少人数制を基本として学生一人ひとりを大切にする教育は、女子大で学ぶメリットだ。職業教育に重点を置いた専門職の養成と、広い視野と深い教養を身につけるリベラルアーツ教育は女子大の特徴となっている。出産などのライフイベントでキャリアが中断しても、国家資格などを持つ専門職者は再就職の道を開きやすく、リベラルアーツで培われた知性は、人生を豊かに生きる指針となる。
男女雇用機会均等法が成立して今年で40年。立法当時は女子の4年制大学進学率が14%と低く、就職も厳しかった。大学進学や新卒者の就職率の男女差が縮小した現在、「女性が学べる高等教育」を目的としてきた女子大の役割は、次の段階に進みつつある。SDGs(持続可能な開発目標)のひとつにも掲げられている「ジェンダー平等」だ。
学生時代に「ジェンダー平等」の環境を体験するには、女子大がお勧めだ。共学大では、性別による役割分担(ジェンダーロール)が無意識のうちに生じるものだが、女子大では、異性からの評価を気にせず学べる。同性のみの安心できる環境に身を置き、女子が率先してリーダーシップをとって課題を見つけ、議論し、主張し、行動して、物事を進めていくことになる。何かをする際に性別は関係ないことを身をもって知る機会だ。また、教職員の女性比率が高いためジェンダーバランスもよく、身近なロールモデルに接しながら将来を考えることができる。
先月、「世界経済フォーラム」が公表した「ジェンダーギャップ指数」によると、日本は148カ国中118位。各国の統計をもとに男女格差の現状を経済・教育・健康・政治の4分野で評価したもので、G7(主要7カ国)では他の6カ国と大きく差を広げての最下位だ。4分野の中では政治と経済、特に政治分野のスコアが低く、女性リーダーが育ちにくい特性が浮かび上がった。日本では、男性中心に社会が動いている一面があることは否めない。その背景には、社会に出る前に女性がリーダーを経験できる機会が少ないこともあげられるだろう。女子大の役割はここにもありそうだ。
さて、26年度からの女子大の主な変更点をあげておこう。
学部の新設(改組を含む)では、郡山女子大・生活科、和洋女子大・AIライフデザイン、跡見学園女子大・情報科学芸術、大妻女子大・人間共生、共立女子大・児童、実践女子大・食科、昭和女子大・総合情報、東京家政大・共創デザイン/社会デザイン学環/文化情報学環、鎌倉女子大・教育メディアクリエーション学環、東洋英和女学院大・人間社会、金城学院大・経営/デザイン工などが開設予定(設置認可申請中、構想中を含む)。
女子栄養大、京都光華女子大、岡崎女子大は男女共学に移行する。
近年、女子大では理工系や社会科学系学部が続々誕生している。共学大でも男性比率が高い分野を、女子大で学ぶとどうなるのか。女性だけの環境だからこそ、より一層成長できるのではないだろうか。