大学入試改革とコロナ禍のダブルショックで、2021年入試はどうなるか
来年の大学入学共通テストは、目玉の民間英語試験の成績利用が延期、記述式問題出題の見送りで、大きくは今年の大学入試センター試験と変わらなくなった。表にあるように、それでも変わる部分はあるが、胸をなでおろしている受験生も多いのではないか。国公立大離れにも一定の歯止めがかかると見られる。ただ、平均点が当初の6割目途から5割に下がることで、問題が難しくなり傾向が変わるということになる。今年のセンター試験でも新傾向の問題の出題で、英語、数学、国語の主要3教科の平均点は下がり、5教科7科目の平均点も文系、理系ともに下がった。
もともと、この大学入試改革によって、2021年入試は安全志向が高まるとされてきた。改革の目玉だった二つは実施されないが、それでも細部の変更はある。その上、大学入学共通テストの過去問がない。やはり不安は大きく、昨年と同様、今年も総合型選抜、学校推薦型選抜の志望者が増えると見られる。
大学入試改革より大きな新型コロナウィルスの感染拡大
さらに、それ以上に大きな影響を与えそうなのが、新型コロナウイルスの感染拡大だ。それを防ぐために全国に緊急事態宣言が発令された。入構禁止の措置を取っている大学は多く、授業もオンラインで行うところが増えている。今までなら3月に実施されていた大学のオープンキャンパスは中止になり、夏休みの開催も危ぶまれている。受験生は大学の限られた情報しか手に入らない。学力だけでなく志望校決定の情報不足で、来年入試に向けての不安は募っている。
萩生田文科大臣が学校推薦型選抜、総合型選抜の「募集時期を遅らせる必要がある」との発言は至極もっともだろう。出願の対象になるさまざまな活動が、3月からできなくなっていることを考慮しての発言だ。今年からはこの2選抜にも、学力を求めることになっているが、肝心の活動歴が大学の定める基準を満たせないのでは出願すらできない。今年のスケジュールでは、総合型選抜は9月から、学校推薦型選抜は11月から出願開始だ。コロナ禍が続けば続くほど、この2選抜への出願が厳しくなっていきそうだ。
これだけではない。子どもを自宅外から大学に通わせている保護者からの大学への問い合わせが増えているという。保護者の心配は大きい。一方、受験生を抱える家庭では、自宅から地元の大学へ通わせたい、という考えになると見られる。コロナ禍のような感染は、今年だけの話ではないからだ。
景気後退になると学部志望動向は“理高文低”に変わる?
一般選抜にも大きな影響がありそうだ。特に大きいのは模擬試験がいつ実施されるのかだ。自分の偏差値が分からず、志望校の合格可能性も分からない状況では、志望校を決めるのも一苦労だ。また、同様に英語などの検定試験も実施されるのかもある。これは高校3年生だけでなく、高校1年生から影響することだ。
最も大きな影響を与えそうなのが、学部志望動向だ。今の受験生は、将来の就職を考えながら大学・学部を選ぶことが当たり前になっている。新型コロナウィルスの感染拡大により、世界的に経済活動に陰りが見られる中、就活戦線の動向が、志望校選びにも多大な影響を与える。ここ数年、売り手市場になり、好調だった企業の採用は間違いなく減少に転じるだろう。なかでも事務系の採用が減る。そうなると、過去のバブル経済の崩壊、リーマン・ショック後と同様に、就職率が高い、理系人気が高まることになる。今年と同じように理系学部の人気が高く、文系学部の人気が下がる“理高文低”になりそうだ。
理系の中でも、来年は情報系の人気がさらに高まるのではないだろうか。AI、IoT,ビッグデータのビジネスへの活用など、情報系はこのところ人気になってきた。それに加えて、コロナ禍によって、企業においては在宅勤務が推奨され、自宅で仕事ができる、会議ができるなどの環境整備が急務となった。大学でも今年の前期はオンライン授業が当たり前になっている。大学もオンライン授業ができるような環境作りを急いだ。そうなると、情報系に進学した学生の就職はますます良くなると見られ人気は高まりそうだ。
さらに、通例であれば、就職に強い、資格取得ができる医療系の人気も高まる。人材が不足しがちで、国家資格と結びついて人気が高い。しかし、新型コロナウィルスの猛威により、医療従事者への院内感染も多数報告される中、医療系への志望に二の足を踏む受験生が出てくることも予想され、この系統の動向はまだまだ不確実要素も多い。
新型コロナウイルスの感染拡大がいつ終息するかは、現段階では全く見通しが立っていない。総合型選抜、学校推薦型選抜の実施時期も繰り下げられることが確実な情勢だ。そうなると、一般選抜枠の拡大も考えられそうだ。それだけに、今年の受験生は一般入試への対策を中心に据えながら、受験対策を考えていく必要があるのではないだろうか。