工学院大学と島根県立平田高等学校が地域協働学習プログラムを実施–小伊津町の魅力を発信する海辺カフェを考える
工学院大学(学長:伊藤 慎一郎、所在地:東京都新宿区/八王子市) 建築学部建築デザイン学科 冨永研究室は、島根県立平田高等学校(校長:小林 努、所在地:島根県出雲市)の地域協働学習プログラムとして、同県出雲市小伊津町の魅力を発信する海辺カフェを提案するワークショップを実施した。7月31日~8月1日にかけて、冨永研究室の大学院生13名、平田高等学校の1・2年生24名が地域住民と共に、小伊津町の魅力を再発見し、地域の未来を共に考えた。
ワークショップのテーマは、「小伊津町の魅力を発信する海辺カフェを考えよう!」。漁港に実在する漁師小屋を活用して地域の魅力を発信する海辺カフェの企画を考えるというもの。1日目は6グループに分かれて集落内を散策。地元住民の方も案内に加わり、小伊津の地形、歴史、生活の様子や建築物の特色を学んだ。
漁師小屋では建物の広さを実測し、海辺カフェの内観や外観を考える際の手がかりにしました。また、小伊津集落の特徴でもある急斜面地に密集して立ち並ぶ住宅を訪れ、内部を見学した。集落や建物を周りながら人々の暮らしや地域の課題を聞くことで、カフェの企画を考えるための情報を収集。その後は平田高等学校へ移動し、各自収集した情報をもとにグループワークを実施し、カフェのコンセプトをまとめた。
2日目は、小伊津を実際に歩いた上で、地域の魅力や想定される利用者などを考え、どのような場所があるとよいのか各グループで意見を出しながらカフェのコンセプトを決めていった。
その後は提案する漁師小屋を活用した海辺カフェの模型制作を高校生と大学院生が協働して行った。家具などのインテリアも忠実に作り込み、午後には模型が完成し、自治体や地域の人へ発表した。小伊津の景色を楽しめるスペースやSNSなどへの写真投稿スポットの設置など、景観にフォーカスした提案や、釣り人や海水浴客向けに足湯やシャワー室、鮮魚を調理するレンタルキッチンを備えたカフェ、ファミリー層に向けて、シアターや宿泊施設、ミニ水族館を備えたカフェなど、高校生が中心になって考えた小伊津町の魅力発信をする海辺カフェの企画を模型で特徴を示しながら、説明を行った。参加した地域の人からは「小伊津が活性化する提案が多く、試行してみたいものがあった」と総評があった。
■ワークショップ参加生徒(平田高等学校 1年生)コメント
実際に小伊津へ行って建物の特徴やそれぞれの暮らしを見ることができた貴重な体験ができました。それは大学院生の皆さんや小伊津の皆さん等の支えがあってだなと思います。地域にこのような集落があるのだと知るだけでなく、自分達で考えて一つのお店を作り出していく難しさを実感しました。今回の経験をこれからの学校生活にも活かしていきたいです。貴重な体験をさせていただき本当にありがとうございました。
■冨永研究室 田坂 太樹さん(建築学専攻修士1年)コメント
ワークショップを行う上で、どうすれば高校生に楽しみながら取り組んでもらえるか、地元住民の方にも良い機会として提案できないか、小伊津を訪れた経験がない中で検討を重ねました。今回のワークショップの主役は高校生ではありましたが、私たちにとっても、建築の魅力をどのように伝えるかを考える貴重な経験となりました。
■ワークショップ開催の背景
2004年に冨永祥子教授が初めて訪れた時から、小伊津集落と冨永研究室の関係が始まる。研究室は、伝統を受け継ぎながらも近代技術を取り入れ進化していく小伊津集落を「地方集落の理想形」の一つとして捉え、学術機関として初めて文化継承の理由と建築的な特徴の解明に乗り出した。2018年から約2年間かけて小伊津集落の調査を行い、住宅・路地の実測調査や過去の台帳などからの分析考察、住民へのヒアリング調査を行い、報告書にまとめた。
さらに2021年には、報告書の内容をもとに、小伊津の魅力を伝えるイベント「ぐるっと!小伊津展」を開催。島根県内7箇所で建築模型や現地の資料映像などを展示し、合計で1,000人以上が来場した。
空き家の増加や交通インフラの維持など、解決しがたい社会問題を抱えている地域でもある小伊津町だが、「ぐるっと!小伊津展」が地元メディアで大きく取り上げられるなど、県内で注目を集め始めている。
■工学院大学の高大連携の取り組み
工学院大学は設立以来、建学の精神「社会・産業と最先端の学問を幅広くつなぐ『工』の精神」のもと、一貫して工学分野を中心とする教育と研究を展開。設立当初より、高等学校教育への多様な支援を推進し、大学が保有する工学に関わる教育資源を活用して、交流の場を設けてきた。同大が開催している社会教育活動や研究活動に、多くの高校生が参加している。