薬剤師の地域偏在問題に取り組む2大学

教育 大学通信 秋山 亘
薬剤師の地域偏在問題に取り組む2大学

写真=高崎健康福祉大学(左)と崇城大学(右)

過疎地域の医師不足(地域偏在性)は社会問題として何度もメディアに取り上げられている。地域偏在性解消のための制度を導入している大学もよく見かけるようになった。最も有名なのは大学設立の目的が地域医療貢献である自治医科大学だろう。しかし、地域偏在性の問題は、医師だけに限らない。薬剤師についても同じ問題が発生していることはあまり知られていないようだ。今回は今年度より入試改革でこの問題に取り組む2大学を紹介する。

ひとつは群馬県にある高崎健康福祉大学。地域偏在性の要因は薬学部の所在地が偏っているという観点から、地元群馬県の他、近隣で私立大学薬学部が存在しない山形・茨城・山梨・長野の4県出身者を対象に特待生選抜入試を実施する。卒業後は薬剤師として出身県で勤務することが条件だ。選抜には大学入試共通テストを利用。対象者には6年間の授業料半額となる330万円と入学金25万円を免除する。

高崎健康福祉大学は薬学部の他に農・人間発達・健康福祉・保健医療学部を有する文字通り健康と福祉を中心に学ぶ大学だ。各種資格試験や実就職率の数値が高いことで有名で、現在2026年4月に人間発達学部心理学科の開設を構想中である。


もうひとつは熊本県の崇城大学。長崎・鹿児島・沖縄県の離島にある小・中・高校に3年以上在学して、離島の地域医療に強い関心を持ち、卒業後は出身の離島で薬剤師として就業する意思がある生徒が対象だ。一般公募制推薦選抜に「離島枠」を新設。入学検定料3万円が免除、入学金30万円も半額が免除となるほか、崇城大学の特待生制度「ミライク50」選抜対象にもなる。

崇城大学は宇宙航空・航空整備を含む工学部から芸術・情報・生物生命・薬学部を有し、多彩な学びが学内で実践されているほか、全学部対応の英語学習施設「SILC」が評判の大学である。


大学が自大学の都合ではなく、社会状況に応じて新たな入試制度を設定する時代になってきた。社会と大学が不可分になってきたことのあらわれだろう。