2020年 学部系統別実就職率ランキング
「採用選考において、大学名や学部系統を考慮することはない」と、企業の人事担当者は話す。しかし実際には、学部系統別に平均実就職率は異なる。最も就職に強いのは、入社後に役立つ資格を取得しており、即戦力として働くことができる学部系統だ。
<表の見方>
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医科・歯科の単科大等を除く全国735大学に今春の就職状況を調査。547大学から得た回答(8月17日現在)を基に、系統別に学部実就職率上位校を掲載した。卒業者数が80人未満の小規模な学部、通信教育学部、2部・夜間主コースのみのデータは掲載していない。東京大などデータを未公表、または未集計の大学・学部は掲載していない。
各系統は、主に学部名称により分類したため、学科構成や教育の内容が似ていても掲載していないものがある。例えば、法学科をもつ大学・学部でも学部名に「法」が付かない場合、法学系に掲載していないことがある。
実就職率(%)は、就職者数÷(卒業者数-大学院進学者数)×100で算出。大学院への進学者数が未集計の場合、実際の数値が掲載している値より高い場合がある。
文部科学省では、就職率を「就職希望者数に占める就職者の割合」で算出することを推奨しているため、各大学が公表している就職率と異なる場合がある。ここでは文部科学省が用いる「就職率」と区別するため、「実就職率」という表記を用いた。同率で順位が異なるのは、小数点2桁以下の差による。
設置の※印は国立、◎印は私立、無印は公立を示す。大学・学部名は現在の名称で掲載している場合がある。所在地は大学本部の所在地で学部の所在地と異なることがある。
医療系の資格が取得できる「看護・保健・医療系」も92.9%と高い。愛知県立大・看護、東都大・ヒューマンケア、摂南大・看護、兵庫医療大・リハビリテーションの4大学が100%で並んだ。 文系の資格取得系学部である「福祉系」の平均実就職率は前出の2系統より低い90.8%で、1位が愛知県立大・教育福祉、2位が国際医療福祉大・医療福祉、3位が高崎健康福祉大・健康福祉となった。
就職に有利な医療系の資格が取得できる系統にも関わらず、福祉系以上に平均実就職率が低いのは「薬学系」。85.0%は、すべての学部系統の中で最も低い。かつて、薬学系の新設が進んだ時期があり、歴史の浅い学部の中には、難化した薬剤師国家試験の合格率が低い大学があることが要因として挙げられる。それでも、伝統ある大学の実就職率は高く、1位の千葉大・薬は100%。2位の名城大・薬、3位の慶應義塾大・薬、4位の明治薬科大・薬、5位の京都薬科大・薬といったトップ5は98%超と高い実就職率となっている。
資格取得系でなくても理系学部の平均実就職率は高い
資格取得を主としない学部系統の内、最も平均実就職率が高いのは、92.4%の「理工系」。どの企業も、物事を筋道立てて考えることができる、理系的な思考力を持った学生を欲している。さらに、情報技術の発達が理系人材の就活を後押ししている。理工系で実就職率が最も高いのは、福山大・工で、2位の大阪工業大・情報科、3位の富山県立大・工が続いた。金沢工業大・工は卒業生700人超の規模が大きな学部ながら4位。同様に、規模が大きな学部で上位に入った大学には、愛知工業大・工(5位)や大阪工業大・工(11位)などがある。
理工系の学生と同様の資質を備える「農学系」も、91.6%と実就職率が高い。国公立大の設置数が多いこともあり、ベスト3は順に、石川県立大・生物資源環境、新潟大・農、静岡大・農の順となった。私立大では、4位の中部大・応用生物、7位の東京工科大・応用生物、8位の名城大・農がベスト10入りしている。大学入試において農学系の人気が下がっている。就職状況を勘案すると、お得な学部系統と言えそうだ。
商・経営系のベスト3の内2校を女子大が占める
社会科学系では、「商・経営系」の実就職率が高く90.2%。産官学連携により、提案された課題を学生がチームで解決するPBL(Problem Based Learning 課題解決型学習)を導入する大学が増えており、授業を通して将来の仕事への理解が深まることも一因となっているようだ。この系統の1位は、静岡県立大・経営情報と昭和女子大・グローバルビジネス、安田女子大・現代ビジネスが100%で並ぶ。総合大学に設置されているイメージが強い、商・経営系だが、ベスト3の内2校は女子大。5位にも宮城学院女子大・現代ビジネスが入っている。この系統は女子大における設置が進み、女子大の設置学部の多様化が進んでいる。
社会科学系の中で「経済系」はやや低く89.3%。実就職率が高い大学には、1位のノースアジア大・経済、2位の大和大・政治経済、3位の愛知学院大・経済などがある。社会科学系で平均実就職率が最も低いのは「法学系」で87.6%。そうした状況の下で実就職率が最も高いのは、卒業生に対する警察官就職者数の比率でランキングした警察官就職率ランキングのトップが定位置で、公務員試験に強い日本文化大・法。2位は大阪工業大・知的財産、3位は新潟大・法となった。卒業生の規模が大きな大学では、1000人近い法政大・法が16位に入っている。
資格取得を主としない学部で最も実就職率が低いのは「文・人文・外国語系」で86.9%。この系統の学生は、そもそも一般的な就活に強くこだわらず、自分の学びたい分野の学問に邁進する学生が一定層いることが一因と言われる。ランキングは1位が愛知県立大・外国語、2位が名古屋大・文、3位が昭和女子大・人間文化となった。
文・人文・外国語系と同様の要因から平均実就職率が低いのは「国際系」で87.3%。そうした中、ビジネスというキーワードを持った昭和女子大・グローバルビジネスがトップ。以下、2位が山口大・国際総合科で、3位に新潟国際情報大・国際が続いた。
大学の就職力を見る際、全体の就職率に注目しがちだが、入学するのは学部。目指す学部系統の中で、実就職率が高い大学はどこなのか、学部系統別実就職率ランキングを参考にしてほしい。