2018年3月卒 学部別実就職率ランキング

キャリア・就職 大学通信 井沢 秀
2018年3月卒 大学別実就職率ランキング

企業の採用担当者は「採用活動において学部名を意識したことはない」と話すが、学部系統別の平均実就職率を算出してみると、就職に有利な学部と不利な学部が存在することが分かる。この傾向は、大学生の就活環境が好転しても変わらない。大学全体の平均実就職率と連動して学部ごとの実就職率も上がっているが、学部系統間の就職率の差はこれまで通り。同一大学内でも異なるケースが多く、18年卒の明治大の実就職率を例に取ると、最も低い国際日本学部の83.1%に対し、最高の理工学部は91.9%と8.8ポイントの差がある。

このように文系学部が低く理工系学部が高いのは全体的な傾向で、学部系統別の「平均実就職率」に注目すると、国際日本学部が該当する「国際系」が87.6%なのに対し、「理工系」は92.3%となっている。

理工系の平均実就職率が高い要因は、製造業の採用数が多いことに加え、実験や研究発表などを通して定量的、論理的な思考力を身につけた学生が多いことが挙げられる。こうした能力は、製造業に限らず多くの企業で社内のシステム構築やマーケティングのために不可欠。AI(人工知能)の発達により、現在の仕事をIT技術に置き換えていく能力はあらゆる産業で必要になる。理系的なセンスを持った学生の重要度は年々増しているのだ。

「学部系統別実就職率ランキング」の「理工系」で、実就職率が高い大学を見ると、トップは100%の愛知県立大・情報科学部で、2位福山大・生命工学部、3位岡山大・環境理工学部、4位に福井大・工学部と福山大・工学部が続き、ランキング中の全大学が95%を超えている。

理工系と同様に理系的なセンスを身につけることができる「農学系」も平均実就職率が91.7%と高い。農学系は国公立大に設置数が多いこともあり、1位秋田県立大・生物資源科学部、2位佐賀大・農学部、3位茨城大・農学部となり、これらの大学以外にも上位に国公立大が並ぶ。

社会科学系のトップは「商・経営系」

理工系学部に比べると分が悪い文系学部だが、大学生の売り手市場を背景に平均実就職率は高まっている。文系学部の中で平均実就職率が最も高いのは、サラリーマンになるための実践的な学びが充実している「商・経営系」の90.1%。この系統の個別大学の実就職率の上位は、1位静岡県立大・経営情報学部、2位安田女子大・現代ビジネス学部、3位昭和女子大・グローバルビジネス学部となっている。

「商・経営系」以外の社会科学系の状況を見ると、「経済系」が平均実就職率89.3%で続く。ランキングのトップ3は、1位ノースアジア大・経済学部、2位名古屋大・経済学部、3位一橋大・経済学部で、難関国立大が上位に入っている。社会科学系で平均実就職率が最も低いのは「法学系」で86.7%。法曹や公務員などを目指し、卒業後もそのための勉強を続ける学生が一定数いる影響だ。この系統では、警察官の就職に定評がある日本文化大・法学部がトップとなり、2位大阪工業大・知的財産学部、3位一橋大・法学部が続く。

社会科学系以外の文系学部の平均実就職率は「国際系」が87.6%で、実就職率トップ3は、1位昭和女子大・グローバルビジネス学部、2位阪南大・国際観光学部、3位新潟国際情報大・国際学部。「文・人文・外国語系」の実就職率は86.3%で文系学部の中で最も低いが、ランキング上位の大学は健闘しており、1位名古屋女子大・文学部、2位ノートルダム清心女子大・文学部、3位安田女子大・文学部、4位昭和女子大・人間文化学部など、6校が95%を上回っている。

企業の旺盛な採用意欲と大学の就職支援が相まって、好調な就職状況が続いている文系学部だが、気になるのは、現在の職種がAIなどIT技術に置き換えられていく中、就職状況がどのように変化するのか。もちろん、今すぐに事務職がAIに取って代わるわけではないが技術の進歩は早い。これからの文系生は、「銀行に就職すれば将来は安泰」という旧来型のキャリアイメージから脱却し、アンテナを高く張って入社後の変化を想像する必要がありそうだ。

資格取得ができる学部は就職に強い

次に就職に有利な資格が取得できる学部系統の平均実就職率を見ると、薬剤師国家試験の難化に伴い、文系を含めた全学部系統の中で最も低い「薬学系」(86%)を除くと、すべて「理工系」を上回っている。最も高いのは「家政・生活・栄養系」の93.7%で、「看護・保健・医療系」(92.6%)、「福祉系」(92.4%)が続く。

この系統の実就職率が高い大学に注目すると、「家政・生活・栄養系」は1位名古屋文理大・健康生活学部、2位東海学園大・健康栄養学部、3位名古屋学芸大・管理栄養学部。「看護・保健・医療系」は1位が関西福祉大・看護学部と兵庫医療大・看護学部で3位国際医療福祉大・小田原保健医療学部。「福祉系」は1位新潟医療福祉大・社会福祉学部、2位城西国際大・福祉総合学部、3位山口県立大・社会福祉学部となっている。平均実就職率が低い「薬学系」だが、ランキング上位の大学の実就職率は高く、1位京都薬科大、2位明治薬科大、3位星薬科大など、95%超の大学は14校に上る。

平均実就職率が低い学部系統でも、個別の大学を見ると実就職率が高い大学があり、同じ学部系統でも大学によって差がある。研究・教育内容やキャンパス環境などと共に、就職力も大学選びの重要な指標と言えよう。

学部系統別実就職率ランキング
法学系/文・人文・外国語系