2020年有名400社実就職率ランキング
2020年卒も大学生の売り手市場が継続。大学通信が医学部と歯学部の単科大学を除いた全大学を対象として実施している就職状況調査によると、平均実就職率は調査開始以来の最高値だった前年並みの88.9%(9月3日現在)となった。当然、実就職率が高い大学が多く、卒業生が1000人以上の大学の内、実就職率が90%を超える大学は89校に上る。
ただ、難関大に注目すると、旧七帝大、早慶上智、MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)、関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)の中で、平均実就職率を上回ったのは、関西学院大(92.5%)、法政大(92.1%)、青山学院大(90.8%)、関西大と中央大(ともに90.4%)の5校(東大は未集計)のみ。多くの難関大で平均値を下回っている。一般企業や公務員、大学院進学以外にも多様な進路を選択する学生が多い難関大は、一般的な大学より実就職率が低い傾向にある。
成功体験のある学生が多い難関大は有名企業に強い
もっとも、対象を有名企業に限ると難関大の強さが際立つ。例えば、京大は全就職先を対象とした実就職率は76.3%と低いが、有名企業に限定すると31.0%で有名400社実就職率ランキングの15位に入る。就職者が多い企業には、パナソニック(36人)、三井住友銀行(33人)、アクセンチュア(30人)などがある。
有名400社実就職率ランキングを詳細に見ていこう。ランキングの1位は東京工業大で2位が一橋大。文系と理系それぞれのトップ大学は、毎年のように卒業生の半数以上が有名企業に就職している。両校の就職者が多い企業は、東京工業大がソニー(33人)、キヤノン(30人)、パナソニック(29人)などの製造業。一橋大は、楽天(29人)、三菱UFJ銀行(22人)、三井住友銀行(17人)などのITや金融系となっている。
ランキング上位には、3位・国際教養大、4位・電気通信大、5位・名古屋工業大、6位・東京理科大、7位・九州工業大、8位・豊田工業大、9位・早稲田大、10位・大阪大と難関大が数多く入った。
この背景には、ハードルが高い難関大合格に向けて、試行錯誤を繰り返しながら努力を続けて結果を出すという成功体験がある。大学入学後も同様のプロセスのもとで成功体験を積み上げた人材はどの企業も欲しいもの。そういう人材が難関大に多いことが、有名企業の実就職率の高さに結びついている。
難関大の中でも有名企業の就職者数が際立つ早慶
難関大の中でも際立って有名企業の就職者が多いのは早稲田大と慶應義塾大。早稲田大は3635人が有名企業に就職している。卒業生が1万2483人の大規模大学ということが背景にあるが、34.7%と高い実就職率があればこそ出せる人数だ。
慶應義塾大は、就職者2人以下の企業が非公表で正確な就職者数を算出できない。そのためランキングに入っていないが、就職者3人以上の企業で集計すると2712人が有名企業に就職している。早稲田大と同じように、7892人と卒業生が多いことが背景にあるが、その内の40%以上が有名企業に就職しており、有名400社実就職率ランキングで4位以上に相当する。
早慶の就職者が多い企業は異なり、早稲田大は、楽天(91人)、富士通(82人)、NTTデータ(76人)などITや製造業。一方、慶應義塾大は、東京海上日動火災保険(95人)が最多で、楽天(82人)、三井住友銀行(66人)と金融系が上位となった。
卒業生が多くなるほど実就職率が上がりにくい中、卒業生が5000人を超える大規模大学で、ランクインしている大学には、大阪大(10位)▽京大(15位)▽同志社大(17位)▽明治大(22位)▽九州大(23位)▽関西学院大(26位)がある。
ランキングには、難関工科系大学が多く入っており、ベスト10に入った6校以外にも、芝浦工業大(11位)、豊橋技術科学大(19位)、長岡技術科学大(27位)がある。ソサエティ5.0を迎えた情報革命の時代に、テクノロジーが無関係な業界はない。変化の激しい社会において、理数能力がビジネスの様々な場面で求められていることが理系学生の追い風となる。
22年卒の大学生の就活の行方は不透明に
ところで、ここまで見てきた20年卒の就活は、大学生の売り手市場を背景に順調に推移した。この状況は、新型コロナウイルス禍で混乱した21年卒以降も続くのであろうか。
21年卒の就活は、オリンピック延期決定直後に発出された緊急事態宣言で一気に止まった。面接を対面からオンラインに切り替えるなどの対応がなされたが、現時点の大学生の就職内定率は前年を下回っている。それでも、識者は「第二氷河期という人がいるが、そうはならない。航空業や観光業など厳しい業界もあるが、全体としてみれば悲観する状況ではない。現時点の大学生の就職率が伸びていないのは採用プロセスが後ろ倒しになっているから」と話す。
リクルートキャリア調べの8月1日時点の内定率は81.2%で前年同時期を下回っているが、最終的には前年並みの就職率に落ち着く可能性が高く、オンライン化など就活スタイルの変化による苦労はあっても、21年卒の就職状況は前年並みを維持しそうだ。それでも、今後コロナ禍の影響で業績が悪化する企業が増えた時、大学生の就活環境はどうなるのだろうか。22年卒以降の就職状況は見通しにくい。
<表の見方>
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就職者数調査に回答のあった549大学のうち、有名企業400社への実就職率が高い100大学を掲載。卒業生100人未満の大学および一部未回答の東京大、慶應義塾大は対象外。
設置の※印は国立、◎印は私立、無印は公立。「-」はデータがないことを表す。
実就職率(%)は、就職者数÷〔卒業(修了)者数-大学院進学者数〕×100で算出。有名企業400社は、日経平均株価指数の採用銘柄や会社規模、知名度、大学生の人気企業ランキングなどを参考に選定。
2020年有名企業400社実就職率ランキング