストの出題範囲は今まで通りだが、文科省は大学独自試験での出題範囲への配慮を求めている。すでに高校入試では出題範囲の縮小が続々と発表されている。文科省が例に挙げているのは、地理歴史、公民、理科の2科目指定を1科目にする、数学Ⅲ、物理、化学、生物、地学、世界史B、日本史B、地理B、倫理、政治・経済などで選択問題の出題、「発展的な学習内容」から出題しない、出題する場合は設問中に補足事項等を記載する等だ。ただ、国立大は出題範囲の配慮はしないことになりそうだ。
共通テストは目玉だった民間英語試験の成績利用の延期、記述式の出題が見送られ、国公立大離れに歯止めがかかった。ただ、第二日程の新たな設定など、私立大をも巻き込んで、今後、入試日程の変更などが起きそうで混乱を生んでいる。
1月、2月に新型コロナウイルスの感染拡大が起きないとも限らず、2週間おきに共通テストが実施するようにした面もあろう。それは一般選抜も同じ状況で、多くの日程で実施する私立大はともかく、限られた日程でしか実施しない国公立大では、追試の日程を用意せざるを得ない面もある。今年の入試でも、大学職員が新型コロナウイルス感染症に罹患し、後期日程試験実施を中止した国公立大もあった。センター試験の成績で合否判定したわけだが、来年もそのような事態が起こることも考えられる。共通テストは受検しておくべきだろう。
有名大人気の高まりに加えて学校推薦型、総合型選抜人気か
一般選抜を目指す受験生にとって、会場での模擬試験が実施されていない。自分の偏差値や合格可能性すらわからない状況にある。今後、模試が実施されるとしても、志望校選びの情報不足が深刻だ。大手大学では夏のオープンキャンパスは中止で、多くの大学が集まる合同相談会も中止だ。大学を詳しく知る機会が失われているわけで、こうなってくると、元々受験生が知っている有名大人気が高まりそうだ。受験生の情報不足は明らかで、志望校選びも一苦労となりそうだ。高校の進路指導教諭の的確なアドバイスが求められよう。
また、来年入試は共通テストの実施で、安全志向が高まると予測されている。新傾向の問題に加えて、過去問がないのは不安材料だ。新傾向の問題は今年のセンター試験にも出題され、英数国の主要3教科の平均点が揃って下がった。共通テスト不安は広がる。
そうなると、今年の入試のように、学校推薦型選抜、総合型選抜が人気になりそうだ。ただ、こちらもコロナ禍を受けて、総合型選抜が9月からの出願開始が9月15日からと後ろ倒しされた。さらに、各種スポーツ・文化関係の行事、大会、資格・検定試験等中止、延期または規模縮小等で、出願資格に影響を及ぼしている。行事、大会への参加予定、検定試験の受検予定などを調査書に記入できるが、大学がそれをどう判断するかは不透明だ。
また、文科省は今年からこの2方式の入試に学力を求めている。このコロナ禍で入試もままならない。文科省は例として、ICTを活用したオンラインによる個別面接やプレゼンテーション、大学の授業へのオンライン参加とレポートの作成、実技動画の提出や、小論文等や入学後の学修計画書、大学入学希望理由書等の提出などを挙げている。コロナ禍によって剣道や柔道などのコンタクトスポーツ、歌唱を伴う実技試験は実施されず、実技動画の活用を求めている。すでに今年の総合型選抜の面接をオンラインで行うと発表した大学も出てきている。日程だけでなく、入試実施方法の変更など、今後の大学の対応、変更に注意が必要だ。