人気ランキングから学ぶ企業のベストセレクト法 ─ 志望先選びの裏ワザ&ツボを公開

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人気ランキングから学ぶ企業のベストセレクト法 ─ 志望先選びの裏ワザ&ツボを公開

志望先を選ぶとき、やっぱり気になるのが企業の人気だ。人気ランキングをマクラに、最近の傾向や企業選びの留意点にふれる。

新しい価値を創造したい企業選びの学生トレンド

下表の人気ランキングは、企業の採用活動をサポートするワークス・ジャパンが調査したもので、今年の新入社員が活動真っ最中だったときの順位だ。

このときの1位は損害保険ジャパン日本興亜で、4年連続の1位だった。全国規模で幅広い大学から学生を採用。企業PRにも積極的であることが、人気の要因だと指摘されていた。同じ理由で、三井住友海上火災保険も順位を上げていたが、順位の推移から、この2社を一緒に志望する学生が多かったのでないかと推察される。

このように2社を同時に志望する際には、企業のカラーや事業の差別化を明確に把握しておいたほうがいい。そうでないと、アピールする志望動機に説得力がなくなってしまうからだ。

ところで、常に人気な総合商社だが、ランキングを見ると、大手総合商社の間に割って入るように、三井不動産、三菱地所の、いわゆる「デベロッパー」が台頭していた。さらに鉄道系企業の人気上昇も見て取れるが、鉄道系はデベロッパー同様に街づくりを担う。

昨今の学生は、企業選択の際、「新しい価値の創造」を挙げるが、デベロッパー、鉄道系浮上の背景にはこの理由があった。「新しい価値の創造」は、学生の動向を読み解くキーワードだ。

なお、採用数の少なさからデベロッパーの難易度は高いが、このテーマの追求から、総合商社や鉄道系と併願する学生が、今後増えていくと思われる。

もうひとつのキーワード「安定性」という選択基準

鉄道系の企業は、別の企業群とグルーピングされる場合がある。それがインフラ系だ。

インフラ系は人々の生活を支える企業であり、ライフラインの維持、安定稼働に重要な役割をもつ電気やガス、エネルギー供給企業や、NTTを始めとする通信系企業も含まれる。生活必需品の取り扱い=絶対的安定性というイメージが漂うことから、地方の公務員志望の学生も併願することが多い。

つまり鉄道系、インフラ系の人気を支えるのは、学生の間で企業選択のテーマとして定着している「安定性」ということ。ちなみに、テーマをもち、そのテーマでつながった企業群を志望する場合は、ひとつの業種、企業について考えた志望理由を他でもアレンジして使えることが多く、企業に説得力ある説明をしやすい傾向もある。

ただし、志望することと、業界適性があるかどうかは別問題だ。テーマ性をもって就職活動していて、仮にうまくいっていないと感じたら、根本に立ち返り、テーマそのものを見直すことも必要になってくる。

ランキング上位の常連組メガバンクにどう挑むか

メガバンクが、新卒採用数を大幅に減らすというニュースがクローズアップされた。ランキングはこうした情報に敏感に反応するものだが、一方でこうしたニュースを逆手にとり、自己アピールを組み立てる強者も数多くいる。

新聞に「AIの導入で支店のリテール業務の効率を改善していく」という記事が出ていたが、これに対し「利用者の真のサービス、真の価値を追求する未来志向のバンカーを目指したい」という志望動機をきっちり主張できれば、メガバンクの置かれている状況を把握したうえで、志望してくれているという評価を得られるかもしれない。

要は、流布される情報や噂だけで簡単に逃げ腰にならず、いかに自分のアピールに使えるかを考えてみることだ。

ランキング順位こそメガバンクは低下傾向にあるが、逆に志望する学生が粒ぞろいになったとしたら、難易度はさらに増すことになる。SNS全盛の時代に飛び交う情報に一喜一憂するのではなく、就活ライバルがどう動くかをしっかり想定する冷静さをもちたいものだ。

食品メーカーもほしがる引く手あまたの理系学生

大手食品メーカーの人気には底堅いものがある。採用人数が少なく、入るのが大変なところばかりだが、学生が希望する商品開発は高嶺の花で、文系学生は営業職に就く人がほとんど。

ところで、大手食品メーカーは、理系学生から縁遠い存在に思われ、理系からの人気は総じて高くない。だが、大手食品は理系、ことに機械と電気系の学生を本当にほしがっている。新製品を出すためには、製造ラインを設けなくてはならない。その際、業者と専門的な話ができる理系が求められるのだ。

なぜ食品メーカーに理系なのかと思われているので、理系の応募者が少なく、残念だと大手食品メーカーのある採用担当者は明かす。理系にとって食品メーカーはねらい目のようだ。売り手市場にあっても、理系学生に対する採用意欲の高さは際立つ。企業がほしがるのは、理系のスキルだけでなく、論理的思考という点にもあった。

IT業界は理系の奪い合いだが、理系がなかなか採れず、文系で論理的思考力をもつ学生に着目せざるを得なくなった。この業界はインターンシップに熱心だが、文系を対象にプログラミング講座を開いたりするのは、理系的素養をもつ学生を発掘するためだ。採用した文系を育てるというのが方針。

文系で早期のインターンに参加するなら、IT業界を選択してみてはどうか。自分では気づかなかった、理系的能力を見出してくれることもあるからだ。

ランキングは単なる目安研究を深め志望先を選ぶ

最近では12月から3月頭にかけ、就活生向けに企業認知の向上をねらった、テレビCMが盛んに流されるようになった。学生は知名度のある企業を選ぶ傾向が強い。3月1日の就職情報サイトのオープン前に、どれだけ認知度を上げられるかが勝負になったからだ。人手不足の深刻さがうかがえる。

その一方で、一般テレビCMをあれだけオンエアしている携帯大手3社のランキングは低い。NTTドコモが54位で、ソフトバンクグループは77位に過ぎず、KDDI(au)は100位にも入っていなかった。

学生が携帯3社と出合う場はショップということになる。で、3社で働くとは、ショップ勤務ではないか……。そう捉えてしまい、生活に身近でありながら、ランキングが低い理由になっている。企業研究はぜひタテ・ヨコ・ナナメで行ってほしい。

企業研究をする際には、社名を変えた会社に注目するのもいい。57位に入った世界最大手のガラスメーカーである旭硝子は、2018年7月にAGCに社名変更した。海外での売り上げ比率が高くなり、自動車部品を手がけるなど、業態変化も社名変更の理由となった。

その企業がなぜ名称を変えたのか。背景にあるものを探れば、企業の新しい顔が見えてくる。志望動機を固める際に着目すれば、間違いなく役立つはずだ。

学生の安定志向が指摘されて久しい。ランキングにもそれが如実に表れている。しかし、企業を取り巻く環境は厳しさを増し、事業売却も日常茶飯事になった。大手に入ったからといって、将来は安泰というわけではない。それを念頭に置き、就活に励んでほしい。

総合人気企業ランキング:2019年卒(ワークス・ジャパン調べ)

順位 企業名 前年
1 損害保険ジャパン日本興亜 1
2 伊藤忠商事 5
3 三菱商事 3
4 三井不動産 6
5 三井物産 7
6 東海旅客鉄道(JR東海) 8
7 三菱地所 18
8 三井住友海上火災保険 10
9 三菱UFJ銀行 2
10 住友商事 9
11 東日本旅客鉄道(JR東日本) 17
12 ジェーシービー 16
13 日本生命保険 11
14 東京海上日動火災保険 4
15 丸紅 15
16 全日本空輸(ANA) 21
17 大日本印刷 32
18 小田急電鉄 22
19 日本航空(JAL) 22
20 旭化成 40
21 東京急行電鉄 24
22 三井住友銀行 25
23 みずほファイナンシャルグループ 14
24 サントリーグループ 26
25 NTTデータ 28
26 双日 30
27 三井住友信託銀行 52
28 第一生命保険 34
29 東京ガス 60
30 森ビル 29
31 富士フィルム 55
32 アクセンチュア 43
33 日立製作所 48
34 NTT東日本 13
35 ジェイアール東日本企画 20
35 三井住友カード 27
37 日本郵船 45
38 明治安田生命保険 67
38 農林中央金庫 71
40 三菱電機 62
41 野村証券 54
42 あいおいニッセイ同和損害保険
43 富士通 75
44 新日鐵住金 82
45 トヨタ自動車 39
46 キーエンス
47 日本政策投資銀行 56
48 全国共済農業協同組合連合会 89
49 野村総合研究所 56
50 キリン 37

順位 企業名 前年
50 オリックス 69
50 りそなグループ 38
53 森永製菓 50
54 豊田通商 50
54 NTTドコモ
56 味の素 41
57 旭硝子 48
58 サッポロビール 43
59 花王 31
60 ソニー 70
60 アサヒビール 35
62 東京地下鉄(東京メトロ) 35
63 三菱UFJ信託銀行 12
64 資生堂 19
65 レイスグループ
65 東レ 41
65 阪急阪神ホールディングス
68 住友生命保険 82
69 西日本旅客鉄道(JR西日本)
70 電通 47
71 パナソニック 78
72 博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ 46
72 オープンハウス 97
74 IHI
75 東武鉄道 65
76 三井不動産リアルティ 71
77 ソフトバンクグループ 59
77 東急不動産 58
79 本田技研工業(Honda)
80 コーセー 68
80 三菱UFJニコス
80 メタルワン
83 商船三井 75
83 住友化学 93
83 積水ハウス
83 日本たばこ産業(JT) 93
83 日本取引所グループ 63
88 日本生活協同組合連合会
88 日産自動車 88
90 東京建物 78
90 スターツグループ 89
92 凸版印刷 93
92 大阪ガス
94 JTBグループ 33
94 山崎製パン 73
94 アビームコンサルティング
94 エス・ティー・ワールド 97
98 国際石油開発帝石 84
99 JFE商事
100 オービック

ワークス・ジャパンが2019年3月卒業見込みの大学3年生、および大学院1年生を対象に調査した。実施時期は2018年1月8日から同4月30日で、有効回答者は1万4403名。