21年就活は「細心大胆」でいこう

キャリア・就職 斎藤幸江
21年就活は「細心大胆」でいこう

21年卒の就職戦線は、従来の常識が通じないものになりそうだ。対策を練っておかないと、思わぬ苦戦を強いられることに!!

(この記事は2019年5月1日発行の『キャンパスキャリア‘21』で掲載されたものです)

政府主導のルールに変わり複雑化に拍車

キャンパスや街角にあふれる、リクルートスーツ姿の4年生たち。新3年生になったあなたは、どんな思いで先輩たちを眺めただろうか。とはいえ、3年生向けの採用市場は、4月の段階でとっくに動き出していた。

21年就活からは政府主導のルールになるが、混乱を危惧する声に対し、政府は20年就活どおりの3月1日情報解禁、6月1日選考開始、10月1日内定開始の遵守を訴えた。だが実際にどう動くかは不透明で、早期化や長期化が懸念されている。

迎え撃つ学生は、どのようにすればいいか。予想される事態とその対策をまとめてみた。就職情報サイトが昨年までのスケジュールを2か月も前倒しし、4月初旬に3年生向けの登録を開始した。就活ルールが変わって先が見通せないなかで、早めに母集団を形成したいという採用側のニーズに応えたものである。

新卒の採用活動において重要なのは、応募が期待できる学生層=母集団を早期に充分な規模で確保することだ。そのためには早い時期から学生の意識を喚起し、インターンシップへの応募やプレエントリー(採用情報を得るための事前登録)につなげる必要がある。

21年就活は「細心大胆」でいこう

イベントで熱心にメモをとる就活生

そこでリクルート、マイナビなどの就職情報会社は、企業の期待に見合う母集団の形成を促進するため、学生により多くの企業に興味や関心をもってもらうよう動いていく。

就職情報各社は、インターンシップの応募が始まる以前に、企業の認知度を上げて興味を示してもらうため、多様かつ大量の情報を様々な手法で発信していくはずだ。業界研究に絡ませた企業の業務や仕事の紹介、適性診断ほかの結果を通じて業界や企業への興味を促す……などである。結果、選考全体の早期化に拍車がかかると予測される。

早めに志望者になりうる学生層をつかめた企業にとって、次の課題はそれを応募者へと導いていくことである。それには自社に対する興味喚起と同時に、「この会社なら、いいかも」という期待感も高めていきたい。個別に密にコミュニケーションを重ね、学生との関係を強化していくことが重要になってくる。

20卒の採用では、サマーインターンシップや秋のワンデーへの参加者だけを対象に、秋から冬にかけ、若手社員による小規模説明会など何回もイベントが開催された。そしてイベントへの参加回数が多い人を優先的に選考する企業が増加した。

この傾向は、21卒ではさらに加速するのではないか。つまり同一企業への応募であっても、個別の学生の状況によって進捗状況に大きな差が出るということである。早期化とあいまって、「いつが始まりで、いつがピークなのか」がわかりにくいくらいに複雑化するのが21年就活になりそうだ。

 

21年就活は「細心大胆」でいこう

就活生の熱気があふれる企業セミナー

流れに乗り遅れた学生は就職活動が長期化するのは必至で、一方、母集団形成が遅れたり、予想以上の内定辞退を出したりした企業も採用活動は長引くだろう。年の就職活動の特徴に、オリンピックの影響が挙げられる。開催前後の長期にわたり、大規模なコンベンション施設は五輪関連行事で抑えられ、就職イベントに使えない。

また、2019年の秋にはラグビーワールドカップも開催される。19年秋から冬にかけ、その余波を受ける地域もあるだろう。こうした状況から、大規模な就職イベントの開催頻度は、例年より確実に低下する。

そこで注目したいのが学内説明会である。昨今、学内説明会よりも、情報サイトが主催する大規模説明会にいったほうがいいのではないかと考える学生が増えてきた。しかし企業側は、「志望した学生が参加した説明会は、学内なのか、学外なのか」を、まったく問題にしていない。学内の場合、卒業生が説明してくれることもあるし、採用実績が高い学校では、企業の説明にも熱が入りやすいものだ。

なお、大学によっては、人気企業の説明は事前予約が必要なこともある。早めに参加企業のリストを入手し、限られた時間内に効率的にまわれるよう計画を立てよう。また、他の学内イベント、たとえば企業の担当者を招いての業界研究会などの開催頻度も、高まる可能性は強い。

なかなか学生と接点がもちにくい企業にとって、会場を確保しやすい大学で説明できるのはありがたいことだ。企業のリクエストに大学が応える形でのイベント開催が増えることは間違いない。

21年では、大学側も状況に即し、臨機応変に対応していくと考えられる。イベントスケジュールは、見落とさないようにしよう。複雑化する21年を乗り切るためのキーワードとして、「細心大胆」を挙げたい。これはNHK連続朝ドラ『まんぷく』のモデルになった安藤百福氏の言葉だ。

エントリー数を増加させたい就職サイトや企業からは、例年以上の情報が届くだろう。そのなかには学生にプレッシャーをかけるものもある。また、自分の就職活動の進み具合を自慢して、周囲を不安に陥れる「マウンティング就活生」も出てくる。こうした動きに翻弄されないよう、よく考えて自分に必要な活動を見極めて動くことが肝心になる。そのためには不要なものを大胆に切り捨てる勇気がほしい。

さらに、キャリアセンターの活用や、知り合いの社会人に話を聞く、説明会で積極的に質問するなど、ためらわずに興味や関心を行動に移すことが、チャンスを広げてくれる。

一方で、必要な情報は確実に拾い上げる注意力も欠かせない。出遅れないためにしっかりアンテナを張って、自信をもって自分の意思で動くことが、あなたを成功に導く。